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神々の居場所 2

短いです。

「俺達は『世界』の誕生システムの調査及び破壊に向かう。阻止するか?」


 不敵な調子でシェードに問われ、魂を持つ神々は揃って首を横に振った。振り方は、緩くだったり、苦笑しながらだったり、肩を竦めながらだったり、それぞれ個性的だったけど。

 誰にも止められなかったから、促されるままシェードとその場を後にした。

 背後でボウっという音と熱を感じて振り返ると、力の神が濡れた赤い広場に掌を向け、湿度の高い赤が煌めく朱金の炎に撫でられるように包まれて、さらさらと元の白を取り戻して行くのが見えた。

 その炎は、浄化と弔いの目的に私には感じられた。


「華炎熊は炎を操る。あの炎を扱えるのは、血が絶える前からアイツだけだった」


 シェードの言葉は説明だけだけど、私が感じたことへの肯定だ。

 なんだか皆、複雑そうな顔をしていたけど、神々同士の仲はどうだったんだろう。


「見たまんまだ。複雑だっただろうよ。俺は神の力を従属で抑えられてから奴らとはあまり接触していなかったが、教会を持つ神々にとっては頻繁に顔を合わせる相手だったからな」


 頻繁に顔を合わせるけど、『世界』を嫌う「魂を持つ神々」と、『世界』の死後も設定を守り続ける「魂を持たない神々」の仲が良好だったとは想像し難い。


「まぁそれもあるが。お前に分かりやすい例えで言えば、魂を持つ神々は客寄せパンダで、魂を持たない神々は、パンダの調教師でありパンダが政治家なら官僚てとこか」


 客寄せパンダは腑に落ちるけど、調教師はともかく官僚ってどういうこと?


「神託の原稿書いたり、年表の計画練ったりな。あとは『世界』の遺言に沿った制服の着用指導や口調の指導か。俺ほんっと『世界』が死んでから生まれてよかったぜ」


 史実隠蔽や誰かに都合の良い歴史操作の年表や神託をプロデュース。官僚ぽいかもしれない。

 制服とか口調の指導とか変な単語が聞こえたけど。


「いや、マジで大変そうだったぞ。元魔人族なら王族だから施された教育的に一人称は『私』なんだが、俺様とか吾輩とか恥ずかしい一人称を強制されるわオネェ口調強要されるわ、ムチャクチャ漢な性格の元妖精人族の奴には小悪魔美少年キャラに口調矯正台本持って来るわ、力の神も仕事中はちょい悪オヤジ口調使わされてたぞ」


 ・・・気の毒に。


「お色気担当を押し付けられりゃスケスケで露出度の高いフリルブラウス着せられるし、俺様魔王キャラに認定されりゃ黒尽くめ軍服に毛皮のマントで暑苦しいとボヤいてたな。実年齢が一番歳上の元妖精人族は仕事中は半ズボン強制だから引きこもりになっちまった」


 ・・・物凄くバカバカしい内容だけど、それを強要してるのが絶対的権力を持つ創造主の意志なんだから、笑い事ではない。

 魂を持たない神々からの指導でも笑い事じゃないレベルなのに、『世界』が生きていて直接頭の中に指示を出してくる時代から神でいた、元ワンブック人達の憤懣や虚しさを思えば暗澹たる気持ちになる。


「終わらせようぜ。ぶっ壊して」


 溜め息を吐いた私の手を握って引きながら、シェードが唇を片方だけ引き上げる。


「うん」


 立ち止まると、目の前には巨大な塩の結晶のような物体が床から50センチほどの所に浮かんでいた。


「これが『世界』が遺した誕生システム?」

「ああ。負の遺産だな」


 吐き気を堪えるような渋面で結晶を見つめるシェード。

 これが『世界』の欲望の塊なら、シェードの神眼ではどれだけ気持ちの悪いモノが見えているのだろう。


「ぐぅ・・・」


 顔を大きく歪めて本当に気持ち悪そうにシェードが呻く。

 考えての行動ではなく、思わず結晶とシェードの間に『何か』を遮るように身体を入れた。


「闇月⁉」

「え?」


 この場には私達以外誰もいない筈なのに、ズズッとシェードから引き離される。


「闇月っ‼」


 硬い結晶に見えた誕生システムの中へ、泥沼に沈み込むようにズブズブと私は吸い込まれた。

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