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フレイヤの事実

「ごはん、凄く美味しかったです」


「それなら良かった。ってまあ、ドレッシング以外ボクが作ったものないんだけどね」


 夕飯を終え、ルーシア達は今風呂へと向かうところだった。時刻はおおよそ六時半、この時間帯に風呂に入る人はこの宿ではあまりいないので、恐らく貸し切りとなるだろう。ただ、元々そう広くはないが。


 フレイヤは着替えを用意していなかったが、ルーシアと体格が大して変わらないため、ルーシアのものを貸し出すことにした。流石に、肌着までは無理だが。チルニアは家が近いということもあり、一度着替えを取りに帰っている。


「フレイヤはスラムで住んでるって言ってたけど、お風呂とかどうするの?」


「いつもは水で濡らしたタオルでからだを拭くくらいです。フイ、魔法がそれなりに得意なので水を出すくらいなら出来ますから」


「魔法、使えるんだ」


「はい。フイの世話してくれている方が言うには、その辺にいる魔法使いよりも魔力量が多いそうです」


 ルーシアは魔力振動を用いてフレイヤの体を見てみる。すると、確かにルーシアの四分の三近いサイズの魔力保存器官が感じ取れた。更に、出入に関わる器官もそれなりのものだ。例を挙げるとすれば、チルニアと同等以上。


 魔力振動を停止させ、もしフレイヤが仲間になった場合のことを考える。


 ──ボクは基本魔法剣士として戦う……でも、実力としては魔法が基盤となってくる。フレイヤは体がまだ成長しきってない……いや、ボクもしきってないけど、それ以上に幼いし、重たい剣を振るうのは難しいか。ボクが前衛として戦うから、フレイヤは後衛に就けるのがいいだろうか? 魔法で後方支援を……でも、あの魔力器官だとボクと違って長く使えば魔力切れが起きる可能性がある。ならば、魔法以外の飛び道具……弓矢辺りを使わせるべきか?


 頭の中で思考をぐるぐると巡らせる。すると、フレイヤがルーシアの顔を覗き込んでいることに気付いた。


「な、なに?」


「いえ。ルーシアさんって、よく難しい顔と言いますか、考え込んでるなー、と思いまして」


「そんなに考え込んでるか……?」


 数秒間、移動を続けながらこれまでのこの世界での生活を振り返る。


 ──うん、めちゃくちゃ考え込んでた。ピクシルとの会話も含んだら、一日の半分は考え込んでるわ


 どうやら完全な無意識だったようで、フレイヤの指摘で初めて気付いた。確かに、今までみんな──主に考え事の苦手なチルニア──から似たようなことを言われてきた記憶はあるが、気にも留めなかった。しかし、いざ実際に思い返してみればかなりの時間を考え事に使い込んでいた。


「まあ、なんだ。大事なんだよ、色々考えるのって。フレイヤも気になることがあったら、ちゃんと考えて自分なりの答えを見つけて、その後で答えを求めるようにした方が、これから先のいい経験になるからね」


「はい、分かりました!」


 無理矢理話にピリオドを打ったが、フレイヤはルーシアの意図を汲んでかはたまたそんなことは考えていないのか、ルーシアの言葉に素直に頷いた。


「おーい、お二人さーん! ほわあっ!」


「っ!」


 着替えを持ってきて後ろから駆け寄ってきたチルニアが、唐突に躓いて前のめりに倒れる。しかし、即座に動いたルーシアがチルニアの後ろ襟を掴んでなんとか転けずに済む。ただし、チルニアの服の丸襟はしっかりとその細い首に食い込んだ。


「ぐえっ、じぬ……」


「チルニアはもっと危険性をだね……」


 ルーシアはチルニアの脇の下に手を入れ、立ち上がるのを手伝う。やっとのことで、と言った感じに呼吸を再開したチルニアは、ほんのりと赤い痕が残っている首をさする。


「……それもう学園の頃から何度も言われて、聞き飽きたよ。耳が破裂しそう」


「言われたくないならもっと注意をしようよ……改善しないとそのうち大怪我するよ」


 この世界──というより、ルーシア近辺での諺のような言い回しをするチルニアに正論で返すと、チルニアはぷぅと膨れて「その時はルーシアにまた面倒見てもらうからいーもん」と言ってそっぽを向いた。どうやら反論できなかったらしい。


