同期の言葉①
「どうした?」と聞かれて、振り返ると同期入社のお調子者が居た。
いつも宴会では大活躍する「宴会部長」と呼ばれている同期だ。
「どうした…って? 何が?」
「何が?……って、凄く疲れた顔してるぞ。」
「えっ? そうか?!」
「そうだよ。……それに、最近、休みが増えただろ!?
どこか、身体が悪いのか?」
「すまん。心配かけて。」
「いや~ぁ、別に心配なんか……したぞ!
……で、どうしたんだよ。 どこか本当に悪いのか?」
「俺じゃないよ。」
「えっ? 奥さんか?!」
「違うよ。母親!」
「お母さんか……ほんじゃあ……良かった……じゃない! 良くない!!」
「相変わらずだなぁ~。」
「へ? そっかぁ? ……でっ、どうなんだ。お母さん。」
「うん。介護中だよ。実家で……。」
「そっか……。大変だよな。介護………。」
「うん。もう限界かなぁ~って思うんだ。時々……。」
「そりゃ…… おめぇさん、思うもんよ!」
「いい加減言いやがって!」
「いや、ほんとのところ大変だよ。経験してるから……俺も親で!」
「そうなのか?!」
「うん。」
「うちは姉が中心になってくれてるけど、それでも無関係じゃないから…。
動くときは動いてるよ。」
「いいなぁ~。俺、一人っ子だからさ。一人なんだよ。」
「奥さんは? 手伝ってくれないの?」
「無理だな……。手伝うどころか……。あ……何でもないよ。」
「おい、言えよな。途中で止めるのよせよ! 気になって仕方ないや……。」
「いつか……話すよ。」
「おい、今日の帰り。俺は残業無しだ。話、聞くぜ!」
「いいよ。早く実家に帰んなきゃならないから……。」
「だ・か・ら……。俺も手伝うよ!」
「え?」
「手伝いながら、聞けたら聞く。」
「どうして?」
「お前、死にそうな顔してる。放っておけない。……俺、いい子だからさ。」
「なんだよ。それ……いい子って……なんだよ………。」
帰ろうとしたら、「宴会部長」が待っていた。
「さぁ~、介護のお時間ですよぉ~。」
「お前……。」
「行くぜ! 介護現場へ~!」
何故だか、付いてきた「宴会部長」と俺は実家に帰った。