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水晶国へ(陸路)

途中、グロ表現あります。

 水晶国に向けての出立は、夜明け前に間に合った。

 道中は創世神話の狂信者からの襲撃も有り得るから、メンバーは本当の危険度を分かっている最少人数とした。

 つまり、夜空の結界内で密談していた六人プラス夜空の結界付の檻に入ったピンク縦ロールだけだ。


 催淫リングを回収して正気に戻っているピンク縦ロールに、一応悪霊使いが創世神話の狂信者に殺されたことを伝えると、一瞬目を見開いた後で黙り込んでいた。

 ピンク縦ロール入の檻だけを積んだ馬車は四頭立てで、御者台にはシェードと私。襲撃があった時にバラバラに騎乗していると守りにくいという理由だ。それに、よく考えたらシェードも元神獣だから鼻がいいんだよね。私に貼り付くのはシェードでいいじゃないか。

 銀麗とセシルが同じ馬に乗り、クロは自分の足で走り、夜空は自分の翼で飛ぶことにした。クロと夜空は早馬より自力の方が速い。


 必要な物資は私のウエストポーチから出せるから、各々の身につける武器や暗器以外は手ブラ。身軽に最速での到達を目指す。

 港までの移動では、一度野営をしたくらいでほぼノンストップ。港を有する国までは、何度か銀麗の配下が待機するポイントで馬を替え、どこの国にも入らず道を飛ばした。

 強行軍になっているのに、セシルは一言の文句も愚痴も言わず、「アタシかなり体力あるから大丈夫」と笑っていてくれた。

 野営中は、夜空の結界内で問題無く休息できた。


「新しく機能を増やした改良型の結界です。構成パターンを時間経過でランダムに変えるようにしていますから、無効化は簡単にはできませんよ」


 と、穏やかに微笑みながら真っ黒いオーラを発する夜空に結界内でカラクリを聞くと、外部からかかる力を物理魔力とも反射する機能の防御結界を一番外側に、その内側に、覗けば後悔するような音声付き映像が体験できる幻影結界と、力を透過させるとその力を行使した者の魔力を吸収する罠結界を、何層か重ねて張ったらしい。

 結界ってそんなこともできるのか、と感心したら、銀麗すら「有り得ない」と口元を引つらせていたから、夜空も天才なんだろうな。

 結界を神眼で確認したシェードも、げんなりした顔をして「この中なら安全だ」と太鼓判を押していたから、創世神話の狂信者相手でも有効な結界だ。

 幻影の参考は、前に私が話した地球の物語らしいけど、どれを使ったんだろう。古典文学の他に、私が生きた時代のサブカル作品も紹介したんだけど。

 ホラーやスプラッタでは創世神話の狂信者に影響を与えることは無いだろうから、激甘な恋愛系だろうか。ワンブック人の価値観で受け入れられないタイプのチョイスで。


 水晶国と行き来する船が停泊できる港を持つ国には、それぞれ身分証を提示して混乱無く入国した。混乱を避けるため、入国前に夜空は翼を体内に収納している。


 私は知らなかったけど、人族の国に入らない他の種族は身分証を持っていないそうだ。

 よく考えなくても、身分証の発行は人族の国の教会だから、人族の国でしか発行できないもんね。私が教会を通さず発行された身分証を持ってるのがおかしいだけで。


 人族の国で仕事をしたり移住したりで、入国出国を繰り返すなら必要だから、他種族は初めて人族の国に入国した時に、先ずは教会に行くらしい。どの神を選ぶかは自由。神によって身分証の信用度が変わることは無い。

 元々人族のセシルは生まれた時から身分証を持っていたし、銀麗は仕事上、クロと夜空は種族の代表という立場上持っていた。

 ピンク縦ロールも人族の国で放蕩するために取得していたが、銀麗の「本国へ護送する犯罪者だ」との説明付きで檻の中から提示させられて不満そうだった。


 私とシェードは力の神発行の同性夫婦のものを、悪霊使いの任務が終わっても流用している。

 今の身分証を破棄して新たに発行すると、私は夜空の婚約者という備考が付いてしまい、シェードが同室で護衛すると問題視されてしまうらしい。

 襲撃者が創世神話の狂信者なら、結界に守られていてもシェードの護衛は不可欠だ。という説得をシェードにされて、手間と時間も惜しいから、身分証はそのまま「アンリ・ミラージュ」で通している。


 身分証の話が出たついでに、銀麗が名を捧げたのがアンソニーだと推測されてるなら、身分証も既に破棄したし、アンソニーだったと公言してしまえば私が探されることは無いんじゃないかと訊いてみたけど、そうはならないらしい。


 ズルして身分証を手に入れていた私は、身分証の作り方と詳細な機能や意味をよく分かっていなかった。

 身分証を作るには、教会に本人が行って魔力が入った血液を提出しなくてはならない。人族が子供が誕生した時に教会に行くのは、洗礼じゃなくて身分証発行のため。地球常識で勝手に洗礼だと思っていたよ。