「はあ……っと、着いた。この宿の風呂一番奥にあるから、ちょっと遠いんだよなボクの部屋から」


「おっふろ、おっふろはやくはいろー」


「フレイヤ、一緒で大丈夫か? チルニアと一緒が嫌なら、追い返してもいいけど」


「ここまで来てそれは酷くない⁉︎ てか最近ルーシアあたしの扱い酷くない⁉︎」


「酷くない。ほら、ボクは見た目男子と大差ないからさ、問題ないけど、チルニアはほら、色々大きいからさ」


「もしかしておっぱいの大きさで恨んでる? 無理だよ、これは成長の証だもん。そろそろお母さんより大きくなりそうだけど」


「ボクは気にしてないよ。どうしてもって言うなら引きちぎってあげるけど」


「絶対目の敵にしてるよね? やめてよ?」


 チルニアはその腕から零れ落ちそうな脂肪の塊を両腕で守り──守り切れていない──、一歩二歩とルーシアから距離を取る。


 ルーシアとチルニアの会話に入っていいものか迷っていたらしいフレイヤが、口を開いた。


「ええと……だ、大丈夫、だと思います。フイ、あまりそういうの気にしない……と、思いますので」


「じゃあいいや。よかったなチルニア、フレイヤが気にしなくて」


 ルーシアの冗談(?)に少し焦っていたチルニアは、フレイヤからの承諾が下りたことで安堵の表情を浮かべた。ただ、やはり男の子であるフレイヤ、頬がかなり赤く染まっていた。


 脱衣所で服を脱ぎ、バスタオルで体を包んで浴場へと入る。この宿は学園と違いタオルを巻いたまま入ることはタブーであり、体を洗った後はタオルは湯船のそばに置いて裸の付き合いとなる。


「ふああ、大きいお風呂……!」


「走ると危ないよー」


「ひゃわっ!」


「言わんこっちゃねえ……」


「まだまだ子供だなあ」


「お前が言えないぞ、チルニア……──っ⁉︎」


 湯船に向かう途中、転んだフレイヤ。……ルーシアは、そこで予想外のものを目にした。



「緊急会議だ、ピクシル」


『はいはい、何の話かは分かってるけど、一応議題どうぞ』


 風呂から出てチルニアもフレイヤも居なくなった後、ルーシアはベッドに腰掛けて正面に実体を持って浮かぶピクシルと向かい合っていた。


「ボクは先程、予想外のものを見た。フレイヤの脚の間……そう、謂わば秘密の花園」


『変な言い回ししなくていいから』


「……フレイヤは、ふたなりだった!」


『ふたなり……って何かは知らないけど、多分両性具有のことよね?』


「そうとも言う」


 そう。日本の同人誌では定番ネタであるふたなり、即ち両性具有だ。あの少年……いや、少女? ともかく、フレイヤは両方のブツを持っていた。勿論、魔力振動を駆使して確認した結果、どちらもしっかりと活動可能だ。


「……どっちの性別としても、子供作れるって訳?」


『そうね。一応、今まで十数人は見たことあるわよ、私の六千八百年に渡る生の中で。でも、男寄りなのは珍しいわね……私が今まで見てきたのは、全部女寄りだったから』


「じゃあ、レア人種?」


『身も蓋もない言い方をすれば、そうなるわね。と言っても、普通の人と大差ないわよ。どっちの方法でも子供が作れるってだけで、身体構造とかは基本的に一般人と同様だから。ただまあ、珍しいから奴隷として売れば、かなり価値があるわね』


「……よし。ボクは明日、何が何でもフレイヤを仲間にする。奴隷になんてさせない」


『他の私欲がありそうね』


「会議終了。おやすみ」


『はいはい、おやすみ』

同人誌に使いやすそうな設定ですね、はい。フレイヤをこれからもよろしくお願いします

あと、テスト期間に入るので、今週金曜と来週火曜の更新は微妙です(先週金曜の更新をしていないことに目を瞑りながら)

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