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5日目 〜海〜

目が覚めた。


木造の天井、台所から聞こえる包丁の音。

島での生活もだいぶ慣れてきた。


おばあちゃんの朝ご飯を食べて僕は駄菓子屋に向かった。


駄菓子屋に到着するとなにやら騒がしい。

子どもがたくさんいた。

その中からハルを発見。


「おはよ!」

「おはよぉ」

「今日はすごい賑わってるね」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「なにが?」

「あちゃー、今日は島の子たちと海で遊ぶんだよ」

「えぇぇ、聞いてない・・水着持ってきてないよ・・」


水着は島には持ってきていた。

出発日に慌てて準備した割にしっかりと。


「じゃあ僕一回取りに帰るね!」

「ほんとごめんねぇ。前に紹介した堤防のすぐ隣の砂浜に来てね!」

「了解!」


僕は急いで帰った。

海で遊べるのが嬉しかったからだ。

嘘だ。ハルの水着姿が楽しみだった。


水着を取って砂浜に到着。

そこにはいつもの4人の姿があった。


「おーい!」


カズマは僕と同じような膝上まである水着を着ていた。

ルナはビキニ。

ツヨシは学校の指定水着だった。

そして肝心のハルはというと、水着の上に薄いパーカーのようなものを着ていた。無念。


するとルナが僕に耳打ちしてきた。


「昨日のハルとなんかあったでしょ。」

「えっ」

「ハルはいつも学校指定の水着なんだよ。でも今日は気合い入ってる。間違いないね。」


僕のことを意識してくれてるということだろう。

すごく嬉しい。


高校生の午前中の仕事は子どもたちの見張り。

僕たちが海で遊べるのは午後から。


パラソルの下でお菓子を食べながら子どもたちを眺めていた。

すると低学年くらいの女の子が溺れているのを発見した。

浮き輪が逆さまになってしまったようだ。

急いで助けに行こうとしたとき、隣にいたツヨシが猛スピードで走って飛び込んで行った。

すかさず浮き輪をもとに戻して女の子と一緒に帰ってきた。

ツヨシの意外な一面を見れた。

溺れていた子は面倒見の良いカズマがなだめている。

僕は自分の無力さを実感した。


そうこうしているうちにお昼ご飯の時間になった。

中学生以下はみんな帰った。

僕たちは砂浜のすぐ近くのぱんぷきんでご飯を食べる。

水着のまま店内へ入った。


僕とハルはオムライス。

他の3人は別のものを注文した。


「オムライスハマったね?笑」

「もう一生これがいい笑」


前回食べた時よりも美味しく感じた。


みんな食べ終えいざ海へ。

ハルはさり気なく薄いパーカーのようなものを脱いだ。

フリフリのついた白くて可愛らしい水着を着ていた。


「恥ずかしいからあんまり見ないで・・」


僕の視線に気付いたハルはそう言って海へ走っていった。

ルナは隣でニヤついていた。


その後僕たちは泳いだり、ビーチバレーやスイカ割りなどをした。


それだけ遊んでもまだ15時だった。


「よ〜しっ晩飯取りに行くか!」


カズマが言い出した。

堤防で釣りをするみたいだ。

すぐ近くの堤防へ向かった。


「ちょっと待っててな〜」


カズマはそう言って小さな物置に入った。

すぐに人数分の釣り竿と道具箱を持ったカズマが出てきた。


「よっしゃ始めっか」


どうやらその物置は島の釣人共有の物置らしく、みんな釣り竿やら道具やらをそこに保管しているらしい。

カズマはみんなの仕掛けを作ってくれた。


「僕釣りしたことないんたけどどうすればいいの?」

「ウキ釣りだから難しいことはない。放置しておいてウキが沈んだらすぐに巻きあげる!簡単だろ?」


説明を聞く限りでは簡単だった。

僕たちは釣り糸を垂らして魚を待っているとフェリーが出港するのが見えた。


「そういえばあの時の嵐すごかったね。僕は具合悪くて寝ちゃったけどハルは大丈夫だった?」


僕は何気なくハルに聞いた。


「え?」


みんなが僕の方を向いて不思議そうな顔をした。


「きたー!!!」


ハルが大声で言った。

どうやら魚がかかったらしい。


「よし巻け巻け〜」


ハルは一気に巻き上げた。

だが仕掛けには魚はついていなかった。


「あれぇ?たしかにウキが沈んだんだけどなぁ」

「あ~、まぁたまにそうゆうこともあるよな〜」


その後も夕方まで釣りを続けたが結局誰も釣れなかった。


「くそ〜、やっぱこの時間はダメかぁ」


どうやらこの時間帯は釣れにくいらしい。


「今日は大物釣ってみんなで刺身パーティするつもりだったのによ〜」


カズマは落ち込んでいた。

そこにタイミングよくさっきまで近くで釣りをしていたおじさんが通りかかった。

おじさんはカズマが落ち込んでいるのを見て話しかけた。


「カズマ!釣れなかったのか?」


カズマは事情を話した。


「なーんだい、そんなことかい、ほれ」


おじさんはクーラーボックスをカズマに渡して帰っていった。

クーラーボックスを開けるとたくさんの魚が入っていた。

少し申し訳なく感じた。


「こんなに貰ってよかったの!?」

「ラッキーだったな!おじさんは島で一番の釣り名人なんだけどな、魚介類全般食べられないんだよ〜」


食べられない魚を釣って楽しいのかなと思った。

そしておじさんへの申し訳なさは消えた。


「よし!帰って刺身パーティだ〜!」


カズマはすっかり元気になっていた。

僕たちはカズマの家へ向かった。


家につきカズマが魚を捌いている間、僕たちは交代でシャワーを浴びることになった。

僕が最後にシャワーを浴びて居間へ戻るとテーブルの上に沢山のお刺身が並べられていた。


「すご!これ全部カズマが捌いたの!?」

「あたぼ〜よ〜!」

(ペシッ)


ルナがカズマの背中を叩いた。


「カズマのママが全部捌いたんだよ!」


カズマも挑戦してみたが上手くいかず、お母さんが捌いてくれたらしい。

カズマは盛り付け担当だったようだ。

僕たちはお刺身をお腹いっぱいになるまで食べた。

お刺身でお腹がいっぱいになるなんてことはもう一生ないのだろうと思った。


「明日はハルんち何時に行けばいいんだっけ?」

「んー17時くらい?」

「りょーかい」


ツヨシとハルが話していた。

僕は胸がキュッとなった。

この日はこれで解散になった。


帰り道はまたもや途中までハルとふたりだった。

僕は釣りをしているときにハルが誤魔化した理由を聞いてみた。


「ウキ、沈んでなかったよね」

「ほんとに沈んだんだってばぁ」

「ハルのウキは僕のすぐ隣にあったから見てたんだよね」

「あぁー確かに笑」


結局ハルは誤魔化した理由を教えてくれなかった。

正直ツヨシがハルの家に行くことの方が気になったが、それは怖くて聞けなかった。


僕は明後日の16時のフェリーで帰ることになっている。

ハルの返事もまだ聞けていない。

不安な夜を過ごした。

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