公爵家の食事
全然更新してませんでした。すみませんm(_ _)m
今回は朝ご飯回です
私がメイドにそう呼びかけると2人のメイドが入ってきた。この身体の記憶からするに彼女達はソルの専属メイドのようだった
黙々と着替えを手伝い、髪を整える。慣れてはいないがこれが普通であるというのなら変に動揺して不審がられるのも面倒だ。
(出来れば平民の生活について話を聞きたかったけどいきなりフレンドリーになるのも困るだろうし変に警戒されても困るわ。ここはあくまでも婚約破棄された悪役令嬢、ソル・リーシャを演ずるしかない)
そう自身に言い聞かせると、そのまま朝食を摂りに行く。その途中で数名のメイドや執事達が影でコソコソと話をしているようだった。
(婚約破棄された憐れな令嬢…ではなくて、きっと天狗になっていた嫌な主人が減ると喜んでいるのかな)
ソルは憐れみと蔑みを混ぜた視線をメイドや執事達に向けると彼らは慌てて目線を外し、その場を去っていった。
そして、その様子を見終えると特に気にする素振りも見せずに朝食を食べに行く。
部屋の扉が開くとリフェクトリーテーブルには数種類のカトラリーと食器が並べられ、パンとスープ、サラダ、白身魚が美しく盛り付けられていた。
(朝ご飯だ〜!いい香り。昨日からこの体何も食べてないし、きっと料理長かお父様が用意するように言ってくれたんだろうな)
「ソル、昨日のことなのだが……」
すっかり料理に集中していて忘れていたがここにはソルの両親と弟がいる。扉の前から一切動く素振りを見せない娘に違和感を持ったのか、はたまた少し心配になったのか父親であるルヴィークがおずおずと問いかけてくるが、その口をすぐに噤むと『座りなさい。まずは食事を摂ろう』と促し、ソルは自身の席へと座り、目の前に並んでいる料理に唾液を飲み込む。すると、ルヴィークは口を開き。
「……食事の後にソルは私の執務室へ来るように」
そう一言だけ言うと返事を待つことなく食事が始まった。この世界では教会ならば食前の祈りを行っているが、基本的には何も言わずに食べ始める。頭では理解していたが、中身は元日本人であり、いきなり始まった食事に若干驚く。しかし、そこで呆然としていたらこの温かくて美味しそうな料理はすっかり冷めてしまうであろう。
つい『いただきます』と言いそうになる口をぐっと結び、言葉を飲み込むと、目の前にあるパンへと手を伸ばす。
ほんのりと温かい。例えるならアレだ。乾燥機で乾かして2〜3分ほど置いたけどまだ温かい洗濯物のような温かさだ。いや、そんなことはどうでもいい。まずはこのパンを一口大にちぎると口に運ぶ。
ふわりと口いっぱいに小麦の香りがひろがる。少し固めだが、よく噛むとかおりの後に甘みをほんのりとする。
続いてスプーンを手に取り、スープを掬う。スープに入っていた葉物野菜と根菜が少しだけ浮いているそれをパンで少し乾いてしまった口へと含むと今度はブイヨンなのか旨みがとても強く、キャベツ(仮)や人参(仮)の美味しさを際立たせている。
もう数杯分だけスープを食べると、主食である白身魚をフォークとナイフを使い、切り分けてから口にする。
白身魚ならではの身のしまりが感じられ、旨みは少し酸味のあるソースによって更に引き立てられている。
最後にサラダを口に入れると葉野菜の僅かな苦味を感じるが、かけられているドレッシングが甘酸っぱさを持っているため、あまり気にならない。これだけでも充分なほど美味しいのだが、ほんの少しかけられているチーズが濃厚な旨味を持っているため更に美味しく仕上げられていた。
料理のレベルがとても高く、現代日本で店を開いても星がつくレベルの美味しさだった為、ソルはゆっくりと味わいながら食べていた。
しかし、いつの間にか皿は空になっていた。『もう少し食べたいな……』と思ったが、身体は『もうお腹がいっぱいだ』と言っている。
(……とんでもなく美味しかった。私だったら料理最低限くらいにしかできないし、失敗した時になんて某ゲームや某キャラのように炭とか物体xを作り上げちゃって食べる度に胃薬飲んでたな)
(物理的に)苦い思い出を懐かしみながら部屋へと戻っている途中、ふと食事前に言われたことが頭をよぎる。『……食事の後にソルは私の執務室へ来るように』すっかり忘れていたが、何とか思い出し方向転換をして執務室へと向かった。
道中、静かに部屋を立ち去ったルヴィークをぼんやりと思い出しながら廊下を歩く。
絨毯や舞い上がっている繊維が東から僅かに入る光に照らされてキラキラと輝いている。静かな廊下にはソルとメイド達の靴音がほんの少しだけ鳴っている。
そして、執務室前へと着くと緊張から若干足がすくむ。
(流石に怒っているでしょね。今回のソルの行動はやり過ぎた。かと言ってすぐに言っても聞きはしないだろうから数日たった今日なんだろう)
『う〜ん……』と少しだけ唸りながらもすぐに表情を取り繕うと3回ノックをして返事を聞くとゆっくりと胸を張りながら入る。
執務室の目の前にある机と椅子にはクッキーやスコーンなどの軽く食べることができる菓子が置いてあり、座らされた椅子の向かい側にルヴィークが座ると、執事やメイド達を下がらせ、2人だけになった。
あまりの気まずさに息がつまりかけているとルヴィークが口を開き。
「……うわぁぁぁん!ソルちゃん、こんなパパでごめんねー!」
と、泣き始めた。静かに涙を流すように見えたルヴィークだったが、泣き方は子供のようにドバドバと目から涙を流していた。
一方で、その光景を目の前で見せられているソルは、
(え?は?一体何がどうしてこうなっているの?普通は娘を叱るものでしょ!?)
牛歩レベルですが、これからも書いていきます。
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それでは、また今度!