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『世界』が遺した誕生システム

『世界』の口調がかなり気持ち悪いです。

考え方も胸糞悪いと思います。

 走馬燈、という言葉が頭に浮かんだ。

 上下左右の感覚も無く、氷砂糖のような色の空間で漂いながら、私は高速で流れて行く無数の画像を眺めていた。


 まだ動く生き物が創られる前の、絵画のようなワンブックの風景。


 そこに現れる最初の建造物群。

 光の蛇の生贄が産み落とす『世界』は、生まれつき持つ知識も母親に強く影響を受けるのだろう。

 現在は打ち壊されて見ることの出来ない闇の女神の神殿や社、最初は三つの大国だった人族の国の王城、増改築前の水晶国の宮殿など、参考にされているだろう原型は、どれも日本で義務教育を受けたりテレビを見る機会があった者ならよく知る物だ。

 そう言えば果樹花王国の王宮も、外観は白いアンコールワットぽかったな。


 外箱が整ったら生き物の創造と配置。


 魂は込めず、陸や水中の生物に飛べる生物、それにファンタジー世界にお決まりな魔物。


 最後に、魂を入れた五つの人種。


 エルフをモデルにした見目麗しい金髪碧眼の妖精人族。


 人型モンスターをモデルにしたカラフルな髪と瞳の魔人族。


 モフモフ成分補強の為の獣人族。


 この三つの種族には神になるチャンスを与えた。


 神のサポート的位置で天使をモデルに創った翼人族。

 記録係として記憶を受け継ぐ特殊能力を与えたけど、殖やす為に女も創ってしまったから天に上げるのをやめた。


 人族はモブ要員。にぎやかし。

 退屈しのぎに事件を起こさせても取り返しのつく短い寿命で。


 次々と流れる画像に、途中から『世界』の思考が乗り始めた。

 薄っすら認識できる程度の『世界』の思考は、徐々に纏わりつくような粘度の高い女の声で垂れ流されるようになる。

 夜空の記憶の中で聞いた、頭の中に直接響く指示と声は同じ。


『世界の管理なんかやってるヒマないってーのっ。ワタシは好きなように創って鑑賞したいのよ。ま、見るだけじゃないけどねー』


『なんかー、優秀? な担当者創ろっかな。面倒なこと全部やるやつ。真面目に世界の管理してー、邪魔なの排除してー、あー、囲ったイケメンの管理もやらそー』


『やぁんっ! 美少年ゲット~っ! ワタシ好みのショタに調教したげるよ〜ん』


『あー、なんなのマジ最低っ! 生まれた時から目ぇ付けてたモフモフ筋肉イケメンに纏わりつく女が来た! ワタシを裏切る男なんか捨てちゃうよー。ワタシの寵愛を受けるチャンスを逃がすようなバカチンいらないしぃ』


『事件起こさせるのにキチ○イって便利〜』


『ハーレムのイケメン増えて来たけどイマイチ熱くないよねー。ワタシへの熱量が足りないっ! おかしいでしょ⁉ ずっとずっとずーっと頭の中にワタシの素晴らしさを語り続けてア・ゲ・ルっ!』


『能力自動割り振りすると目障りな女が増えるなー。ムカつくー。掃除して来い』


『最近ダルい。まさか寿命? 冗談じゃない。イケメンハーレムの全キャラにチヤホヤされても溺愛とかまだ全然されてないんだけど』


『一番美形な隠しキャラのライバル令嬢?になりそーな黒髪黒瞳は発生次第殺すように命令してるけどー。ソイツさえ消せば隠しキャラはゲットだけど絶対まだ死にたくないしー。逆ハーだけじゃ足りなくない? せっかくワタシが自由に創れるシナリオなんだしさぁ。あー、ワタシも生贄欲しいなー。命いっぱい吸い取ったら寿命延びるんじゃね?』


『目の届かないとこで保護されたりしないように、闇の女神信仰を無くしとこ。隠しキャラゲットは慎重に行かなきゃねー。ついでに戦争でも起こして大量に命吸い上げてー、そのエネルギーをワタシのモノに転化しよー。モブら半分くらいまで減らして良くない? どーせ放っといてもすぐ復活するし。なんかワタシ以外の女優遇しよーとしたみたいだし。もっと減らしてもいっか』


『ワタシが余計なお仕事に力を使わなくていいように、手に入れたエネルギーで最高の自動誕生システム創ろう! そして空いた時間でもっとイケメンゲットー!』


『アハハーっ! サイコーのが出来たー! コレで目障りな女は絶対不幸になるーっ! 下等生物の分際で誰かから褒められるとか生意気だっつーの! 身の程を知れ! 全ての男からの賞賛はワタシのためにあるんだよっ!』


『基本、女に生まれたら男の五割増しで不運と人生の枷が付くようにしてー。美しく生まれた女は更に酷い目に遭わせたいよねー。ランダムで顔や体に消えない傷か死ぬほど苦しい不治の病か成人前に強姦で不妊になるのもイイね! あ、絶対好きな人とは結ばれない運命をプレゼント!』


