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彼女が彼女になる前のこと  作者: 説那


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第九話 症状

「そなた、大分前から似たような症状があったのではあるまいか?」

 エンダーン様が寝台に横たわる私の顔を見て問いかける。

 質問に答えられないでいると、エンダーン様の後ろにいたアシンメトリコが口を開いた。

「宰相の職務中に、急に眠り込んでしまうことがありました。しばらくすると、すぐ起きましたが。」

「・・たまに手足がマヒすることはありました。全身が動かせなくなるのは初めてです。」

 私たちが話すことを聞いて、エンダーン様は大きく息を吐いた。


「その症状は、ここに来てから起きているのか?」

「いえ、以前からです。・・商人に売られて、奉仕をするようになってから、1年くらいたったころからでしょうか。」

「頭や顔、身体を強く叩かれたり、どこかに打ち付けられた経験は?」

「・・数えきれないほど。ここに来てからはありませんが。」


「原因は身体であろうが、私には治すことはできない。医者ではないからな。」

「エンダーン様。それでは。」

 アシンメトリコが言葉を発しようとするのを、エンダーン様は手で制した。

「ひとまず、身体が動かせるようになるまでは、そのまま休め。」

「申し訳ございません。ご迷惑をおかけします。」

 エンダーン様は私の言葉に軽く頷くと、そのまま部屋を出て行った。アシンメトリコもエンダーン様の後に続いて出て行く。


 私はそれを見送ると、大きく息を吐いて、瞼を閉じた。

 前々から予兆はあった。

 めまいがしたり、視界が暗くなったり、エンダーン様に言ったように、手足がマヒして一時的に動かなくなったり、少し前に何をしていたか分からなくなったり。

 いずれの症状もすべて一時的なものだ。それで、寝込んだりしたことはない。

 記憶の混濁も、短期記憶のみ。長期記憶には問題はない。

 ただ、頻度は上がっている。時間がたてばたつほど。


 私は近い将来死ぬのだろうか?

 死ぬことは怖くはない。私には大切な者や心残りにしていることもない。

 そもそも、私はエンダーン様に買われた段階で、私の命を握っているのはエンダーン様だから。きっと、エンダーン様に死ねと命令されれば、喜んで死ねる。

 願ってもいいなら、死ぬ直前までは、エンダーン様の側にいられればと思う。

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