タイムリミット
「命の危険……?」
「そうだ。だから、この試験を受けるかどうかは、お前たち自身で決めてほしい。私たちの一存では、決められない……決めてはいけないからだ」
重々しく放たれた言葉。生徒たちは、眉間にシワをよせる。ついさっきまでの賑やかさはなく、ただ殺伐とした空気が漂うばかりだった。恐怖とも不安ともとれる表情。イグゼレムは、申し訳ない気持ちを抱きつつ、続けた。
「そこで、これまでの結果も踏まえて、今年は前日に考える時間を設けることになった。救済措置とでもいうべきか。今日1日は、受けるか否かを決めるため日とする。授業はなしにしてあるから、存分に悩んでくれてかまわない」
淡々と、話は進められていく。生徒たちはまだ状況を把握しきれていない様子であった。しかし、イグゼレムはそれでも話すことをやめない。
「もちろん、受けなかったとしても、それは賢明な選択だと私は思う。受けたとしても……それもまた懸命であると、私は思う。お前たちが優秀であることを私は疑わない。なればこそ、その判断は正しい」
「その試験。俺は、今すぐでもいいぜ?」
この空気の中で、ハッキリとモノが言える人間は、このクラスではアルストしかいない。アルストは良くも悪くも空気を読もうとしない子だ。しかし、その唯我独尊が今日この時ばかりはありがたかった。
「お前はそう言うと思ったよ。なら、今日1日は休養日として身体を休めろ。試験開始は明日の朝8時半。正門の前に集合だ」
「受けなかった場合は、どうなるんですか」
「当然、不合格だ。ちなみに、話し合いは禁止とする。これは、人生の中でも極めて重要な決断となる。そんなものを、誰かが受けるからと受けて、後悔してほしくはないからだ」
「後悔する時間も、ねえかもなあ」
不適な笑みを浮かべるアルストは、いつも通りであった。彼の神経の太さには、毎度舌を巻く。
「もう一度言うが、お前たちが優秀であることに疑いの余地はない……一切ないんだ。私は、お前たちがこれからも末永く健康で、幸せでいてほしいと、心から願っている」
キーンコーンカーンコーン
1日の始まりを知らせる音が鳴りひびいた。同時にそれは、人生の大きな決断を迫られた生徒たちに、残された時間が1日を切ったことを意味していた。
ご覧いただき、ありがとうございます。短いですが、ちまちまと載っけていこうと思います。よろしくお願いします。




