波乱のトーナメント
今は放課後。マルコの部屋で、大介、マルコそしてレイジが特に何をするわけでもなく、くつろいでいると、突然ドアが勢いよく開いた。
「ダイスケやばいぞ! お前最悪のグループに入れられた!」
叫びながらクラスメイトのひとりが、無遠慮に入ってくる。と、それに続いて次々と3組の男子連中が入ってきた。
先頭に立っている、さっき叫びながら入ってきた男子の手には、なにやら紙が握られている。すると、その紙を床にバンッと勢いよく置いた。紙はシワシワで一度強く握られた形跡があった。
「エルストレガのトーナメント表だ。ついさっきモモツグに渡された。」
「お! 早速来たか〜。ダイスケはどこだぁ?」
待ってましたと、楽しげにレイジが覗き込む。大介とマルコもそれに続いて覗き込んだ。そのトーナメント表には、それぞれの出場者の在籍校・名前・学年が記されていた。見ると、大介の名前は、左の上から2番にある。
「俺たちの地区は、全30校、合計60名で争われる。その中で上位8名が本戦。つまり、3回勝てば本戦に進めるわけだが…。お前は二回戦で大会の優勝候補と当たる…」
(優勝候補…)
心の中で小さく呟く。
「第1シード。レオナルド魔導学院の天才、ツバキだ。今大会ダントツの優勝候補。まだ、学生なのに異名までついてる。“灼熱のツバキ“ってな。」
「ダントツ優勝候補…!」
思わず口に出してしまい、ハッとする。どうしてこれほどまでワクワクしているのか分からない。
「おい、ダイスケなにニヤついてんだよ。」
「え!? あー、いや。別に。」
高速で首を横に振る。取れちゃう勢いだ。
「おいおいオメーら、そんな話したって早いだろ? まずは、一回戦だよ、一回戦!」
釘を刺すように、レイジが言った。レイジはクラスの男子のまとめ役なのである。このままでは一回戦の相手に対して失礼だと思ったのだろう。
「おおっ。確かにそうだな! そうだよ! 一回戦が先だよな! 一回戦の相手は誰だ?」
トーナメント表を見て急いで来た男子連中が一斉に慌て出す。
「一回戦は〜、…オイプロクス第一魔法学院の、コタロウ? 俺たちと同じ2年だ。」
「「「………」」」
「どんなヤツなんだ?」
沈黙を破ったのは、この中で一番無知の男、大介。
「…、お前、知ってるか?」
「いや? 去年は出てないよな。」
「オイプロクス第一っつたら、結構な名門校だろ。」
キョロキョロと全員の顔を見渡すが、誰ひとりとして明確な答えを出さない。クラスの誰も知らないんじゃ、お手上げである。
「…一体、どんなヤツなんだろう。」
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【オイプロクス第一魔法学院】
どこの学校もやることは大体同じなようで。トーナメント表を見た生徒が数人、慌てた様子で職員室に押しかけていた。
しかし、行動は同じでも、その理由はまったく違うものであった。それは、
「先生! 本当にコタロウを出すんですか!?」
「そうですよ! どうしてあんな、卑劣なヤツを!!!」
ひとりの生徒に対するの抗議であった。
【卑劣】
性質が汚く、行いが正々堂々としていない様。