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50世紀青年〜不死身が死ぬまで〜  作者: 過猶不及
第二部

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秘蔵っ子育成計画

 トリトルテの発言を受けて、ロンユが顎に手を当てながら口を開いた。


「足止めはずっとだけど、脅威に思わせるのは一瞬でもいいだろ? 退避命令を引き出せさえすればいいんだから。それでも、人員はそれなりに割かないとダメだろうけど」


 アンチミュートは、頭をかいた。トリトルテの言い分もロンユの言い分も理解はできた。しかし、そこまで深く考える必要性があるとは思えなかったのである。


「いけんだろ。俺らなら」


「キモ」


「ああ!?」


 速攻で暴言を吐いたトリトルテにガンを飛ばす。


「そんなことはわかってる。こっちはずっと“現場“で凌ぎ削ってんだ。教師なんかやってる奴等に負けるわけない。……今やってるのは、任務の成功率と生存率の底上げだ」


「そういうことだ」


 静かな、落ち着いた口調であった。シードラードを見ると、わずかに口角が上がっていた。この場の空気を楽しんでいるように感じる。アンチミュートが先生と呼ぶこの男は、常に穏やかで焦っているところを見たことがない、とメモにも記されていた。昨日の自分が、今日の自分にこの男を「先生」と呼ぶように指示していたのも納得できる。シードラードはどこか、児童生徒に対する教師のような雰囲気を持っている。


「今回、生徒を捕らえる役目は、アンチミュート、ロンユ君、トリトルテ、そして私で務める。その他で教師陣の足止めをしてもらう……ということでどうだろう。もし人数が必要なら、何人か連れて行ってもいい」


「お、先生が出張るのか! ならもう生徒の方は、“先生“だけでいいんじゃねえか?」


「いや……“アレ“がどのくらい強いか、まだ未知数だからな。あと……ツバキか? アレもまあ強そうだし。現場もろくに知らないガキに手こずるとも思えないが、念は入れとくに越したことない」


 それもそうだとアンチミュートは同意の意を込めて軽く、本当にわずかに頷いた。すると、今度はロンユが口を開く。


「指揮はどうする。ジロウに任せようか?」


「ジロウは誰かの下で自由に動く方が活きるんじゃないか? なあジロウ」


 ジロウを見ると、腕を組んで仁王立ちをしている。微動だにせず、真っ直ぐな目線でトリトルテの方を見ている。


「やれと言わればなんだってやるさ。でもまあ今回の指揮は、ダミィロがいいんじゃないかと俺は思っている」


 トリトルテの声かけに、話題に出た渦中のジロウが終始その態度を崩すことなく淡々と答えた。


「わわわわわ私!? 唐突に私!?」


「ジロウが指揮すると、基本自分でなんとかしようとし過ぎるからね。やめた方がいい。兄貴として先陣切って戦ってくれよ」


「そうだな、ロンユの言う通りだ。兄貴としてみんなの先頭に立つとする」


「あのお……私、なの……?」


「ああ、なぜなら俺は兄貴としてみんなの……」


「それさっき聞いたよお……なんで私なのって話!」


「だから、俺は兄貴として……」


「もう誰かこの兄貴bot止めて! 頭から逆さまに土に埋めてほしいい!」


 先ほどから喚いている小うるさい少女は、ダミィロといった。ダミィロは後ろで結んだ三つ編みを激しく揺らしながら、顔中に皺を寄せて必死に訴えかけている。両手を握りしめながら、上下にブンブンと振りまくっている。


「安心しろ。指揮といっても、やることは敵への揺さぶりと、捕獲役の私たちとの連絡だけだ。お前なら大丈夫だ」


「トリちゃんなんて!? 『だけ』だって!? 全部重要なやつじゃん! 無理無理無理無理無理無理! 他にもいるじゃん! なんで私なんか……」


 ダミィロは、この集団の中でもかなり幼い。皆捨て子であるため自身の年齢を把握している者は1人としていないが、その身長と雰囲気でダミィロが自分たちの中で1番幼いという認識になっている。そのため、可愛がられ方も尋常ではないようである。


「そりゃあ、指揮執る奴が重要な役回りなのは当たり前だろ。で、その重要な役回りをダミィロになら任せられる。頑張れダミィロ」


「トリちゃーん!!」


「ダミィロの情報もちゃんと頭に入れてきた。ダミィロなら異論はねえ」


「ええええ!? アー兄さん!?」


「俺も、それでいいと思うよ。あ、俺は1人で大丈夫。生徒を見た感じ、不利取りそうなのは居なかった」


「ロンユ君まで!? ていうかしれっと話題変えたね!! もう私の話終わりなの!?」


「俺も1人でいい。ちゃっちゃと済ませてカバーに入るわ」


「プラならお前に着いていけそうだけど……プラはトリトルテが連れてくのか、どうせ」


 プラは、かなり足が速いという話だ。アンチミュートは、一瞬メモ帳に手をかけたが、見る必要がなさそうだと思いなおし、手を離した。


「さすがロンユ君わかってるねー。行くぞプラちゃん」


「了解」


「あとは、どうやって標的は教師だと思わせるかだなあ。『お前らが標的だ』って言っちまうかあ?」


「やっば私のくだり終わりなんだ!! これで、決定なんだ!!」


「こういうのは、誰かに言われて気づくよりも、自分で気づいたと思わせた方がいいんじゃない? やっぱり『自分の考えたことは正しい』って思っちゃうもんだろ?」


「ロンユ君。そこはかとない性格の悪さが滲み出てる」


 トリトルテは、ニヤニヤしながらロンユの方を見ている。楽しそうである。


「ねえええ! ホントに私でいいのお!?」


 こちらは苦しそうである。



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