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バイト

 ルーシアが件の野菜店に行くと、お昼時前の市場は賑わっていたが、やはりモロコスだけはほとんど誰も手に取ろうとしていなかった。


「やっほーおっちゃん」


「なんだ、また来たのか。今日も買っていくか?」


「うん、買うつもりだよ。でも、もう一つ話があってきたんだ」


「話だ?」


 ルーシアの言葉に店主が首を傾げる。


「うん。昨日クエストに行って、明日からも忙しくなるから今日は休みにしたんだけどあまりにも暇でさ。だから、ここでバイトさせてもらえないかなーって思って」


「ばいと? なんだそれは」


 今は客がいないので、店主がルーシアの話に耳を向ける。意外と興味がありそうだ。


「バイトっていうのはね、賃金を受け取ってお店の手伝いをすることだよ。つまり、ボクがおっちゃんから金を受け取るのを条件に、この店の売り子をするってこと。どう?」


「ふむ……確かに、俺よりは嬢ちゃんが売った方が売れるだろうし、モロコスの味を知ってる上に口の上手いのも嬢ちゃんだろう……でも、金を払うほどの余裕はないんだが……」


「それじゃあ、モロコスを全部売ったら、利益の二割をボクに配分ってことでどうかな? もし売れなかったら、ボクはただのボランティアをしたってことで」


「まあ、それならいいか……接客はできるのか?」


「経験はないけど、まあなんとかなるでしょ。じゃあ、契約成立ってことでいい?」


「ああ。俺はどうすればいい?」


「奥にまだある野菜があるんでしょ? もしここにあるのがなくなりそうになったら、それを並べてくれたらいいかな。おっちゃんは裏で待機しててくれたらいいよ」


「おいおい、俺の店だぞ」


「たまには休みがないと。今日は任せて、ボクも暇してて退屈だったから。あ、昼食はとるから、その時は代わってね?」


「はいよ……そんじゃ、任せたぞ」


 そう言って、店主が店の奥へと入った。ルーシアは売り場に入り、少し身長が低すぎるために台を用意してそこに乗った。そして、声を張り上げる。


「野菜だよー! 街の南で今朝とれた、新鮮な野菜だよー! お昼のおかずに野菜はいかが? さあさ今がお買い時、時間が経っちゃ勿体ない、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、健康保つも美貌を保つも野菜が一番!」


 ルーシアのよく響く声が聞こえたか、主婦っぽい女性が何人も寄ったきた。更に、ルーシアの姿を見て面白そうだと思ったのか、冒険者の姿もいくつか見受けられた。


「さてさてこちらをご覧あれ。ここにありますは北の大地でしか栽培不可能と言われていたモロコスでございます。この度、この店の店主の息子が栽培に成功いたしました! 食べ方は自由自在、茹でるもよし! 焼くもよし! 乾燥させて塩を振り、油で炒めてお菓子にするもよしのオールラウンダーです! さあこの街で食べれるのはこの店だけ! 怖いのは最初だけです! 食べればきっとクセになる!」


 最初はトトや地球でのキュウリことキュカマなどと言った、この町でもとれる野菜ばかりが売れていたが、今のルーシアの声で最初こそは動揺が広がっていたが、次の瞬間には試しに、と言う人がどんどん出てきて次々とモロコスが売れていった。


「おっちゃん、トトとモロコス、追加!」


「あいよ! いやあ、嬢ちゃんすげえな。こんなに盛況になったのは店始めて以来初めてのことだ」


「やっぱり、売るときに必要なのは野菜の宣伝と笑顔だよ。ほーら、昼のうちにジャンジャン売っちゃうよー!」


 そして、時刻は一時──夕方の在庫を残して、昼に売る分は全て売り切ったのだった。昼休憩に入ったルーシアは、店の奥で店主と昼食を取ることにした。ついでに、情報も集めることにする。


「おっちゃん、料理できたんだね」


「そりゃ、人並みにはできる。家に帰りゃ嫁が作ってくれるが、店にいる間は自分で作るしかないからな」


「ふーん。嫁さんは店の手伝いはしないの?」


「ああ。うちの嫁は人前に出るのが苦手だからな。可愛いのに勿体ないぜ」


「あはは……えと、ひとつ聞きたいんだけどいいかな?」


「ん? なんだ? 今日はお前さんのおかげでかなり助かってるからな、余程のことじゃない限りなんでも教えてやるよ」


 ルーシアは手に持っていた食器を隣の机に置いて、話を切り出した。


「ボク、最近起きている行方不明事件のクエストを受けたんだけど、そのことについて何か知ってることってない?」


「ああ、そのことか……すまんが、俺が知っていることはないな」


「そっか……ありがと」


「いやいや待て、まだ俺の話は終わってないぞ」


「え?」


 店主の視線が店の表に向き、更にその奥へと向かう。そこには、この店に向かい合うように建ち経営されている肉屋があった。今はどの店も客はおらず、その店も例にならい店主は奥に入っているらしい。


「向かいの肉屋なんだがな。最近、娘が行方不明になったそうなんだ。三日くらい前だったか……その日以来、あそこの店主の顔から生気がなくなって、商売もまともにできてないんだ」


「へえ……ちょっと、行ってきていいかな?」


「あまり刺激しすぎるなよ」


「分かってる」


 残っていた食事を掻き込み水で流し込んだルーシアは、店主に許可をもらって店を後にした。


 向かいの肉屋の前に立ち、売り場を覗いてみるがまあ勿論人はいない。だから、奥に向けて呼んでみた。


「すみませーん、誰かいませんかー?」


 しばらく待ってみるが、誰も出てこない。確か、さっきまでは営業をしていたので人がいるのは確実なはずなのだが……


「すみ──」


「……なんだ、客か?」


 カウンターの奥の扉が開いて、目の下のくまがすごいやつれたおじさんが出てきた。元の状態ならそれなりに渋メンというやつなのだろうが、今はなんともいえなかった。


「いや、客じゃないんですけど」


「……なら、何の用だ」


「その、話が聞きたくて。ボク、最近起きている行方不明事件のクエストを受けた冒険者なんですけど、娘さんのこと少しお話聞けませんか?」


「……黙って失せろ」


 奥に入ろうとする店主を見かねて、ルーシアは風魔法で扉を閉じた。ドアノブを握ろうとした手は何も握らず、店主は小さく舌打ちをした。


「お断りします。目を背けてても何も進展がないことくらい、理解しているはずです。ボクもギルドも、この事件は誘拐だと予想しています。捜索が遅れて発見できなければ、娘さんが何されるか分かったものじゃありません。もしかしたら、死んでしまう可能性だってあるんです。娘が大事なら、あんたが今するべきことが何かくらい分かるでしょう!」


「……分かった、話はしてやる」


 ルーシアは安堵の溜息を吐いた。店主はカウンターへの入り口を開け、ルーシアが中に入れるようにする。その後ルーシアを連れて売り場の奥へと入り、扉を閉めた。

……今回も何も書くこと思いつかなかった! はっ、そうだ……勉強したくねえええ────…………なんて叫んでも、意味はないんですよねすみません。

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