メッセージ
--およそ1時間前。
マリアと瀬奈は2人揃って屋敷へと戻った。
「ただいま戻りました」
瀬奈が帰ったという合図として声を出したが、
弥士や叶色が返答する事は無かった。
「もう寝たのかもしれないわ」
「そうですね、もう遅い時間ですから。
今日あった事の説明は、明日皆が集まった時にしましょう。
マリア、少し部屋で待っていてくれますか。汗を流してきます。 」
「えぇ。」
マリアと瀬奈はそれぞれ自室とシャワールームに向かった。
部屋に入ってベットに腰掛けたマリアは胸ポケットから瀬奈から渡された銃と
1台のスマートフォンを取り出した。
「開くのかしら………」
それはゲオフが着用していたスーツのポケットに入っていたスマートフォンだった。
軽く画面をタップすると光り、ロック画面が表示される。
指紋認証や顔認証でのロックはかかっておらず、簡単にホーム画面が表示される。
「見た目はきちんとしてそうな人なのに、意外と危機感無いのかしら?」
知らない他人のスマートフォンの中身を探るような感じがして少し罪悪感を覚えた。
だがその罪悪感は、通知の来ているメッセージアプリを見るなり興味へとすぐに変わった。
「見てもいいよね、もう居ない人だし」
マリアはメッセージアプリを開いて通知を確認する。
「稲荷杏……」
ゲオフ宛にメッセージを送っていたのは先日屋敷に来た稲荷杏だった。
マリアは急いでトーク画面を開く。
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瀬奈と弥士殺したらいつものボロ遊園地来てなー
あ、死体も持って来てや
ゲオフくんにはほんま期待してるんやで??
ほなね~
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「っ………」
ゾッとした。
稲荷がどうしてあの時この屋敷に来たのか。
瀬奈が殺したあのゲオフという男が瀬奈達に会いに来た理由を知った
マリアは寒気を感じた体の震えが止まらなくなった。
「あの男………」
それと同時に許せない気持ちと殺意に満ちた。
「でも何で、瀬奈達を殺すなんて………」
マリアはその理由を探るべく
ゲオフになりすましメッセージを送ろうとするが、
自分の知らない人間になりすます事は到底難しく手が動かない。
そんな時ふと、ベッド横のサイドテーブルに目が行った。
「稲荷くんの、電話番号………」
そこには、稲荷が屋敷にやって来た時に渡された電話番号のメモがあった。
それを手に取り見つめるマリア。
自分のスマートフォンその電話番号を入力してみる。
「いきなり掛けても、警戒するわよね………」
入力した電話番号を削除して
マリアはそのメモを再びサイドテーブルに置き、メッセージを見返す。
「いつものボロ遊園地………
確かここから少し離れたとこにもう営業していない遊園地があったわよね。
もしかしたら、そこに稲荷杏が……。
イチかバチか、行ってみようかしら。」
マリアは部屋の時計を見る。
もうだいぶ遅い時間だったが、新しいメッセージが来ていない事を見るに、
稲荷はまだその遊園地でゲオフを待っているのだろう。
「聞けなくても、少しパイプを作る意味では、収穫はあるかも。」
マリアはベッドから立ち上がり、ドレッサーに掛かっていたコートを手に取り窓から飛び出した。




