束の間の休憩界最速の束の間
「お前らこそ“どういう事“だよ!そのツノ!」
ダイスケの声が大音量で響き渡る。辺りには音を跳ね返す物がない為に、すぐにその声は彼方に消え去ってしまったが、ダイスケの熱気はまだ治まる様子がない。ダイスケの目に飛び込んで来たモノは、なんとツノ。通常の人間にはまず存在し得ない捻じ曲がった大きな角が、眼前の3人の頭部から伸びている。その姿はさながら悪魔のようであった。
「おお、フードが取れてたね。いけないいけない」
3人の中でも頭ひとつ小柄な男が、なんともほのぼのした口調でフードを掴む。しかし、そのまま被るのかと思いきや、男はフードを離し、手を下ろしてしまった。
「いや、もう遅いか?」
「……被ったところでまた脱げちまう。格好なんて気にしてる場合じゃあねぇよ」
「そんなんだからモテないのよ?身だしなみはどんな時でも気を配らなきゃ」
「じゃあお前だけ被っとけ」
「嫌よ。この服ダサいもん」
「じゃあ反論すんな」
3人のフード被る被らない論争が急遽始まったことにより、ダイスケは1人置いてけぼりを食らう。以前にもこの様な取り残される雰囲気を味わっていたダイスケは、顔を顰め、不愉快なオーラを身体中から発しはじめた。
「………で。アンタらは誰なんだ?」
中々の強い口調で発せられた言葉により、3人の気を引くことに成功したようだ。一斉にダイスケの方を向く。リーダー格の頭ひとつ小さい男が腕組みをし、少し考える体制を取った。そして、ひとつため息をつく。
「………イイよ。強い君に免じて、特別に教えてあげるよ」
「別に隠す必要ねぇしな。ただ“こいつ“が説明すんの面倒臭かったってだけだ。とにかく早く帰りたいんだよこいつは」
もう1人の男。身長が高く細い棒の様な見た目の男が、リーダー格の男を指差しながら言葉を付け足す。
「メンテインは、もっと俺を敬うべきだよね。俺一応リーダーなわけだし」
「俺らは魔人族の人間だ」
リーダーの言葉を気にすることもなく、メンテインは話を続けた。どうやら敬意は全く無いようである。
「魔人族……?」
ダイスケは、その名を聞いたことが無かった。眉間にしわを寄せながら首を傾げていると、すかさず守護天使がここぞとばかりに咳払いをする。
「魔人族って言うのはー、…………すっごい魔力を持ったとんでも人間の種族ですー!!!」
「なるほど、びっくり人間か」
その発言はかなり響いていた様子で、3人の耳にも入る。
「まぁ、そうとも言えるね」
「確かに、常人からすれば俺らはびっくり人間か」
分かりそうで分からないようで、大体分かる気がする説明である。ダイスケは無理矢理納得する。そんなダイスケを気にすることもなく、自身の説明が120%伝わったと信じて疑わなず、守護天使は続ける。
「中にはー、彼等のことを地底人と呼ぶ人もいますー!!!」
「へー、地底人」
バキバキバキバキッッッッ
「ん?」
鳴り響く不穏な音は足元から聞こえてくる。地面に目をやると、いつの間にやら無数のヒビが走っていた。ヒビの先を辿っていくと、そこにはメンテインが居た。高濃度の魔力がメンテインを包み込んでいた。紫に黒を混ぜた絵の具の様な魔力が、禍々しくメンテインの全身から立ち昇っている。
「貴様…。そうか、貴様も俺らが魔人族と分かった途端、蔑むのか」
(確か、メンテインだったか。なんだよこの不穏な魔力は……)
「俺らを、その名で呼ぶんじゃねぇ!!!」
ドロドロとした魔力は形を成し、人の倍はあろうかという巨大な鎌が生成される。
「誰が好き好んであんな暗い地下で暮らしたい!?」
「なんだ!?どーした!?」
メンテインが、ダイスケに向かって一直線に飛び出す。眉はぐにゃりと曲がり、口はへの字を描き、歯は強く噛み締められていた。身体の何処にも傷は無い筈である。しかしながら、その表情は“傷付けられた“顔であった。
「ただ数が多いだけの貴様らが、何故俺達の上に立つ!!!」
ダイスケは咄嗟に、鎌を持つメンテインの手首を掴むと、加えて足でメンテインの進行を防ぐために、胴体を押さえる。
「おい待てって!何が気に障った!?俺には分からねー!」
先程の雰囲気から一変して、またダイスケを殺しにかかっている。正確には“また“と言うには、些か殺気が立ち過ぎている。最初にも増して、メンテインからは“本気“が感じられた。
「分からないだと!?俺達を閉じ込めた元凶が、何も!?何も知らずにのうのうと生きてたと言いてぇのか!!!」
「も〜何言ってもダメだぁ!!!」
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。またゆっくり書こうと思っております。おそらく1話1話はかなり短いですが…
よろしくお願いします。




