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50世紀青年〜不死身が死ぬまで〜  作者: 過猶不及
第二部

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魔導の名を冠する学校

「私、この試験好きじゃないっす。あんなにプレッシャーかける必要がどこにあるんすか」


 レオナルド魔導学院の喫煙室。生徒とは無縁の場所であり、教師たちの憩いの場でもあるこの場所は、職員室からはほどよい距離で、校舎からは完全に切りはなされた場所に位置していた。

 今この場所を使用しているのは、若い女性の教師と、熟練の風格漂う男性教師。男性の方は、アルストやツバキの在籍する3年1組の担任イグゼレムであった。若い女性教師は、顔をしかめながら、男勝りな口調でイグゼレムに抗議している。


「そういう試験だからな。しかたないさ」


 イグゼレムは、苦笑いを浮かべる。内心では、彼女の意見に同意しつつも、やはり試験は試験と割りきらなければならない、なんとも複雑な心境であった。


「あの子らは、まだまだ子どもっすよ。やるにも限度ありますって」


 口をへの字に曲げながら、メリラッチは煙草を口にくわえた。ジジジとタバコの先が収縮していく。少しして口から離すと、天に向かって煙を吹いた。


「だって、“受ければ合格“なんでしょう?」


 その発言に、イグゼレムはピクリと耳を動かす。静かに、それでいて素早く、メリラッチに顔を近づける。


「誰かに聞かれたらどうする」


「誰にも聞かれないように、ここで話してるんじゃないっすか」


 物怖じせずに返される。たしかに、この部屋に近づく生徒はいない。この部屋のつくりも、生徒が入ってこれないようにシールドが張られている。万が一、この部屋に近づく生徒がいた時には、イグゼレムたちが気づかないはずがなかった。

 イグゼレムは、いったん辺りに誰もいないことを確認すると、タバコの先を、灰皿に擦りつけた。

 

「優秀な人間には、遅かれ早かれ大きな決断を迫られる時が来る。それが今なだけだ」


「にしても、早すぎますって」


 なおも食いさがるメリラッチ。イグゼレムは頭をかいた。


「あいつらは優秀だ。この国の中でもトップクラスの人材であると、私は確信している。だが、それだけでは駄目なんだ。優秀の定義はそれぞれあれど、表面的に見て賢くて強い人間など、この世には腐るほどいる」


 「そうだろう?」と同意を求めるように、片方の眉をあげながら、メリラッチを見る。彼女もその意見には大方同意のようで、グッと押しだまる。


「たが、ひとたび命の危機に瀕した時。その時その瞬間にこそ、人間の真価が姿をあらわす。本性や覚悟、実力がまじまじと見えてくるんだよ」


「今回は、その真価を見ると?」


「ああ。この試験の内容はふせて、ただ命の危険があること、合格率が極めて低いことだけを提示する。そして今年は特別に1日猶予を与える旨を伝える。すると、おそらく生徒たちはこう思う。『得体の知れないなにかによって、去年までにあまりにも死人が出すぎたために、今年からは特別措置が設けられたのだ』と」


 メリラッチはまたもや顔をしかめた。まだ吸えるであろうタバコを勢いよく灰皿に押しつける。イグゼレムは、軽く笑うと話を続けた。


「加えて相談を禁止、猶予も1日と長すぎないことで、この試験への“疑り“を制限する。たとえ、この試験が、覚悟を見るため“だけ“のものだと気づく者がいたとしても、気づけるほどの胆力を持った者ならば、おそらく相談を禁止した理由にも気づくことができるはずだ」


「不安を煽るだけ煽って終わり。やっぱり私は、この試験が嫌いっす」


「俺だって、好きじゃない。できれば、全員上へあげてやりたい……だが、魔導の名を冠する学校で、勝ちのこっていくとはこういうことだ。心技体、すべてを高水準でクリアした者だけが生きのこることができる。この程度で怖気づく者など、この学校にはいらない」


 結局のところ、すべてはこのひと言に収束する。レオナルド魔導学院は生半可な人間の輩出を許さない。許してはならない。それが、魔導の魔導たるゆえんなのである。

 メリラッチは、灰皿の中を眺めるように下を向いた。そこには、さきほど捨てたタバコがあった。細長い形をのこしたままの姿であった。


「何人、のこるっすかね」


「全員のこるさ」



 少しずつ、構想していた内容が消化されていく感覚。しかしまだまだ続きますね。そう簡単には終わらない。いやあ、長くなりそ〜。

 ご覧いただきありがとうございました。これからも細々とやっていきます。


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