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新装備、注文 短剣

 新しく買ったズボンを履き、スカートを売って現在街を歩いている。次の目的地は武器屋だ。目指している武器屋は学園の近くにあり、アルミリアがレイピアを修理に向かっていた例の武器屋であり、ルーシアも剣を研ぐ際に最近はよく行っている。武器屋のおっちゃんとはもう仲良しなのだ。


「おーっす、おっちゃん。稼ぎのネタが来てやったぞー」


「まあた来たか、小娘が。今日も剣を研ぎにきたか?」


「なんだよその言い方ー。ボクとおっちゃんの付き合いだろう? 今日は武器を作ってもらいたくて来たの」


「ほう、そんなすげえ剣を持ってながら、別の武器を使うってのか?」


「半分正解かなあ。この剣はこれからも使い続けるけど、サブウェポン……まあ、予備の武器を作ろうと思ってね。こう、この剣を落とした時とか攻撃のテンポを変える時に使おうと思ってさ。ほら、第二のヤイバ持たざる者、冒険者の資格なしって言うじゃん?」


「聞いたことないわい……まあ、金を払うなら客だ。値引きなんぞは一切せんが、注文は承ろう」


「よしきた」


 店主が奥について来いと言うので、ルーシアはその後についていく。店の裏はどうやら店主の住まいになっているようで、通路の途中に二つほど部屋があり、その片方に入った。この部屋は武器の見本や紙などが置いているため、恐らく今回のルーシアのように武器の作成を頼みに来た人の話を聞く部屋なのだろう。もう一つは本当に生活をしている部屋だろうか。


「……どこで武器作ってるんだ?」


「通路の奥にあんだよ、作業場が。んで、御所望の武器はどんなだ?」


「その前に一ついい?」


「なんだ」


「おっちゃん、もしや独身?」


「……値段倍増な」


「あー! 今のなし、マジでなしで! ごめん、ほんとごめんって!」


「はあ……妻も娘もいるが、二人とは別に暮らしている。休息日には家に帰っているから、家庭環境が酷いとかそう言うのではない」


「はあ……単身赴任、こっちの世界でもあるんだなあ……」


「……なんだ、その……訳分からん単語は」


「いや、何でもない。それで、武器の詳細だっけ。ボクとしては腰の後ろに装備して、コートで隠せるようにしたいんだ。長さ的には五十か六十センチ……って言っても分からないか。見本触っていい?」


「御所望の長さを探しておけ」


 ルーシアが席を立っていくつもの見本が並んでいる棚に近付く。主な武器は両刃の両手剣で、どれも叩き斬ることを目的とした西洋の剣ばかりだ。両手剣から視線を外し、その右側の棚を見る。ここには片手剣が主流だろう。刃の長さは全体的な平均で一メートルから一メートル二十センチほど。ルーシアの身長より三十センチほど短い──さっきチルニアの店で色々と測った時に、身長は百五十センチに達していた──くらいのものが多い。


 更に右に視線を滑らすと、そこには刃の長さが六十センチ程度の短剣が並んでいた。全体的に見回してみたが、片刃の曲刀というものはなかった。ついでに、日本刀のように切れ味重視のものもない。


「ふーむ……」


 ──片刃の曲刀ってのはちょっと憧れてたけど、それは遠くないうちに自分で作ってみるか。理想としては、このくらいかな


「じゃあ、この短剣を基にしてほしいかな。長さはこれと同じで、刃はこの剣と同じスタイルで」


「……お前さんの剣、なかなかに研ぐのが難しいんだよ。まあ、言われたからにはやるがよ……それで、魔力はどうする?」


「あ、あー……やっぱり強度は欲しいなあ……どうやって作るの?」


「本来は魔術師に頼む。魔術師に剣を打つ際に作業場に来てもらい、不純物を取り除くと同時に魔力を注ぎ込むんだ。ただ、魔力は親和性、なんて話もあるくらいだ。やっぱり使用者がやった方がいいなんて話もある。お前、魔法使えるんだよな?」


