息つく間もない
「…イヤだと言ったら?」
ダイスケの想像する最悪の未来。それは、この街全体が壊滅することであった。
先の強大な魔力量
対峙した時の相手の余裕
一対三という数的不利な状況
バーモントの時以上の力を発揮しなければならない事は確実であった。
(あの時でさえ、闘技場が半壊したんだ…)
「困る。」
その言葉に、三人のリーダー格の者はニヤリと口角をあげた。
「…なら、尚更イヤだね。」
ダイスケに向かって人差し指を突き出す。
「【魔弾・鎮魂曲】。」
指先が突如光始めた。
ピュピュピュンッ
ピュピュピュンッ
次の瞬間、その指先から紫色の玉がダイスケに向かって放たれた。
「…【防御魔法/反射鏡】。」
しかし、放たれた紫の弾丸はダイスケの前に現れた鏡に、次々と吸い込まれ、
ピュンッ
ピュンッ
地上の3人の元へと跳ね返っていった。
魔弾の一つが魔法を放った者の頬をかすめる。赤い血が頬をツゥと伝った。
「へぇ…、“常人“でソレを扱う人が居るとはね。」
「防御魔法の派生よね。」
言ってる間も、無数の弾丸の雨が3人へと降り注いでいる。
「“常人“は、防御魔法を軽んじる傾向があると聞いてたが、考えを改めねぇといけねぇなぁ。」
スレスレをかすめていく危険な雨に慌てる様子もなく、3人は会話を続けていた。
「…厄介だね。」
そんな彼らの余裕な姿にダイスケは眉を顰める。
目的はなんだ
奴らは何者だ
今の攻撃はなんだ
被害を最小限に
頭の中を、幾つもの考えが通り過ぎてていく。そんな中で、ダイスケが最も優先すべき事項は、
直ぐにでも、この場から離れなければいけない
しかし、あの3人が自分達の地の利を手放すはずもない。
(力ずくで行くしかねぇか…)
フッ
リーダー格の者の足元にダイスケがしゃがみ込んで
(居る…)
「「「!?」」」
咄嗟に瞳を下へと向…
ガガガッ
気付けば3人仲良く宙に浮いていた。
(足払…)
ドスッ
ドスッ
ドスッ
考える間も無い。今度は腹部に鈍痛が走る。
「「「ぐっ…!!!」」」
先程まで居た場所がどんどん小さくなっていく。
(いや、僕らが離れている…)
3人は遥か上空へと蹴り飛ばされていたのだ。
バキッ
今度は頬であった。
「吹っ飛べ!!!」
バキッ
バキッ
遠くから同じ音が微かに耳に届く。
(ああ、アイツらも殴られたのかな。)
頬に響く痛みと共にそんなことを考えていると、いつの間にか地面に強く叩きつけられていた。
「イテテ…。こりゃえらく飛ばされたなぁ。」
周りには、人の背くらいの丈の長い草が生い茂っている。
ドゴォーーーーンッ!!!!
ドゴォーーーーンッ!!!!
物体が墜落する音がして、大量の土煙が舞い上がった。
「…あ“〜、クソがっ!!!」
「イッタ〜い。」
もう2人も時間差で殴り飛ばされて来たようだが、どうやら無事の様である。
気付けば、3人は街の郊外の草原地帯に落ちていた。
ここまで読んでくれるって…
とても嬉しいんです。




