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兄弟は似るもの

執行人ファイル:1

                                       作成者:×× ××


Δ執行方法Δ


・ハング 

  絞首刑。身体の損傷が1番少ない執行方法であり、雪兄弟、特に雪瀬奈が好む執行方法である。

  雪瀬奈曰く、オプファーにとって最も”しあわせ”とされている。


・チップ

  皮剥ぎや腹裂きなどの凌遅刑。

  主にオプファーの身体を損壊させる目的で執られる執行方法。

  ほとんどの執行人が好んでいる。


・スナック

  本来神への貢ぎ物であるオプファーの身体を執行人が食す目的で執られる執行方法。

  この方法を好む執行人はほとんど居ない。

  意識がはっきりしている状態で手や足などを削ぎ、

  それらを食べている姿を直接オプファーに見せながら執り行う。


・ショット

  銃殺刑。

  主に稲荷杏が好む執行方法。

  短時間で執行可能な為、1日に数人の執行が可能。


・ポイズン

  毒殺、薬殺刑。

  麻薬や毒物をオプファーに服用させる執行方法。

  現在では執行が禁止されている。


・????

  ボスのみに許された執行方法。

「ふぅ。」


きちんと髪を乾かし、少し軽めの服装に着替えた瀬奈は鏡を見る。


「髪………伸びましたね。


 こうも長いと結ぶのすら面倒になりますね。」


小声でそう呟きながら、櫛を通す。


長く均等に伸びた髪は日の光を浴びてキラキラと輝く。


その髪に触りながら、突然屋敷に現れた執行人の事を思い出す。


(稲荷杏...........どうしてこの屋敷に……


 私が加藤優美の執行を行っていない事がバレた...........?)



基本的にオプファーの執行後、ボスへの報告は義務とされているが


他の執行人に報告する事はほとんど無い。


執行人間で共有されるのは誰がどのオプファーの執行を行うのかだけであり


どのように執行したのか、いつ執行したのかをわざわざ知りたがる執行人は居ない。


瀬奈も先日、ボスへの報告を済ませていた。


(奪っておいて報告無しは流石にまずかったですかね………


 私の注意不足で彼女に稲荷杏を会わせてしまった。


 私のせいなのに、彼女にあんな事を………)


髪を結いながら、先程マリアにしてしまった事を反省する。


「後でもう1度、きちんと謝りましょう。」



「ーーーーーーーーー加藤優美に、ですか?」


「っ………!!」


瀬奈は驚いて振り返る。


そこには丁寧な姿勢の叶色が立っていた。


「ノックもせずにお部屋に入ってしまい申し訳ございません。


 ですがどうしても瀬奈様の口から聞きたかったのです。


 マリアさん、いえ、加藤優美について。」


「………誰からその事を聞いたのですか。」


明らかに動揺している瀬奈とは正反対に、落ち着いた様子の叶色。


「弥士様です。」


「弥士が………?


 どうしてその様な話になったのでしょうか。」


「私が弥士様に尋ねました。

 

 頑なに兄弟2人だけで執行を続けていたのに、いきなり仲間だとマリアさんを連れてきて、


 おかしいと思わない方がおかしいでしょう。」


「...........どこまで聞いたんですか。」


「お2人が連れてきたマリアさんが、瀬奈様が稲荷様から奪ったオプファーの加藤優美である、


 という事しか聞いておりません。」


(本筋はだいたい弥士から聞いたようですね………)


ふぅ、と息を1度整える瀬奈。


「まず、叶色さんに黙っていた事を謝罪させてください。」


「結構です。説明だけ、お願いします。」


きっぱりと瀬奈の言葉を遮り、淡々と言葉を発する叶色。


「本当に、叶色さんには叶いませんね。


 確かに、私が連れてきたマリアは、34番目のオプファーである、加藤優美さんです。


 私は33番目のオプファー、柳香帆の執行を終えた後加藤優美の元へ行きました。


 予定通りハングで執行していたのですが、やはり、どうしても、


 殺す事が出来なくなりました。」


「それはどうしてでしょうか。」


「それは………」


言葉を詰まらせる瀬奈。


(どう、叶色さんに伝えればいいのだろうか。


 あの時、優美さんに伝えた事をそのまま伝える?)










