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第7話:疑惑
第7話:疑惑
翌日、地下教室の空気は重かった。
誰もが互いをちらちらと見る。
声は小さく、笑い声は消えていた。
これが疑心暗鬼か。
「先生……」
一人の少年が口を開く。
「誰かが言ったんだろ? 監視官に」
ざわめきが広がる。
「違う!」
別の子が叫ぶ。
「俺たちは仲間だ!」
言葉がぶつかり合う。
その中心で、エナが俯いていた。
俺は石板を床に置く。
乾いた音が響き、全員が黙った。
「……密告者はいない」
俺は言った。
「証拠はない。ただの恐怖だ」
静寂。
「疑うより、やることがある」
石板に問題を書く。
「続きをやろう。試験まで時間がない」
子どもたちは戸惑いながらも、前を見る。
その時、一人の少女が立ち上がった。
「……ごめんなさい」
疑いを向けられていた子だった。
「私、怖い。ここにいたら、家族まで巻き込まれるかもしれない」
胸が締めつけられる。
正しい恐怖だ。
俺は近づき、目線を合わせる。
「怖いなら、離れていい」
ざわめき。
「でもな――」
石板を指す。
「ここでやってることは、お前の未来だ」
少女の目が揺れる。
「選べ。逃げるか、取りに行くか」
長い沈黙の後、彼女は席に戻った。
教室に小さな息が戻る。
俺たちは再び、問題に向かった。