『目立つ女は一生誰にも愛されない運命でしょー。輪姦強姦バッドエンドとかさー。冤罪拷問エンドもいいなー。ま、運命が動く前にワタシの目に付いたらゴミは惨殺掃除だよねー』


『男はどーしよーかなー。ワタシに愛を捧げて下等生物の女に汚されないまま生涯を終えたらご褒美あげちゃうよ〜ん。年数に比例した次の人生でのチート能力とか! 生まれ変わってもワタシへの愛を貫くんだよっ! そして次はワタシのハーレムに相応しいイケメンに生まれろっ!』


『ダルいー。まだ溺愛ターン来ないのに死ねるかっての。また戦争起こせば寿命延ばせそうだよねー。黒髪黒瞳は全部殺したしー。もう生まれないからねー。ニヒヒっ。条件クリアしたんだし早く隠しキャラ溺愛しに来いよー』


『はぁー、どっかに美味しそうなイケメン生まれてないかなー。早く迎えに行きたい』


『どうやって戦争起こそうかなー。その前にー、管理担当にワタシの美しい世界の理念をもっと厳しく守らせるように命令しなきゃねー。ワタシが見てない時でもゴミは掃除させなきゃだし。キチ○イの使い方伝授しとくか。アイツラ便利だし。あと軽く洗脳チックな力でも与えとく?』


『あー、ダルいー、眠いー。え、眠いとかヤバくね? 早く戦争おこさなきゃ。もう理由とか何でもいいし』


『ワタシの創った世界からワタシがエネルギー吸い上げるのは当然の権利デショ』


『戦争・・・、戦争・・・、早く、戦争・・・』


『嫌だ、絶対ダメ・・・全部ワタシのだ・・・まだ足りない・・・ワタシの・・・』


『早く戦争を起こせっ‼』


『死ねっ‼ 死ねっ‼ 死ねーーーーーっっ‼‼』


『嫌だ、まだ・・・イケメン・・・ワタシの・・・全部、ワタシの』


『嫌だ・・・死にたくない・・・エネルギーを、よこせ』


『嫌だ・・・ワタシ以外みんな、不幸になれ』


『みんな不幸になれっ! ワタシ以外に自由があってたまるかっ!』


『死にたくない・・・もっと・・・もっと・・・ワタシは・・・』


『全ての男はワタシのモノなんだよっ!!』


『ワタシはもっと・・・もっと・・・誰より、どの女より』


『モテたい・・・っ‼』


 あとは意味を成さない怨嗟の呻きが空間に響き渡るだけ。

 耳を汚した気色悪い声と台詞はともかく、目にした画像で大体の謎は解けたから、もういいか。


「シェード、聞こえる?」


 向こうの声は聞こえないけど、結晶の外から叩いたのか、空間が振動した。


「これ、外からシェードの力で『破壊』しちゃって。『再生』しないように。私は動けないから中からはブチ破れないけど、大丈夫だから」


 外は見えないし聞こえないのに、シェードが躊躇っている気配は感じる。

 破壊の力でコレを壊したら、中の私も一緒に壊れないか心配してるんだろうな。


「大丈夫。シェードが私を傷つけることは無いから」


 何でか分からないけど、絶対に大丈夫な気がするんだよね。

 偶然の神の加護があるからだろうか。

 普通はコレと一緒に破壊されちゃう状況なら、逆に偶然助かる気がする。

 それに、シェードが揮う破壊の力が私を傷つける筈が無いじゃないか。


「シェード、私の信頼に応えて」


 次の瞬間、私自身は何の衝撃も与えられることなく、氷砂糖色の空間は砕け散り、私は情けない顔をしたシェードの腕の中にいた。


「無事なんだろうな?」

「うん。でも・・・」

「でも?」


 不安げに眉を寄せられて、私はぐったりとシェードの肩にもたれ掛かる。


「すっごい気持ち悪かった」

「・・・だな」


 シェードの目も遥か遠くを見やるような感じになった。神眼で見てたもんなぁ。

 二人揃って深い溜め息を吐いて、同じタイミングで顔を見合わせてフッと笑った。


「魔力回復するまで休め。俺ん家に運ぶぞ」


 そのまま腕に抱え上げられて、頷き力を抜く。

 やっぱり、ここは私が帰って来る場所だ。この腕の中に居ると、巣に入っているみたいに安心する。


「お前・・・これから俺ん家に連れ込まれるってのに無防備すぎんだろうが」


 シェードが疲れて休んでる私に無体を働くとは思えないから大丈夫。


「うわぁ。質悪ぃな、お前。当たってるけどよ」


 クスクスと笑いながら運ばれている内に、私は、すぅっと眠りに入っていた。

あと5〜6話で完結予定です。

ここからは、可能な日は平日も投稿します。

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