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廃れたメリーゴーランドと深夜のお姫様

「遅いなぁ……ゲオフくんはいつまで雪兄弟と呑気にお喋りしとんや………?」


稲荷杏は廃れ切った遊園地にあるメリーゴーランドに腰掛けて、ゲオフを待っていた。


「電話掛けてもでぇへんし、ほんま待たせすぎやで…」


よっ、とメリーゴーランドから飛び降りて、出口に向かって歩き出す。


ふと目に入る、遊園地の案内看板。


数年前までは賑わっていたこの遊園地も、求められなければ壊れてしまうのも一瞬だ。


案内看板にはひびが入り、ペンキで綺麗に塗られていたであろう箇所も、塗装が取れていた。


「悲しいもんやなぁ」


稲荷はそう呟くと案内看板に向かって足を振り上げて、力強く下ろした。


看板はバキバキと大きな音を立てて崩れていく。


「役目終えたモンにはこれがお似合いや。」


ボロボロに崩れた看板を見下ろしていると、背後に気配を感じた。


「ゲオフくん遅いわぁ……、人待たせるなんて重大犯罪やで全く…、」


稲荷が振り向くと、そこに居たのはゲオフではなく、マリアであった。


「こんばんは」


「えっ、え!?マリアちゃん!?


 こんな夜遅くに女の子が1人で出歩いたら危ないやろ!?」


自分が対面するはずの無い人が目の前に居て、動揺を隠せない稲荷。


怒りよりも心配、心配よりも喜びが勝っていた。


「そうですよね、もうだいぶ深い時間ですもんね、


 でもどうしても稲荷くんに会いたくて。」


そう言って稲荷に1歩近付くマリア。


稲荷はマリアにこう言われて完全に心躍っていた。


「えぇ…そんなん照れてまうわぁ、マリアちゃんめっちゃ可愛いから絶対また会いたかってん!」


「ふふ、ありがとうございます」


「それで、どうしても会いたい用事ってなんなん??」


「稲荷くんに、聞きたい事があるんです、


 瀬奈に聞いてもはぐらかされて………」


「何でも聞いてやぁ!」


マリアはニコッと笑いかけると、更に稲荷との距離を近付けて稲荷の両手を握り締める。


「ちょっ、マリアちゃん見かけによらず大胆やなぁ……」


稲荷もマリアの手を握り返す。


「貴方達のボスに会うには、どうしたらいいのかしら?」


ボス、という単語を聞いた途端、稲荷は目を見開いた。


「何て言った、今」


「貴方達のボスに会いたいの。」


マリアは一貫して同じ声のトーンで続ける。


「マリアちゃんさぁ、幾ら何でもボスに会おうとするんは早ない?


 俺らまだそんな段階ちゃうやろぉ、もうちょいデートとか重ねんとあかんと思うねん」


「………ん?デート?」


予想外の返答に驚くマリア。咄嗟に手を離した。


「え、ボスに会うって事は、両家顔合わせ的な?結婚の挨拶ちゃうのん?」


話が通じないと感じたマリアはこれ以上言葉を発する事さえ面倒であった。


(何よ、色仕掛けすればポロッと口を滑らせると思ったのに、ただ勘違いするだけじゃない。


 ほんと最悪、時間を無駄にしただけじゃない……)


「ま、マリアちゃん………??」


「結婚なんてしないわよ。


 貴方達のボスから直接聞きたい事があったからすぐに会いたいの。


 貴方となんて、お付き合いする訳ないでしょ。」


ガーンという重たい効果音が稲荷から聞こえてくるかのように落ち込んでいた。


「そんなぁ……」


「でも、貴方とは仲良くしたいと思っているわ。


 もし私が困っている時、助けてくれたりしないかしら?」


そうマリアが提案すると、稲荷は落ちこんでいたのが嘘のように明るい笑顔になった。


「勿論やで!!」


「ありがとう、そろそろ私は帰るわ。」


そうマリアが言うと自分も帰る、と稲荷も付いてきた。


遊園地を後にし、途中の道まで同じスピードで歩みを進める。


分かれ道になり、稲荷は手を振った。


「じゃ、俺こっちやから」


「うん、またね」


「うん、またすぐ会おなー!」


それぞれの道へと向かっていく。


だが、すぐにマリアは足を止めて、稲荷の居る方へと顔を向けた。


「稲荷くんが待っていたゲオフさん、もう貴方の前には現れないと思うわ。」


マリアの声は小さく、楽しげに鳴く虫達の音色にかき消される程であった。


だが確実に、稲荷の耳には届いていた。



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