勃起
書いてたら話があさっての方へ飛んでった。
勃起とは不思議なものである。
女性がこんな奇態なタイトルの糞エッセイを読もうとするとは思えないので、以降の問いかけはすべて、画面の前のあなたは男性だと想定し問うが、勃起を自由自在にコントロールできる達人とは存在するだろうか。
一部のAV男優が食事管理や筋力トレーニングを駆使して勃起力を鍛えているというのは知っているが、おそらくそれはあくまで勃起状態の持続力であり、勃起をさせるパワーとは違うのではなかろうか。
筆者はかつて勃起に自信があった。自信があったというか、勃起のハードルが著しく低かった。どんな些細なエロスでもすぐさま勃起した。何ならエロスがなくても勃起した。
学生時代は授業中の半分は勃起していた気がする。おかげで授業が終わった時の起立の挨拶はだいたい前かがみである。ちんこはまっすぐ起立してんのにね……。とにかくヤツが起立したいと言い出せばどんな状況であっても、それを止めることは持ち主たる我々にも出来ない。せいぜい郷里の父母を脳裏に浮かべ抗うくらいである。読者諸君も焦った経験があるはずだ。
逆に今の筆者のちんこといえば、起立の号令が鳴り響いてもヤツはのそのそともったいぶり、筆者が顔を真赤にして起立を連呼するとあきれ果てたようにうなだれたままピクリともしなくなる。起立の号令をかける場面とはまあそういう場面であり、抜き差しならない用事というやつである。そういう時は本当に抜き差しできなくて涙をのんだ。
筆者の勃起事情について、昔と今では方向性は真逆だが、共通しているのは【コントロール不能】という点である。
これは筆者個人の問題というよりは、人類という種の欠陥であると思う。本当は全哺乳類や全地球生命体という特大主語を使いたいが、他の動物の勃起事情は寡聞にして存ぜぬので人類という言葉を使わせてもらう。とにかく人類の男性に生まれて、生殖器が健全であれば、勃起関係で悩んだり焦ったりしたことのない奴は殆どいないのではなかろうか。
ヤる気スイッチが欲しい。押すと勃起する。長押しすると萎れる。
そもそも性的に興奮すると勃起する、というシステムは合理的なのだろうか。常時勃起状態ではだめなのだろうか。筆者が近頃気づいたところによると、勃起にはなかなかのエネルギー量を使う。三十に近づくにつれ気づいた(哀愁)。おそらく勃起を常時やると他の部分のパフォーマンスが落ちる。昨今の価値観の中男女の役割分担を云々するのは大変心苦しいが、あくまで動物としての人類を見ると、男性は狩猟が主たる生業である。常時勃起という狂った世界の実現のためにそちらを疎かにしては種として立ちゆかなかったのだろう。なにせ命にかかわるので。
では発想を転換し、女性が狩猟してはどうか。女性がガンガン狩猟し男性はギンギン勃起し続ける。
またしてもジェンダー的なあれこれはうっちゃって、あくまで人間を動物の一種として見ても、これは合理的ではない。女性は妊娠するのだ。身重の体に狩猟はキツイだろう。そして子孫を残すというのは動物的にはひとつの目標である。妊娠とは、かくも繊細で偉大なものである。常時勃起世界などというタワゴトと天秤にかけて良いものでは断じてない。
遅々とした歩みではあるが、男女共同参画、性差によらない社会の実現の流れは世界的なものだ。
動物としての人類が持つ枷である性差を起点とする分業、そういったものが真実失われた時、勃起はどうなるのか?
そこまで社会が進む頃には、なんかよくわからんけどAI?とかシンギュラリティ?とかで人類の労働負荷は極めて小さくなっているかもしれない。
すると、人類男性が持て余すパワーは勃起へと注がれ、人類男性は常時勃起生命体へと進化するのだ。するわけねえだろ。とにかくヤる気スイッチをくれ。今すぐ。かの有名な勃起不全改善薬バイアグラは近ごろ何かと話題のファイザー社製らしい。つまりアメリカ製だ。負けていいのか日本人よ。鬼畜米帝ナニするものぞ。日本人よ、勃ちあがれ。根性見せろ。世界初:ヤる気スイッチはメイドインジャパンでお送りするぞ。いざ勃てせんとくんよ[ジャスラック対策]、御旗に続け。バンザイ。
完
あなたが最後に心の底から勃起したのはいつですか?