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生臭坊主の無力化 5

 教会跡地では、旧礼拝堂と別棟で建てられていた建物は全て焼失していた。泥酔した当時の神父の火の不始末が原因らしい。

 神様が神託を下してくれる礼拝所と同じ建物で信者が飲酒をすることは戒律により禁じられているそうで、酒好きの神父が礼拝堂を別棟にしていた為に、旧礼拝堂は焼失を免れた。

 それを踏まえ、同じ愚を犯さぬように、力の神の新しい教会は全施設を一つの建物内に収めている。

 そして、吹き抜けの礼拝所以外の部屋には天井裏があり、忍び込んで気配を消せば、上から室内の様子を盗み見ることができる造り。

 力の神の教会の黒歴史も、勉強室の壁に大きく貼り出されていた。


 私とシェードが今天井裏から盗み見ているのは、説教部屋。戒告室みたいな場所。

 さっき警備隊の詰め所付近に転がして来たはずの男達が、神父を見上げながら大人しく座っている。

 なるほどなぁ。神父とならず者の接点はここか。

 警備隊の方に、犯罪者を説教するから捕らえたら教会に連れて来るように申し入れておけば、悪事を躊躇わない手駒が労せず手に入る。


「仮面の男を探し出して私の下へ連れて来なさい。神への供物を略奪するなど許される罪ではありません。今度こそ正義の力を振るいなさい。力こそ正義。あなた方は正義の使徒なのです」


 根が善良な者達には、獣人の子供が悪霊憑きだから保護して助けるべきだと洗脳し、後ろ指をさされる生き方をする者達には、お前達は神への供物を捧げる正義の使徒だと承認欲求を擽る洗脳をする。

 聖職者として人々に接してきた経験が功を奏しているんだろう。練られていないストーリーだけど、タイプ別攻略法として理に適っている。

 やらせることは、どっちも同じ。指定した獣人の子供をバレないように拉致して来い、なんだけどね。


 今度は仮面の男を捕まえて来れば正義の使徒として生臭坊主に認められるみたいだけど、その坊主、力の神のシンボルに触れることを神から拒否されてるんだよね。

 そんなのに力こそ正義だとか唆されて承認されてもねぇ。

 それに、生臭坊主の使徒達は教会の外に出て行ったけど、仮面の男は教会の天井裏にいるし。認めてもらえる日は来るのかな?


「くそっ・・・くそっ・・・有り得ないッ、一体何処の組織だッ・・・私の邪魔を・・・」


 爪を噛みながら生臭坊主がブツブツと呟いている。


「地下室まで暴くとはッ・・・騎士団も警備隊も手中に収めたと言うのにッ・・・どうしてッ・・・」


 あれ、この国かなりマズイことになってそうだな。こいつを隔離して洗脳が解けない内は、こいつを人族に捕らえさせて裁かせるのは無理だったりするのかな?

 既に囚われてる子供達を救出したら、洗脳の力を使うために必要な目と声を奪って、悪行で私腹を肥やした証拠付きで警備隊辺りに突き出せば任務完了だと思ってたのに。


「目と声をどうやって奪うつもりだったんだ?」


 ひそひそと耳元でシェードが訊いてくる。


 眼球と舌を取り上げて声帯を潰そうと思ってたよ。

 そんな信じられないものを見るような目をすることかな。

 他種族の子供の眼球を抉り出して儲けようとしてたんだから、自分もやられても仕方ないよ。

 今まで王さえ洗脳して従えていた万能感の源を、失っても生きながらえなければならないって、怖くて自殺もできないタイプの奴には結構効くと思うんだ。

 ずーっと怯え続けて、どうして自分がこんな目に遭うんだって血を吐くほど悔しがって自己憐憫に塗れて、過去の栄光の日々wを思い出す度に益々暗ーい気持ちになっちゃうの。


「お前・・・」


 微かな声を零して絶句するシェード。

 生臭坊主が移動するから、私も天井裏を移動。

 ここは、ベッドがあるから神父の生活する部屋かな。ベッドや机は質素だけど、一見質素に見える本棚と箪笥は、随分と厳重な鍵の掛かる抽斗が幾つもあるねぇ。


「あの在庫表と注文表だけなら、まだ言い逃れはできる。仮面の男の背後を聞き出して始末すれば、ほとぼりが冷めればやり直せる」


 あの注文表、依頼人や請負人の名前は無かったもんね。それで安心してるんだ?

 ここには生臭坊主の筆跡サンプルがたくさん有りそうなんだけどなぁ。

 旧礼拝堂の地下から持ってきた書類は、利き手と逆の手で書かれたものだと思う。

 「注文商品」の覚え書きを羅列しただけみたいな体裁で、獣人族が激怒するだけの酷い悪意の存在は認められても、実際に獣人の眼球を売買する取引があった証拠にはならない。


 だ・け・ど。

 証拠は無ければ作ればいいんだよ。


 文書偽造は私の十八番だ。

 ピッキングも何やかんやで手慣れている。

 騎士団も警備隊も手中に収めてるって言うんだったら、もっと強烈なところにお仕置きしてもらえるように、私も張り切ってお仕事しようかな。

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