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魔法

 授業が全て終わり、夕飯の時間が迫っていた。ボクは、少し面倒なことになっているが。


「夕飯、ご一緒しませんか?」


 昨日は結局、夕飯に起こされたが食欲が起きず、一緒には食べなかった。そのこともあってか、アルミリアがボクを誘ってくれていた。


「お誘いは嬉しいんですけど、今日もなんだか食欲が湧かなくて……また今度、誘ってください」


「そうですか……分かりました。では、後日誘わせていただきます」


 朝食と昼食も、出来る限り時間をずらすようにしている。やはり、これはボクの昔のトラウマによる対人の苦手意識故だろう。


 ただ、今日はまた別の意味もあった。それは、ピクシルとの会話だ。


 あの三人と同じ部屋で暮らす以上、一人きりになれる時間は少ない。だから、こうして今日は時間を作ったのだ。


「ピクシル、魔法について教えてほしい。朝の約束通りに」


「はいはい。ちょっと待ってね」


 しばらくすると、ピクシルが姿を見せた。


 ちょっと待つ必要があるのだろうか?


「今の一瞬、何してたの?」


「収納魔法から私の実体を取り出してたの。今あんたが見てる私は、実体のある私。朝見てたのは、魔法であんたに見せてた私。妖精の村ではこうやって、体を作る職人がいるのよ。そのうち紹介してあげる」


「……いや、結構です。ピクシルとその村に行ったら、とんでもないことになりそうだから」


 「だ、大丈夫だから! ……多分!」と言っているあたり、信用し辛い。


「まったく……それはいいとして、魔法ね。今のところのあんたの推測では、魔法はどういうものなの?」


「そうだな……」


 顎に手を当てて考えてみる。


 ボクの魔法の印象としては、日本におけるゲームやアニメの魔法といったものが強い。魔力やMPを使って使用するものもあれば、装置を使って魔法を行使する近未来的なものもあった。


 しかし、異世界でこれといえば。


「……身体の中に流れる魔力を感じ取って、起こしたい現象をイメージする。そうすれば、魔法として現象が起こる、ってところかな」


「へぇ、あんたの世界じゃそんな感じなんだ」


「違うの?」


「んー、半分くらいは正解してると思うわよ」


 つまり、半分くらいは間違っているらしい。


「じゃあ、この世界の魔法ってどんなものなの?」


「じゃあ、簡単に解説するわ。この世界の魔法は、魔力を使って具現化するの。魔力はこの世界に存在する物質(、、)の一つで、魔法を行使できる生物が持つ魔力器官を通して、魔法に変換するのよ」


「魔力が物質? 魔力器官?」


「そ。あんたの知識とは、この辺が差異かしら」


「ああ、その認識はなかった……じゃあ、魔法が使える人と使えない人との違いは……」


「魔力器官次第ね。魔力器官は三つの機能があって、一つは魔力の吸収、一つは魔力の保存、一つは魔力の放出。魔法が使える人は、この三つの機能が全て使える場合で、使えない人はこのうち一つ以上が使えない場合。これは生まれた時点で決まるから、使えない人がいくら練習しても一生使えないわ」


 遺伝ってことだろうか。この世界の知識や研究がどこまで進んでいるのか把握していないから聞いても分からないだろうが。


 それに、先天的に魔法使用の可、不可が定まってしまうのは、中々に不平等な世界になってしまいそうだ。


「魔法の原理はなんとなく分かった。魔力器官を通して魔力を体内に取り込み、イメージによって魔力を放出の際に現象に書き換える……修正は?」


「いらないわ。それで十分。ちなみに、放出の際魔力は膜に覆われてて、その膜の中であんたの言う現象への変換が行われるの。そして、変換が終わったら膜が弾けて、初めて魔法になる。それに失敗したものに魂が宿ったのが、妖精や精霊よ」


「……つまり、妖精や精霊は魔法から生まれたってこと?」


「ええ」


 つまり、ピクシルの実態は膜に覆われた魔力に魂が宿ったもの、ということか。なんとも異世界らしい存在だ。


「妖精と精霊の違いは……まあ、また今度話すわ。長くなるかもしれないだろうし」


「じゃあ、次の質問。魔法に制限はあるの? 例えば、魔法の威力や大きさ、あと種類とか」


「あるわよ」


 ピクシルは今浮いている場所から少し右にずれると、右手をふわりと動かした。すると、スクリーンのようなものが現れる。


 なんだこれ、テレビ?


