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公爵家の人々 1

大分時間が空いてしまいました……すみません……


 『全くもって理解できない』ソルは困惑すると同時にそんな言葉が頭に浮かんだ。


「お、お父様(お義父様)!?な、何故泣いていらっしゃるの!?」


 思わず取り乱したソルを余所にルヴィークは泣き続ける。


「だ、だってパパがソルちゃんの事をきちんと愛してあげられなかったからー!ソルちゃんが、ソルちゃんが!うわぁぁぁぁん!!」


「えぇぇぇぇ!!??ちょっ、お父様(お義父様)、落ち着いて下さいな。私はそうまでして謝られるような事はしておりませんわ。むしろ家族にまで迷惑をかけてしまって……謝るべきは私の方ですわ」


 ソルが机に突っ伏して泣くルヴィークのそばへと向かいそう声をかけると一瞬泣き止み、うるうるとした目でソルを見つめたルヴィークは更に泣きそうになりながら震え始める。


(えっ、ちょっ、待って!?私何か選択肢間違えた!?それとも対応ミスった!?)


 『まずい』そう思った瞬間、執務室の扉が開かれ、そこには母親であるラフレーズだった。凛とした眼差しでこちらへと歩いてくる姿は高貴な薔薇のようだった。


(あ、これは多分お母様(お義母様)が叱ってくれるのかな?ある意味助かったけど助かってない……)


 扉はきちんと閉められ、防音の魔法が掛けられるとラフレーズはそのままソルに駆け寄り抱き締める。


(えっ……?)


 ふわりと香った苺の香りにソルは混乱しながら少し状況を整理すると既視感を覚え始める。


(この雰囲気……まさか……)


 1つの答えが導き出されると同時にラフレーズはふるふると震え始めソルを抱き締める力を強くする。


「えーん!!ソルちゃん、こんなママでごめんなさーい!ママがもっとソルちゃんに幸せになって欲しい事をお話したり一緒にお散歩出来たらこんなことにならなかったのにぃ!」


「そんな事を言うでない!そんな事をママも言うならパパ、もっと泣いちゃうじゃないか!!うわぁぁぁぁん!」


 ソルの出した答えが見事に的中し、思わず白目を剥きそうになるが堪えるとソルは笑顔を作り、話す。


お父様(お義父様)お母様(お義母様)も顔を上げてください。今回の件はどんなに頑張っても私が10割悪いのです。そんな当たり前のことで謝らないで下さい。私が謝るべきなのですわ。本当に申し訳ありませんでした」


 その言葉に2人が顔を見合わせると抱き締めていた身体を離して涙を拭う。


「……ソル」


「それに、私は家名に泥を塗り、降格させられてもおかしくない事をしたんですもの。私のみの処分で家が救われるならそれくらい、問題ありませんわ」


「ソル!……私たちは家が降格しようとも構わなかった。大切な娘だけが家から外されて笑いものにされるのは嫌なんだ」


 ルヴィークが涙目で訴え、手をとる。


「気持ちはとてもありがたいことです。けれどトルはどうなのです?私のせいで弟まで笑われてしまうんですのよ!私の先を見ない行動のせいで、あの子に迷惑をかけているのに更に迷惑をかけるわけにはいきませんわ!」


 その手を振り払い2人に訴えるとラフレーズが優しく頭を撫でる。


「そうね。トルの気持ちや立場も考える必要があったのは否定しないわ。……それでも、私たち家族は貴女のことをとても大切に思っているの。だからこそ、貴女に全て背負わせることになってしまった現実に悔しい思いをしているの」


「〜っ!」


 その言葉に今までせき止められていた何かが壊れてソルの中で暴れ出す。


「……っうあぁぁぁぁぁ!!っぐ、うぁぁぁぁあ!」


 苦しくて、悔しくて、怖いという感情。わけも分からずにただ泣きじゃくるソルを2人は優しく抱き締めて、何も聞かずに寄り添うとソルの心はどこが温かい気持ちに包まれた。




 少し時間が経ち、ソルも泣き止むとルヴィークとラフレーズは提案をした。


「ソル、3ヶ月しか時間は無いが私たちにできることは頑張ってみる。だから、旅立ちへの餞別の準備や思い出をその間に作らせてくれないか?」


「できる限りのものをプレゼントさせてちょうだい」


「……よろしいのですか?」


 ソルがおずおずと問いかけると、2人は大きく頷く。


「もちろん。何か欲しいものはあるか?」


「……そうですね、私は調理器具と2ヶ月分の旅費が欲しいです。どちらも私が旅立つ日までに準備をしていただけると嬉しいですわ」


 その答えにルヴィークもラフレーズも少し驚くが喜んで答える。


「あぁ、分かったよ。最高のものを用意しよう」


「あ、あの、市井で使うのでそこまでいいものになると盗まれる可能性がある気が……」


 ルヴィークは予想外だという顔をして少し考え込む。


「む、そうか……なら店の者を呼んで好きなものを好きなだけ選ぶといいさ」

 そういうとラフレーズが口を開く。


「ソルちゃん、あとは何かあるかしら?」


「……料理人に料理を教えて貰いたいのでキッチンへの立ち入り許可が欲しいですわ」


 ソルがそう答えるとラフレーズはくすりと笑う。


「それなら心配ないわ。離れになってしまうけどそちらのキッチンなら立ち入り許可をだせるわ。あの料理長が許可してくれるかも分からないもの。だったら、使われてない方のキッチンで思う存分好きな料理を作りなさい。料理人は……そうね、新人の中に実家で料理屋を営んでいた子がいたはずだし、その子を配置させましょう」


 あっさりと降りた許可にソルが嬉しそうに笑うと2人は幸せそうに微笑む。


「ソル……私たちがしてやれることは少ないが、できる限りの支援を尽くそう。新しい門出がより良いものになるように……な」


「ソル。もし美味しく料理が出来たなら私たちにも食べさせてちょうだいね。大切な娘の手料理なんですもの」


 ソルはその言葉を受け取ると礼をして執務室を去る。

 外で待機していたメイドと共に部屋へと戻ると2人に休むように言い渡し、ベッドに寝転がって目を瞑る。


(……ソル、あんなに愛されてたのに気付かなかったのかな。素敵な夫婦だし、(義弟)は……まぁ、話してないけど雰囲気的にいい人そうだったし。あんな事さえしなければ婚約破棄されたとしてもそれなりに幸せに過ごせてたはずだったのにな……)


 そんな事を思いながら、少し眠りにつこうとすると扉をノックする音が部屋に響いた。

母の名前の由来はフランス語の苺です。(そのままですが)

次回はいつ頃になるんだろう……

とりあえずトルくんと料理人を出せたらいいな。って思ってます

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