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閑話 影犬の流儀

シェード視点です。

 ようやく闇月に思いを告げることが出来た。

 タイミングとしては最高だっただろう。

 俺が闇月を手に入れる時、一番面倒臭ぇ障害は光の蛇だからな。

 ヤツを徹底的に蹴落として俺の好意は受け入れやすいタイミングだった。

 本っ当に可愛いな! 俺の闇月!


 光の蛇を蹴落とす目的があるとは言え、俺は何一つ闇月に嘘は言っていない。

 見えた全部を伝えてねぇだけだ。

 あとは俺の腹の底の光の蛇への悪口雑言を見せてねぇだけか。悪口は言わず、事実を冷静に伝え、相手に共感する態度はウケがいいからな。


 生まれた時から虐げられて生き抜いた俺だから、同じように虐げられる人生しか知らなかった闇月に、決してやっちゃなんねぇ囲い方が分かる。


 与える優しさの中に、信頼を得た後に発覚する裏切りを仕込むことだ。


 過去の罪業の重さから正直に傍に置きたい理由を告げることも出来ず、真実を知られて嫌われることを恐れて嘘で塗り固めた言葉と態度で核心に迫らせず、認知を歪めることで囲い込みを謀った光の蛇が、闇月に許される望みは無ぇ。

 光の蛇は、やり方を間違った。

 今更どう取り繕おうが、俺以上に信頼を得ることは不可能だ。

 虐げられ続けた女が信頼も出来ねぇ野郎と愛を育むのは無理がある。

 一人で立つことも出来ねぇ弱い女なら依存関係にはなれるかもしれねぇが、闇月は信頼出来ねぇ野郎と愛し合うくらいなら一人で生きる女だ。

 闇月に裏切りを感じさせた時点で光の蛇の負けは決まっている。


 俺の神眼はフルパワーの神の力を取り戻した後も、ガンガン神力を上げている。

 毎秒闇月への想いが募るほどに、闇月に関する事柄を見ようと集中すれば見えるモノが増えて行く。

 今じゃあ神の力を取り戻した当初には見えなかった、俺より上位の存在が丸裸に出来るようになった。

 光の蛇は最近まで従属していた縁なのか、見てやろうと意識するだけで勝手に取り出したい情報が流れ込んで来る。


 今のヤツは後悔しまくりだ。


 手前勝手な思惑で人生を狂わせた異世界の魂の持ち主が、都合良く生贄の条件を満たす女だった。

 最初は丁度いいから出禁解除を願い出るついでに貰っちまおうぐらいの感覚だった。

 くれてやるからと、二度と地球に関わらないことを約束させられて出禁も解かれず、次の生贄が安定供給される見込みが出来るまでは貰った生贄を孕まない体にしてキープしようと考えた。

 実際、こんなクズでクソなことを考えてたんだから、俺が闇月に伝えた話に嘘は無い。

 共に過ごす内にどんどん好ましく思うようになり、愛おしく感じるようになり、嫌われるのが怖くて堪らなくなり、苦悩しながら偽りを重ねていった過程なんざ、追加で伝えてやる気は無ぇ。


 どうしたら許してくれる。

 二度と親しげな笑顔は向けてもらえないのか。

 もう手遅れなのか。

 僕だけに頼って欲しかったのに。

 敵を見るような冷たい眼差しだった。

 軽蔑されたんだろうか。

 もうキープだなんて思っていないのに。

 永遠に僕の恋人として傍に居て欲しいから、死なないように、孕まないように男性体になって欲しかった。


 流れ込んで来る光の蛇の後悔の嘆きに俺が思うことは一つ。


『自業自得だろうが。バーカ』


 闇月に関わることを探る内に、光の蛇が俺を従属させた時の心情まで見えちまって、ウッカリ闇月の前で「クソ蛇‼」と叫ぶところだったしな。

 あの自業自得野郎は、俺が自分を虐げた奴らへの復讐に破壊の神の力を行使したことを、「強大な力に巻き込まれた無辜の民」を引き合いに出し、俺が血反吐を吐いて悔恨するまで追い詰めたんだが。

 全部俺を無力化する為だけだったんじゃねぇか‼

 俺以外の元神獣も一族を殺された復讐に神の力を使ってたのかよ‼

 力の神に口止めしやがって‼

 あの熊親父がヤベぇ野郎なのは知ってたけどな!


