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現実オープンワールドロボット構築アクションRPG

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 青すぎる空、ガラクタまみれの荒野。

 遠くから地面がひっくり返るゴウゴウという音が響いている。

 午前中に一度だけ雨が降った。足元に河ができるほどの土砂降りで、機体を踏ん張らせなければ流されそうだった。

 それからすぐに地獄のような晴天に戻って、気温は一気に上昇した。熱耐久テストでもさせられている気分だ。

 機体表面温度は恐ろしいことになっていて、降りるとき誤って装甲に手をついたら焼肉ができてしまうことだろう。コックピットには一応クーラーがついているが、蒸し風呂状態だ。こんなことでは光熱兵器をくらったら一発アウトだろうが、耐熱コート加工は高価すぎてどうしても後回しにしてしまっている。


「今日はこんなもんでいいか。全機撤収、テッシュ~」


 アーマーの背部マウントのストレージカーゴがガラクタでいっぱいになったので、労働用ボットたちに集合命令をだした。

 アーマーとは、この世界で最も普及し活躍している人型ロボットだ。胴や頭や手足などのパーツを自由に組み替えられ、流動する大地の過酷な環境に適応できる。この存在が無ければ人々の生活が成り立たないほどの乗り物である。

 だが俺が乗っているのは最低級のアーマーだ。棒のような腕と脚。頭部はただカメラをのせた台。胴だけは軍用グレードだが、恐ろしいほどに古びている。

 一度でいいからピカピカの一線級パーツで全身を揃えてみたい……というのはアーマー乗り(ドライバ)のほとんどが抱く夢だが、それを叶えられるのはごく一握りだ。超高級スポーツカーを夢見るようなものである。


「今日も無事に帰ってきたなーえらいぞー」


 下半身だけのようなロボットが3機歩いてきて、俺のアーマーのそばにならんで待機姿勢をとる。

 こいつらはアーマーの脚パーツのみで構成された無人ボットだ。俺と同じ最低級のアーマー用脚パーツに、低級CPUとカメラと作業用アームをくっつけて、最低限の作業ができるようになっている。条件にあうジャンクを拾い集めるように命令していた。

 3機は全員、頭にのっけたカーゴいっぱいにガラクタを積み上げている。ポンコツだが文句なく働くカワイイ奴らだ。


「よーし、帰るぞー」


 成果は……今日もぼちぼちだ。使えなくもない程度の鋼材、サルベージできるか微妙なデータクリスタル、奇跡的に動くかもしれない腕パーツと脚パーツの残骸。

 まあ装備がボロなのでしかたない。

 ストレージカーゴといっても俺がカッコつけてそう呼んでいるだけで、実態は廃材を”カゴ”の形にして胴体パーツへ溶接しただけの原始的すぎる代物。本当に背負うだけだ。戦闘モードを起動したらそれだけで赤字になるほどのエネルギーを消費してしまうから、重力軽減も空間圧縮もできない。ブースターも起動できない。

 脚部パーツがぶっ壊れない程度に積載して、えっちらおっちら歩いて帰るのだ。

 危険な地域までガラクタ拾いにいけばもう少し金目のものも拾えるだろうが、俺のアーマーにはそもそも戦闘用装備がひとつもない。小型のキメラや殺人ロボットくらいなら必殺技の廃材スイングで倒してみせる自信はあるが、そんなことを何度もしていたら脚部パーツも腕パーツもポッキリ折れて、結局は赤字になってしまうだろう。この最下級パーツ自体は安いのだが、働けない期間中は稼ぎがゼロになるし、街の外で行動不能になってしまえばサルベージに金がかかる。それは避けたい。


 ↵


「おー、警備隊のやつらだ。どこ行くんだろ」


 拠点まで帰る途中、上空を10機ほどのアーマーの部隊がフライトブーストで景気よく飛んでいくのが見えた。

 見るからに強そうなアーマーたちだ。両手には定番のライフル砲。背部マウントはもちろん荷物カゴではなく、グレネードやら機関砲やらの重火器を背負っている。

 大型キメラでも狩ってくるのだろうか? 有機体液をたくさん採ってきてほしいものだ。大漁になれば食料液が安くなる。

 電磁ビームっぽいもので連結して編隊を組んだアーマーたちは、長距離移動用のフライトブーストの光を残して、あっという間に地平線のむこうへ消えていった。


「いいなあ……あれこそアーマーって感じだよなあ。まあこれでも昔よりは……この世界に来た頃よりは、これでもずいぶんマシになったけど」


 俺はアーマーが好きだ。あいつらみたいにバリバリにツヨツヨなアーマーをブンブンしたい。

 だがこのオンボロアーマーでやりくりする生活もそれなりに気に入っている。

 なんせ最初はもっとひどかった。

 この世界にアーマーという素敵なロボットがあることも知らず、暗闇で地獄のサバイバルをするだけの、地底人だったのだから。


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