 魔力の交流で成人後に質が変わっても、ベースは変わらないから、血はワンブックでは究極の本人確認要素らしい。指紋とか網膜の概念も無いしね。

 身分証を紛失したら、再度教会に血液を提出して再発行になるけど、不正に複数の身分証を所持することは不可能らしい。

 複数の身分証を身につけると、一つを残してホログラムが出て来なくなるし、身につけていない身分証は「身分証の人物の生体反応が無くなった」と判断して三日で無効化する。

 ホログラム無効化による身分証の不正防止は、教会を持つ神の重要な仕事の一つだとシェードは言っていた。


 それでも、裏社会に身を置けば、不正入手した身分証の有用性は分かり切ったことで、需要があるから供給もある。

 ワンブックで、有効な身分証を不正に入手する抜け道は、日本で裏稼業に身を置いていた私が聞いても血腥い手段しか無いんだけど。


 抜け道ステップ1、身分証を取り上げるターゲットを決めます。

 抜け道ステップ2、拉致したターゲットの新鮮な血液をたっぷり抜き取って鮮度を維持するように保存します。この時点でターゲットは死にます。

 抜け道ステップ3、ターゲットの血液を携帯できる容器に移して身分証と接触させながら所持します。抜き取ったターゲットの血液が無くなる、または腐敗するまで、その身分証を使用することができます。鮮度が落ちる前に携帯する血液は適宜交換しましょう。


 文字通り血腥い。


 ターゲットを見繕うやり方の他に、色んな髪色や目の色のワンブック人を身分証の不正入手のために飼う方法もあるそうだ。

 飼うと言っても、拉致して来て身分証が必要な時期が来れば血を抜いて殺すんだけど。


 方法が方法だけに、普通と言うのも変だけど、普通の犯罪者やありきたりな裏稼業のワンブック人が身分証の不正入手を行うことは滅多に無い。

 国家的犯罪に臨む輩か何かの狂信者が、大義のためとか正義のためと宣って手を出す所業らしい。自分は正しいと思ってる奴らの方が、悪人を自覚している犯罪者より残虐行為を気軽にやる典型だ。

 当然、露見すれば種族に拘らず極刑になる犯罪なんだけど、身分証の不正入手は裏で権力者と繋がっていることが多いから、実行犯をトカゲの尻尾切りするだけで大元は断てず、この犯罪が根絶されることは未だ叶っていないそうだ。


 というワンブックの黒い事情もあり、銀麗が名を捧げるほどの相手、しかも名を捧げたら魔人族最強になるほどの相手なら、身分証の不正入手くらい出来るんじゃないか、やってるんじゃないかと思われていて、アンソニーの身分証が現在破棄されていても関係なく、私の捜索は続けられているらしい。

 むしろ、アンソニーの身分証が破棄されたから、「やはりな」という思いが強まったんだって。

 普通の人族の少年だった筈がない、出生すら知られていない凄腕の裏稼業者じゃないか、そもそも人族ですらないんじゃないか、身分証くらい次々に新たに入手できる裏社会の権力を持っているないんじゃないか、などの憶測が飛び交っているのが現状だとか。


 憶測が全然違うと言えない辺りが何だかなぁ。

 つまり、水晶国に行けば私は確実に怪しまれるし狙われるだろう、と。

 私の実力なら纏めて返り討ちにできると銀麗は言うけど、それは安心要素なのかな。


 港に着くと、立派な船が出港準備を済ませて待機していた。乗組員は全員が銀麗の配下で、船は水晶国の持ち物ではなく、銀麗が個人で持っているものだった。

 そう言えば銀麗って水晶国の国王に次いで資産家なんだよね。てことは、ワンブックで二番目のお金持ち。

 地球の文化に妙に詳しいシェードによれば、このクラスの船を所持していつでも自由に動かせるということは、地球でプライベートジェットを会社名義じゃなく個人で所持していて、それを気分次第でいつでもどこの空港でも自由に発着できるのと同じだそうな。

 資産だけじゃなく、権力と人材と信用とコネも大いに持っていないと無理ということ。

 改めて、銀麗ってセレブだったんだね。私にとっては友人で先生で同志で研究オタクの天才なんだけど、ワンブック人の普通の感覚なら、銀麗は雲の上の人らしい。

 本人は、


「本国へ戻れば角無し故に侮られる場面も多いぞ。暇ではないから相手にはしないが」


 と、雲の上の人扱いされてることや、ワンブックで二番目の資産家セレブという事実に頓着せずに飄々としている。


 付き合っていれば感じるけど、王族生まれなのに徹底実力主義なんだよね、銀麗。

 自分の身分や資産は利用するけど、それに依存はしない。最後に頼れるのは己の実力のみと考えている。

 実力のある者にまで遠巻きにされると人材スカウトや交流に不便だからと、仕事と関係なく、時々学園で会ったときみたいなモッサリした格好をして、ヘラヘラした一般魔人族に擬態しながら市井に紛れ込んでいる。

 角無しだからこそ可能な擬態だし、この擬態は大変に有効で便利だから、角が欲しいと思ったことは無いそうだ。角が無くても子供の頃から同年代の誰より強かったらしいし。


「角があれば実力が高いと盲信しているようだが、お前のその角からは特殊能力か攻撃魔法でも発射するのか? それとも身体能力を高める媒介にでもなっているのか? 是非究明したい。私が勝ったら研究用にその角の組織を貰おう」


 とファイティングポーズを取った時から、正面から銀麗に戦いを挑む角持ち魔人族はいなくなったと言う。

 本人は本気で研究素材として興味を持っただけだが、言われた方は恐ろしい脅しだと感じただろう武勇伝だ。


 ともあれ、あとは船に乗っていれば水晶国に着く。

 別行動を避ければ、水晶国での滞在は王宮にせざるを得ない。

 目的のための準備をしつつ、お飾り正妃と侮られるセシルを到着までに磨きまくってやる。

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