「口で話すと面倒だから、これで見せるわね」


 そうして、いくつかの画像がスクリーンに一定テンポ毎に映し出された。枚数は、およそ十数枚だ。ボクはこれを、ピクシル劇場と呼ぶことにした。


 簡単に要約すれば、魔法は魔力器官によるものと、理科的なものによる制限を受ける、ということだった。


 魔力器官は人により個人差があるようで、三つの機能の優劣でかなり変わってくるようだ。ちなみに、魔力器官は心臓の少し下、横隔膜との間に存在するらしい。さらに、この世界にはまだ人類の臓器の名称などはないようだ。


 そして、理科的なものによる制限。科学と化学、どちらも関わってくるので理科と表現したが、難しく表すのは面倒なので簡単に言う。科学的なものではエネルギー関係、化学的なものでは原子関係や状態変化などだ。まあ、他にも色々関わってくるが、関わるものが多過ぎるから割愛する。


「……こんな魔法も存在するんだな」


「光属性魔法の一種ね。画像は私のイメージでてきとうに作ったものよ」


「雑だけど分かりやすかったから許す」


 言語はこの世界のものだった。ルーシアの記憶のおかげで読めました、ありがとう勉強しててくれて。


「……ちなみに、属性ってどんなのがあるの? 普通に、火、水、風、土、光、闇なの?」


「えーと、火水風土かすいふうどは基本属性、光と闇は付与属性、聖は援助属性と呼ばれてるわ。火水風土っていうのは、基本属性の覚え方よ。まあ、多少なり使いやすさに才能の差はあるけど、魔法が使える人なら誰でも全ての属性使う能力はあるわ。魔法は起こすもののイメージが大切だから」


 ボクが神に頼んだことの意味! なくなったよ!


 いやまあ、多分全ての魔法が使える世界に飛ばしてくれたんだろうけど。


「……基本属性は世界を構成する四元素ってとこか。付与属性と呼ぶ意味は分からないけど……光と闇はまあ、想像つく。援助属性……ああ、回復か」


 そういや、日本のゲームでも回復魔法を聖魔法っていうの多かったしな。この世界も同じようなものか。


「ちなみに、ボクはどうなの?」


 ボクの魔力器官や魔法はどうなのか、という意味をピクシルは──思考を読んだのかもしれないが──汲み取ってくれたようだ。質問に答えてくれる。


「あんたは異常よ」


「マジで?」


 死ぬ前に流行ってた異世界チーレム転生というやつか? ボクの場合逆ハーレム? 嫌だなあ。


「あんたの魔力器官は、王宮魔術師レベル……か、それ以上。妖精の魔法とも遜色ない威力が出せるはずよ」


「へえ! やるじゃんルーシア」


 自分自身の体じゃないため言ってしまったが、ピクシルはボクがルーシアとは別人物だと把握しているため、反応は示さなかった。


「さらに言えば、妖精以上の魔法が使えるわ」


「……え、なんで? 妖精は魔力から成り立ってるから、魔力器官の制限を受けないってのは想像付くけど……ボクは制限ありでしょ? いくら有能な器官だとしても」


「ええ、制限ありで妖精超えよ。何せあんたは……」


 ピクシルの続きの言葉に、ボクはついゴクリと喉を鳴らしてしまった。


「魔力親和性と知識量が桁違いなのよ」


「知識量は分かるとして……魔力親和性?」


「魔力親和性は、体内に一生流れ続ける先天魔力と空間魔力との親和性を示すもの。それが高いと、イメージを魔法として具現化しやすいのよ。私たち妖精や精霊は元が魔力だから親和性はマックスだけど、あんたはそれと並ぶレベル。更に、知識量によって現象を事細かくイメージできるから、魔法の具現化が詠唱だけの一般魔法使いよりも効率がいいのよ」


 つまり……愛斗としての僕と、ルーシアとしてのボクが合わさって……最強になった?


「まあ、最強になりたいのなら魔法を使いこなさないとだけど。……すぐ出来そうなのが癪に触るわね」


「おい」


 しかし、これはかなりのアドバンテージではないだろうか。神様はボクの発言の何を聞いていたのか分からないが、でも世界を思い通りにするのであれば戦闘力も必要になるだろう。ありがたい誤算だ。


「ああ、そうそう。あまり知られてないけど、時空属性の魔法もあるわよ。使える人はごく僅かだし、あまり好まれる魔法でもないけど」


「時空魔法? それって……時空を歪めたり?」


「存在する魔法の一つとして、そういったものあるわ。まあ、知られてるとすれば、収納魔法。私がさっき、この実体を出すのに使ったものよ。ものを入れている間ずっと魔力が消費されるから、使える人なんて一握りだけど」


「収納魔法か……是非教えてくれ!」


 食い気味なボクにちょっと引き気味な態度をされたが、その程度は気にしない。


「分かった……けど、魔法を教える前に、あんたにはマスターしてもらうものがあるわ。あんたはこれの才能がある」


「よし、任せろ。ボクは天才と呼ばれてきたからな、その程度やってのけるさ」


「聞く前にその程度って言うのは馬鹿の発言だと思うけど……まあいいわ、あんたが馬鹿か天才かなんて興味はないし。あんたにマスターしてもらうのは、魔力を見て、感じることよ」

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