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曰く、其の少年は5000年駆けて街へゆく  作者: 過猶不及
第二部
52/78

レオの進級試験

 広げられた地図には、キンリン王国全土がじつに詳細に示されていた。ところどころ、人為的につけられたバッテン印が加えられている。男は地図の中央あたりに人差し指をおいた。


 地図の中央。つまりキンリン王国の中央に位置するのは、この国の首都テリザーム・アスである。経済や学問をはじめとした国の中心地である。男は指をおきながら、さっきの調子から一変して重々しく話しはじめた。


「レオが在るのは“ここ“、テリザーム・アス。そして明日、レオの3年生達の進級試験が行われる。ねらうのはそこだ」


 レオとは、レオナルド魔導学院の愛称である。知名度の高さから、レオと略されて呼ばれることは少なくなかった。


「レオナルド魔導学院の進級試験ていったら、たしか毎年校外のどっかで行われるんだよな? しかも、毎年ランダムで」


 またしてもトリトルテが発言する。その様子を見ていたアンチミュートはまた口を挟みたい気持ちで一杯な様子だ。しかし、叱られた手前かろうじて抑えることがうかがえた。


「そうだ。しかし、今回はいつもとは少し状況が違う。キンリン王国全体を巻き込む凶悪な人攫い事件のおかげで、どの学校もかなり警戒を強めているようだ」


 重々しく述べているわりに、男の表情は穏やかであった。男には、人攫い事件のことなどなんら問題はなかったのである。そして、その雰囲気は男だけでなくこの部屋の者全員に共通していえた。もちろん、アンチミュートもその1人である。


「そりゃ大変だ。俺達のせいじゃねぇか」


 近ごろ騒ぎになっている人攫いの正体は、他ならぬこの場にいる者たちであった。いまだ犯人の素性も足どりも、ほんの少しの形跡さえわかっていない。中には、神隠しだなどと言いまわる者もいるほどであった事件の、彼らは犯人なのである。


「レオは、国内にいくつもの私有地をもっている。その中から毎年、ランダムに試験地を決めているわけだが……」


 男はチョンチョンといくつかのバツ印に指をおいていく。バツ印の正体は、レオナルド魔導学院の所有の土地であった。


「校外にどんだけ土地持ってんだよ」


「ザ・金持ちの学校って感じだな」


「腹立つぅ〜」


 口々に愚痴をこぼしはじめる。両手両足の指では収まらないほど地図がバツでうまってるのだ。それは、ここにいる者たちが、1人1箇所ずつ私有地を任せたとしても全く間に合わない数であった。愚痴をこぼすのも当然である。


「安心してくれ。言っただろう? いつもとは状況が違う。……恐らく、今回の試験では、通常使っている私有地は使われない。もっと言えば、『此処はレオの私有地である』と知られている場所も使わないだろう」


 男の話を聞いたトリトルテは、手で顎を押さえ考え込む体勢をとる。


「このバツ印の場所は使われないとなると、残るは校内……」


「おいおい、そりゃ大変だ。あそこは魔導を冠する学校だぜ? 侵入なんて恐ろしくてできねぇよ」


「いや、この進級試験は校外だ。校内で行われることはない」


 アンチミュートたちの心配をよそに、男は断固たる自信をもって言いきる。男はまだ根拠を提示していかったが、みんなも「あなたが言うのなら」となにも言わなかった。それほどまでに、男の言葉からは強い確信を感じとれたのだろう。


「そして都合の良いことに、在るのだよ。……20年ほど前に買って以来、いまだ1度も使われていない場所が、在るのだ。学校関係者でも知る人間はそう多くないだろう。その場所は……」


 地図の中央付近に置かれていた指がスーと南の方角へ下がっていく。その動きは止まる事を知らず、ついには地図のかなり端っこのほうまで到達してしまった。


「ピスケ? またずいぶんな田舎じゃねぇか、先生」


「明日の進級試験は、“この山“で行われる」


 ご覧頂き、本当に感謝です。文字では本気度が中々伝わり難いかと思いますが、本当に感謝しております。

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