第十話 方針
「エンダーン様。あのまま、アメデを見捨てるおつもりですか?」
「見捨てる?」
エンダーンは、アシンメトリコの方を振り返って、不思議そうに言った。
「アメデは私のものだ。私がどうしようと、そなたには関係ないではないか。」
「ですが・・。」
「とは言っても、私もアメデに死なれては困るのだがな。やっと手に入れたものなのに、こちらの意に沿わないのは気に食わない。」
エンダーンは、考えるように顎に手を当てた。
「医者ではないから、何か病に侵されていても、私には治せない。だが・・。」
「エンダーン様?」
エンダーンはアシンメトリコをちらりと見やると、手をひらひらと振った。
「少なくともすぐに死んでしまうことはないであろう。しばらくは今まで通り過ごすでよい。どのようにするかはこちらで考えておく。」
「アメデを助ける・・のですね?」
「基本方針はそれで。ああ、アシンメトリコ。」
「何でございましょう?」
「そなたから見て、アメデは有能か?」
「覚えはよいですし、宰相の仕事は私がいなくても任せられるでしょう。」
「そうか。だが、そなたがいなくなっても困るので、何かあれば進言しろ。」
「・・かしこまりました。」
「そなたは、父上の時から側にいてくれている忠実な配下だ。私も信頼している。」
「ありがとうございます。」
珍しくエンダーンの顔が穏やかなものになっている。普段は年齢以上に大人びた表情と口調をし、周りに自分の思考を悟られないよう振る舞っている。きっと、気の休まることなどないのだろう。
歳の近いアメデと出会ったことで、少しは気が紛れているといいのだが。
アシンメトリコは、心の中で大きく息を吐いた。




