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第6話:踏み込み

第6話:踏み込み


 学院の鐘は、夜を切り裂くように鳴り響いた。


 低く、重い音だった。


 嫌な予感が現実になる瞬間というのは、不思議と静かだ。


「……捜索令」


 リネアが呟いた。


 俺の背中に冷たい汗が流れる。


「地下教室だ」


 走った。


 石畳を蹴り、息が切れるのも構わず倉庫へ向かう。


 最悪の光景を想像していた。


 監視官に囲まれた子どもたち。石板が踏み砕かれ、連行される姿。


 だが――


 廃倉庫は、静かだった。


 誰もいない。


 扉がわずかに開いている。


 中に飛び込むと、灯石が消され、机代わりの箱も隠されていた。


「……片付けられてる」


 リネアが息を呑む。


「誰かが先に気づいた?」


 その時、足音が近づいた。


 振り向くと、ミナ――いや、エナが立っていた。


「先生!」


 駆け寄ってくる。


「みんな無事か」


「うん。でも……」


 彼女の表情が曇る。


「監視官が別の倉庫を調べてた。誰かが通報したって」


 胸がざわつく。


「ここじゃないのか?」


「違う場所。でも……」


 エナは視線を落とした。


「私、見られたかもしれない」


 時間が止まる。


「どういうことだ」


「昨日、市場の帰りに……同じ監視官がいて。私の荷物、見てた」


 石板の欠片。


 教材の紙。


 頭の中で点が繋がる。


 偶然か。


 それとも――


「……密告者がいる」


 リネアが低く言った。


 空気が凍る。


 地下教室の中に、裏切り者がいる可能性。


 その言葉は、子どもたちの顔を思い浮かべるだけで吐き気がした。


 俺は拳を握る。


 疑えば、教室は壊れる。


 だが疑わなければ、全員が危険に晒される。


 選択を迫られていた。


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