暗躍前夜
ー40番目のオプファー、君か。
ー厚すぎる下手な化粧に、鼻腔に刺さるキツイ匂い。
ーこれだから色気づいた若い女を執行するのは好きじゃない。
ーこれで肉まで不味かったら、俺はお前を地獄に送ってやるだろうな。
×月×日。
「いやああああああああっ!!!!!!」
真夜中に響く女の叫び声。
ー40番目のオプファー、九伊桜の声であった。
彼女は今、目の前に居る金髪の男に左足を切断され、
丁度太腿の肉をステーキとして食されている最中であった。
「全く、本当に下品な女だな。
幾ら占星術とはいえ、ボスを疑ってしまう。」
切断面から流れる鮮血の匂いと、肉を焼いている煙で噎せ返りそうになる。
「っ、誰なのよあんた!!!!
痛い、痛い、誰かああああああああ!!!!!」
桜は力の限り叫ぶ。
真夜中であったとしても、これ程までに大きな声を出せば同居している親族に届くと、
細やかな希望を込めて叫んだ。
「チッ、」
金髪の男はどんどん苛立っていた。
「本当に下品だ。」
男はそう呟くと、縛り上げた桜の前髪を掴み、
彼女の太腿を焼いている火の中に顔を埋めさせた。
「っっっーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
桜の声にならない叫びは、火の中に吸収されていく。
暫くして、彼女の声は完全に途絶えた。
「俺の大事なディナータイムに全く相応しくない虫ケラ女だったな。」
一息ついて、男はウェルダン程に焼きあがった桜の肉にすっとナイフを入れる。
ゆっくりと味わうように肉を噛み締める。
「うん。俺が直々に執行する女としては最低だったが、なかなか良い味だ。」
男はペロリと平らげると、次に食す部位を吟味した。
火の中から桜の顔であった部分を取り出す。
「醜いな。
どういう育ち方をすればこんな醜い顔で生きられるんだ。」
男は桜の目玉を2つ、皿の上に取り分けた。
「これは最後に取っておこう。」
男はディナータイムを続けた。
「ご馳走様。」
数十分後、男は積まれた骨に言葉を残し、桜の部屋から立ち去る。
いつの間にか、空では少し太陽が顔を出していた。
「もうこんな時間か。
先にボスに報告しに行くか、それとも………」
「ゲオフくん、口の周り真っ赤になってるでー?」
いつの間にか”ゲオフ”、と呼ばれた男の首に回っていた腕。
「稲荷杏、触るな。」
杏の手を退かしながら、ナフキンを取り出し口の周りを拭くゲオフ。
「ゲオフくん、まぁだオプファーの女の子食べるきっしょい執行してんの?」
「貴様もそのうちこの執行の良さが分かるさ。」
「いやいや、怖すぎるやろ。
貢ぎモンとはいえ人間の肉食うて気持ちよくなってるんやろ?
ホラーとかじゃ済ませれんて………」
頭を抱える杏。
「用が無いならさっさとどっか行け。
俺は貴様と居るとイライラするんだ。」
「うっわ!何それ、普通本人前に言う?!」
肩を落とし、落ちこむ様子の杏。
「でもな、」
先程の落ち込んでいた様子の杏は一瞬で消え去り、口角を上げて笑う杏。
「めっちゃおもろい話あるねん、聞きたい?」
「面白いかどうかは俺が決める。」
「つまらんなぁ。
まぁええわ。
ゲオフくんさぁ、俺が雪兄弟潰すって言うたら、協力してくれる?♡」