『犬を飼い慣らすように躾をし、たまに褒めたり笑顔を与えて、鬱陶しくない程度に僕から離れられないようにしておこう。

 神獣の魂を二つも内包した神なんか放置して逆らわれたら面倒だからねぇ』


 見えたぞ。見えたからな。忘れねぇぞ。


 ついでに地上に澱んだ『世界』の残留思念も気色悪ぃモンを見せて来やがった。

 ワンブック人が神になる為の、ワンブック人には知らされなかった絶対条件。


 神獣の場合は、口伝では力量が神に相応しいレベルに達することと言われていた。

 考慮されるのは力量一点で、清廉潔白であることや高潔な人物である必要は全く無い。

 それが嘘ってワケじゃねぇが、神獣に課せられた隠されている絶対条件は、肉体の純潔だった。

 童貞神獣しか神にはなれねぇってこった。

 過去に力量が超一級な神獣が、神になれねぇどころか嫁を人質に取られて人族に従属したことがあったが、それも『世界』が裏で糸を引いていた。


『ハイスペックで見た目もワイルド系イケメンで気に入ってたのに女に現を抜かすなんて許せないからお仕置き』


 気色悪ぃ思念と人族の悪徳商人の脳へ送り込んだ神獣を従属させる方法。

 過去に神獣を従属させたのは、ほとんどが人族だ。

 ごく最近闇月にクロが従属するまでは、望んで従属した神獣はいねぇ。

 恐らく、全員『世界』の怒りに触れて人族に従属させられた。

 くっだらねぇ理由でな。

 俺、『世界』が死んでから生まれて良かったな。どうやら、ほんの二百年ばかりの差らしい。

 俺より歳上の神々が『世界』の話をする度に全身鳥肌立ててる理由が分かったぜ。


 気色悪ぃ絶対条件は、勿論神獣だけに課せられているモンじゃねぇ。

 魔人族の場合は王族であることが前提だから、婚約や婚姻で弾くことは出来ねぇ。

 だが肉体の純潔よりもサムい条件だった。


 妻を捨てること。


 かつて、魔人族の王族が名を捧げる儀式は求婚または婚姻と同等だった。

 名を捧げた相手以外とは生殖行為が出来なくなる縛りがあるからな。

 子を残すことが義務でもある王族にとっては、これ以上の愛情表現は無ぇ。

 今の魔人族の王族の中じゃ、この縛りを躊躇せず名を捧げているのは銀麗だけだ。何人か子を成した後で力を得る為に名を捧げる相手を探してる王族は居るがな。

 まぁ、そんな究極の愛情表現が出来るぐれぇ愛した妻を捨てる。

 それが魔人族の力ある王族が神になる絶対条件だ。

 銀麗がセシルを捨てること無く条件を満たしているのは、最初から『最も愛する相手』を妻にしていないからだ。

 名を捧げた相手と結ばれることを、心の底から完全に諦めることが必要らしいからな。

 恐らく銀麗が神になる資格をキッチリ得たのは闇月に名を捧げて力を得た時じゃねぇ。セシルの勧めで闇月の『親友枠』に収まる決意をして『本命』や『恋人』の位置付は諦めた時だろう。


 地上の妖精人族は滅亡したが、元妖精人族の神も存在する。

 神になる可能性があるワンブック人は、神獣、魔人族の王族、妖精人族の清らかな少年だけだ。

 因みに神獣は男しか生まれねぇし、神になる魔人族の王族も男だけだ。

 妖精人族は貴族以上の家柄ならば一家から一人、生まれてすぐの男児を『禊の宮』と呼ばれる全ての女性から隔離される施設に入れなければならない。

 禁を犯し女性との接触がバレると「脱落者」として俗世に還るが、成人するまで清らかに勤めを全うすると成人した日に天から迎えが来る。

 っつう気の狂った規則が『世界』の意思で守らされていた。

 出生率が低いってぇのに生まれたばかりの息子を奪われる家族も、一つの建物に軟禁されて窮屈な生活を強いられる本人らも、喜んで規則を守ってる奴なんざ居やしねぇ規則だった。

 形骸化した規則に意図的に「脱落者」になる少年達で、元妖精人族の神は一柱しか存在しない。

 種族が滅亡しているから今後増えることも無ぇ。


 俺が神眼を使う時、従属していた光の蛇を見るよりも、直接関わり合ったことが無ぇ『世界』を見る方が高い神力が必要になる。

 物理的距離が近くなれば見やすくなるんだが。

 神々の作業場の奥に鎮座している『世界』が遺した誕生システムを直接神眼で覗き込みゃあ、また気色悪ぃモンが見えるかもしれねぇな。

 創世神話の狂信者もとい魂を持たない神々の遣り口も、闇月が気にしていたから直接見て調べよう。奴らも光の蛇より見え難い。

 どっちにしろ神々の居場所に行かねぇとな。


 そうして気掛かりな憂いを全て払った時、闇月は俺を男として受け入れるだろう。

 光の蛇の希望は根絶やしにしてやる。


 なぁ、麗しき光の蛇よ。蛇って生き物は確かに最高に執念深いよな?

 だが、己が望んで得た主と番への執着は犬が一番『酷い』んだぜ?


 強い、激しい、なんて言葉じゃ生温い『酷い』執着。


 闇月は誰にも渡さねぇ。

 アレは俺の、俺だけの獲物だ。


 愛している。闇月。

 一緒に、蛇にトドメを刺そうな?

シェードが闇月には見せない影犬本来の特性は真っ黒です。

腹黒さを自覚してあざとい振る舞いをするクロは可愛いものです。

腹黒枠に入れられている夜空は、こういう影犬の特性を知っているので、闇月がシェードを腹黒枠に入れないのが不満です。


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