2日目 〜夜の学校〜 後編
夜になった。
おばあちゃんに一声かけて僕は家を出た。
友達がいないのもあって夜外に出ることがあまりない僕はワクワクしていた。
学校に到着すると既にみんな来ていた。
「おまたせ!」
集合時間の前に来て2人きりになるのはまだ少し気まずいので、僕は集合時間ピッタリにきた。
「さて行きますか!」
張り切ったカズマを先頭にみんなで校舎へ入った。
ハルは全然怖がっていない様子。
ツヨシはキョロキョロしながら怖そうだった。意外だ。
ルナも最初は乗り気だったがいざ始まると怖くなったのかカズマにピッタリくっついている。
一階は下駄箱、職員室、校長室、保健室、図書室の順番で周った。
夜の学校で雰囲気はあったが、当然幽霊などは出なかった。
二階に上がる途中でカズマが言った。
「いまなんか音聞こえなかった〜?」
僕たちはなにも聞こえなかった。
「怖いこと言わないでよバカ!」
ルナがカズマの背中を叩く。
ルナとツヨシは更に怖がっていた。
僕も少し怖くなってきた。
二階は理科室、教室2つ、調理室、音楽室の順番で周るそうだ。
まずは理科室に入った。
「わあぁぁぁ!!」
ツヨシが急に叫んだ。
それにつられて僕たちも叫んだ。
余裕そうだったカズマまでもビックリしていた。
どうやら理科室に入ってすぐ右側にある人体模型にビックリしたようだ。
学校で肝試しなんて幽霊も出るわけないのに面白いのかと思っていたが、そんな心配は不要だった。
次に教室を2つ周った。
机の数が少なく、スカスカの教室だった。
その後の調理室も特になにもなく終わった。
最後の音楽室に向かう途中、ピアノの音が一音だけ聞こえた。
「ポーン」
僕たちはお互いの顔を見合わせた。
今の音はさすがにみんなにも聞こえていたらしい。
「ヤバイヤバイ!!なんで!?」
ルナは相当テンパっている。
余裕そうなカズマはルナに言った。
「ピアノの上になんか落ちただけでしょ〜」
「なんかってなによ!」
「石とか?」
「もう無理!降参!帰ろ!」
「あと音楽室だけなんだから最後に確認しようぜ〜」
「なにいってんの!?バカなの!?」
ルナはキレぎみだった。
結局カズマの押しに負けて音楽室を確認することになった。
カズマがそーっとドアを開ける。
中を確認してみるがもちろん誰もいない。
恐る恐るピアノの方に行ってみる。
何もなかった。
ホッとしてみんなで教室を出ようとしたその時だった。
(ダダダダーン!ダダダダーン!)
急にヴェートーベンの「運命」が音楽室中に響き渡った。
さすがにみんな叫んだ。
カズマは猛スピードでみんなを置いて走り出した。
僕とハルもその後ろを追いかけて走った。
カズマとルナは腰が抜けてだいぶスタートダッシュが遅れていたが必死に走った。
走っている途中もなにかが後ろから追いかけてきているようで凄く怖かった。
やっとの思いで校舎から出た。
遅れてルナとツヨシも出てきた。
ルナは泣き崩れてメイクもボロボロ。
ツヨシは魂が抜けたようだった。あとズボンが濡れていたような・・・見なかったことにしよう。
「わっはっはっは笑。ビビりすぎ~笑」
先に出ていたカズマは爆笑していた。
ハルも笑っていた。
「なんだったんだ・・」
僕もこれは怖すぎた。
「実はな、あのピアノの音は俺がスピーカーで流してたんだよ笑。大成功!!」
どうやらカズマは一足先に来て音楽室にBluetoothスピーカーを仕込んでいたらしい。
「そうゆうことかぁ・・よかったぁ」
安心する僕の横をスタスタと歩くルナ。
(ぱちーん!!)
ルナの強烈なビンタがカズマにクリティカルヒット。
「いった~・・」
カズマは焦っていた。
まさかこんなにルナが怒るとは思っていなかったのだろう。
「最低!まじでクソ!あんたのことなんてだいっきらい!もう別れる!!死ね!!!」
ルナはそう言い放ち早足で帰ってしまった。
みんな啞然とする。
この空気に耐えられず僕は言った。
「帰ろっか」
そうして解散したのだった。
帰り道、僕とハルは途中まで話しながらゆっくり歩いて帰った。
おばあちゃんの家までの帰り道にハルの家もあるからだ。
「大変だったね」
「まさかルナがあんなに怒るなんてねぇ」
「でもルナの気持ちもわかるな。ルナあんなに怖がってたのにカズマったらルナ置いて全力で走って行っちゃうんだもん」
「たしかねぇ笑。でも面白かった」
「てかなんでハルはそんなに余裕そうだったの?怖くなかったの?」
「わたし幽霊が怖いって気持ちがよくわからないんだよねぇ」
神社の娘はすごい。
僕とハルもその後解散してそれぞれ家へ帰った。