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なろラジ6参加作品

イケメン青年貴族が、霊感トレーニングを希望してきました

「猫が()ているものを、見たいんです」


「は、あ?」


 占いの館(ウチ)にやってきたのは、やんごとないご身分の立派な貴族。

 しかしその青年の口からは、素っ頓狂な願いが漏れた。


「あの、どういう意味でしょう?」


「実は私、婚約者をなくしまして……」

「それは……ご愁傷様です」


 いきなり言葉に詰まる話題だ。


「哀しみの日々を送るうち、気づいたのです。飼い猫が、虚空を目で追っていることに」

「はぁ」


「もしやそこに彼女の霊がいるのでは、と。霊感を鍛えれば、会えるのではないかと思いました」


 なぜそうなった。


 ツッコミたい気持ちを喉元で抑える。相手は貴族だ。

 気持ちひとつで、店が吹き飛ぶ。


 こんな場末(ばすえ)の占い師を訪ねないで、(しか)るべき教会とかに行って欲しい。


「あの、うちは占いが専門で──」

「前金は、このくらいで」

「!」


 じゃらりと置かれた袋が、金貨(なかみ)の重さに(たわ)んで揺れた。


「か、考えさせてください」


 私のバカ。いくらパン以外の物も食べたいからといって!

 ここはお断り一択でしょう?!


「それに霊感を鍛えるといっても……」

「我が家にトレーニング・ルームを作りました。講師として、お招きしたい」

「は?」


 霊感のトレーニング・ルームって何?

 それ以前になんで私は、彼に両手を握られてんの?


「可愛い猫もいます」

「ぐっ」


 (ヒド)い。モフりたくなる誘惑。


「以前彼女が飼いたいと言っていた、ふわっふわの白猫です」

「ふわっふわ……」


 やばいわ。意識が猫に飛びかけた。


「僕は彼女に会いたいのです。もう一度」


 気がつけば、流れるように手を引かれ、扉近くまで誘導されている。


「で、も、婚約者の方は会いたくないかも」


 私の言葉に、彼は苦しげに顔を伏せた。


「ええ。僕がもっとしっかりしていれば。彼女が()()()()()()逃げ出すほど、実家で虐げられていると気づけていれば」


「っ!」


 思わず。

 胸に大きな痛みが走る。


「結婚を控え、留学先から戻った途端、訃報を聞きました」


 握られた手に、力が(こも)った。


「墓石の前で佇み、僕は彼女を愛していたと気づいたのです。家同士の政略などではなく」


 目が合う。


「自分が頼りない婚約者だったことを痛感しています。けれど、今度こそ彼女を。()()()を守りたいのです」


 私の居所(いどころ)は、彼にバレていたのね。


「貴族籍を捨てた私にはもう、何の価値もありませんわ」


「そんなことはない。ですが、本来の権利を取り戻しましょう」



 彼の用意した霊感トレーニング・ルームは、実家報復・作戦会議室になった。

 白猫()きで。




 お読みいただき有難うございます!

 なろうラジオ大賞、三作品目を投稿です。(そしてなんと今日2作投稿しています)

 読者様には彼女の正体に、どこから気づかれましたでしょうか?


 ご令嬢は家族に虐げられていた様子! 死を偽装して街の片隅で、占い師をやっていたようです。

 やり返すとこも欲しい。しかし"なろラジ"は、1000文字制限なのです。

 きっとイイ感じで頑張って、まんまと"ざまぁ"を見舞うと思います!


 お話を楽しんでいただけましたなら、下の☆を★に塗り替えて応援してやってください♪

 猫ちゃんモフりたいです。にゃおーん。 ( ฅ^•ω•)ฅ

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― 新着の感想 ―
1000文字とは思えないボリュームのある話でした。 二人がうまくまとまって良かったです。話のオチもきれいで好きなのですが、なによりヒロインのキャラが好きです。
これぞ、短編! 見事なオチに感服しました。 とっても面白かったです!
こういうハッピーエンドも良いですね。 どうなるんだろう? と思いながら読み、最後に笑ってしまいました。 面白い作品をありがとうございます。
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