「まあ、その辺の王宮魔術師レベルには」


「いや、それそのヘラっとした顔で言うことじゃねえからな……分かった。素材を明日までに用意しておくから、明日店まで来い。昼過ぎでいいな?」


「分かった、昼過ぎね。それで、砥石はあるの?」


「お前のお陰で砥石はそれなりに貯蔵があるからな。そこの心配はいらん」


「さすがボク」


「そこはお前が使うのを見越してなるべく仕入れておいた俺を褒めて欲しいものだな」


「おっちゃんナイス!」


 拳を店主に突き出すと、店主も溜息を吐きながらもその拳にゴツゴツしたデカい拳をぶつけてきた。


「……それで、お前さん。その左腕の防具はどうするんだ?」


「んー……これはこのままでもいいと思ってるんだけどね。もうちょい装備が楽になればいいけど……」


「盾は使わないのか?」


「うん」


 ルーシアは盾は使わない。理由は特にはないが、やはり動きやすさとしては視界を邪魔したり、無駄な動きが必要になったりする盾は使いたくないのだ。ただ、何も防具がないよりはいい、ということで学園の入学当初に買ったものなのだが、やはりこれまで使ってきて縄が何度か切れたし、金属部分にもかなり傷が入っている。側面が少し錆びていることも見逃してはいない。


「なるほどな……なら、こいつはどうだ?」


「ほう?」


 店主が見せてきたのは、腕に取り付ける用の防具だった。しかし、面積の広い盾とは少し違って腕を覆うような形状なのが特徴的か。


「ちょいとつけてみていい?」


「おう」


 腕を通してみるが、やはりルーシアの腕は細すぎる……ように感じたが、防具を押さえ込んでみるとガッチリと腕に密着した。剣を振るように腕を振ってみるが、抜け落ちる様子もない。


 どういう仕組みか見てみると、防具の部分は頑丈な金属が使われているようだが、掌側は柔らかめだが壊れにくい素材でできていた。引っ張ってみるとガガガと音を立てて広がり、腕から取り外すことができる。


「……もうそんな技術があるのか、この世界」


 仕組みとしてはヘッドホンの調節と同じ仕組みだろう。店主が考えたのかは分からないが、このご時世にこの仕組みを考えたとすれば、そいつはなかなかの発想力を持っている。


「どうだ?」


「いいね、これ。そっちより軽いし……買った!」


「よしきた。そんで、次はこっちなんだが」


「これは……チェストプレート?」


「ああ。いくら防具が少ない方がいいとは言っても、やっぱり胸の防具くらいはあった方がいいだろう。こいつはこの街でも名高かった冒険者に魔力を込めてもらったものだ」


 今の言い方だと、その冒険者はもういないという風に感じ取れた。その感覚の正体は、恐らくこの前の例の事件に関係するのだろう。


「……そっか」


 つまり、トレントに殺された冒険者。


「お前さんに使ってもらえるなら、こいつに魔力を注いだ奴も喜ぶだろうよ」


「……なんか乗せられてる気もするけど、分かった。どうせトレント討伐で金はまた入るんだろうし、生き残る手段は一つでも多い方がいいもんね」


 そして、ルーシアは腕と胸の防具を購入した。明日のことを再確認して、ルーシアは宿へと戻る道を歩いた。


 かつてトレントだった神樹は、今はルーシア達と戦った場所で鎮座している。あの周囲は既に土が枯れてしまっているから、これからは枯れる一方だろう。むしろ、あの木が栄養となって、新たな命を芽吹くかも知れない。


 ──トレントに宿ってた人達と約束したもんね。もう、引き下がらない……逃げれない


「……?」


 一瞬、叫び声のようなものが聞こえた気がした。しかし、それからしばらく耳を澄ましてみたが、何も聞こえなかった。


「……空耳ってやつかな」


 ルーシアは宿へと向かった。

眠い……学校あるのに、こんな時間まで何やってんだ俺は……楽しいからいいけどね

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