=現実的な事象を好む君に、私達が置かれている非現実的な状況を体験させたい。=




=私は君の知らない”非現実”を全て味わわせてあげたい。=




=君が経験した事の無い事を体験させてあげたいんだ。




 他の誰でもない、私が直接ね。誰にも渡したくないんだ。=













自分がマリアに伝えた事を思い出すが、それだけで顔が燃えてしまいそうになる。


(こんな事、叶色さんに言えないな………)


「瀬奈様?」


耳を赤くしている瀬奈を心配している様子の叶色。


(でも、隠していたってしょうがないですよね………)


瀬奈は大きく息を吸い、言葉を発した。


「恋を………してしまいました。」







「は?」


呆然とした様子の叶色。


「冗談も大概にして下さい。瀬奈様。


 恋?執行人の貴方がですか?


 女性にだらしない稲荷様にも、つまらない事ばかりするなと、仰られていましたよね?


 執行人の中でも私情を持ち込まずにボスからも太鼓判を押されている貴方が、恋ですか?」


しきりに問い詰める叶色。


「何か………言って下さい。」


「何も無いですよ。私は彼女の資料をひと目見て、


 殺しに行って、首を絞めて、恋をしたのです。


 彼女をオプファーだからと、殺す事なんて出来ませんでした。


 私は、何が何でも彼女と共に居たい。


 だから私は彼女の家を消し、名前を変えさせて、ここに連れてきたのです。」


瀬奈は着ている服の裾を、皺が付いてしまいそうな程の力で掴んでいる。


目には涙が浮かんでいた。


叶色が瀬奈の涙を見たのは初めてだった。


「瀬奈様………」


「叶色さん、呆れたのならこの屋敷を、私を捨てても構いません。」


声を震わせながら、か細い声でそう言う瀬奈。


その様子に、叶色は瀬奈が本気でマリアに惚れているのだと感じた。


「はぁ。」


 (この兄弟は本当に似てるな………)


溜息をつく叶色。


「貴方達は本当に私を困らせるんですね。


 先程、弥士様にも同じような空気にさせられました。」


「えっ………?」


「私は、貴方達に救われて以来、生涯を掛けて貴方達に仕えていくと決めました。


 瀬奈様があの方にどんどん心酔していって、貴方が私を捨てようとも私は貴方についていきますよ。」


「叶色さん...........」


叶色なりの返答に顔色を明るくする瀬奈。


(そういう所も本当に似てる………)


くすっと笑い、言葉を続ける叶色。


「まったく。いつも弥士様に振り回されているのに、


 まさか大きなトラブルを持ち込むのが瀬奈様だとは……」


「すみません。」


「とんでもございません。


 貴方のそういう一面を見る事が出来て嬉しいのですよ。


 ですが、選ばれたオプファーを殺さずに連れ帰り、その存在を隠している事は


 他の誰にも勘づかれないようにしなくてはなりませんね。


 全てのオプファーに対して執行を行った後、確実にボスは彼女の存在に気付くでしょうし、


 他の誰かを加藤優美として執行したとしても、ボスは魂で偽物と見抜いてしまうでしょうから……」


すぐに頭を回転させ、様々な可能性を提案する叶色。


しかし、その全てが実行不可能であった。


その理由はただ1つ、ボスが存在しているからであった。


叶色が違う可能性を模索している途中、背中にヒヤリとした空気を感じた。


「ボスを消せば、私と彼女は幸せになれるのですね」


いつもとは違う、低く体を刺すような瀬奈の声。


「瀬奈………様、」


名前を呼ばれるとはっと我を取り戻し、いつものように叶色に微笑みかける瀬奈。


「とにかく、彼女には優しくしてあげて下さい。


 私は彼女にまだ話さなければいけない事があります。」


瀬奈と叶色は部屋から退出し、それぞれ次の目的の為に歩き始める。


「そういえば、先程稲荷様が帰り際、またおかしな事を仰っていました。」


「どんな事です?」


「ええと、確か、


 ”あの子は俺の女にする”


 ”あいつが全部持っていくなんか許されへん” と………」


そう伝えた後、瀬奈の方を見ると、表情は先程と同じく柔らかいままだったが、


明らかに、怒りを露わにしている様子だった。


「瀬奈様?」


「叶色さん、もしあのサングラス野郎に会う事があったら、こうお伝えください。

























 黙ってろ雑魚が、と。」



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