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FC武田  作者: 松度 幸枝
13/30

スポーツ(野球編)

前回から続く


武田、ふっと思い付いた感じで

武田 「さっき『二刀流』って言葉が出たが、本物の二刀流について、どう考える?」


武田以外の3人、各々考える仕草をして

そのあと、アツシが口を開く

アツシ「本物の…というと、大谷翔平くんのことですか?」


武田、軽く頷いて

武田 「そうそう。彼については、二刀流を続けて欲しいとか、どっちかに専念した方がいいとか、賛否が分かれるだろ。」

「ここの4人は割りとスポーツが好きだし、一家言あるんじゃないか?」


キン、難しい顔をしながら

キン 「物珍しい存在だから、観ていたいってのはある。」

「ただ同時に、専念したらどれくらいの成績結果を残すんだろうと、そう思うこともあるね。」


アツシ、斜め上に視線を上げて

アツシ「結果か…。」

「今のケガが癒えて、今後何もなかったら1000本安打100勝利くらいはするんじゃないですかねぇ。」


しげ、アツシの方をチラッと見たあと、全員に疑問を投げかけるように

しげ 「1000本に100勝。」

   「さて、ほんとにそれぐらいになったとして、世間はどう評価するだろう。」


武田、苦笑しつつ

武田 「たぶん、今と同じだな。」

「すごいって言う人も居れば、専念すればもっと良かったと言う人もいる。やっぱり、両論になるだろうよ。」


しげ、前のめりになって、もう一度全員に疑問を投げかける

しげ 「世間さまは、そうだとして。」

   「プロは、特に名球会なんかはどんな反応すると思う?」


キン、小首を傾げて

キン 「微妙だな。」

「少し前から、ちょっと入会規則とか変わってきてるし、もしかしたら特別枠的に扱うかも。」


アツシ、腕を組み

アツシ「けど2000本にも届いてないし、200勝もしていない…普通に考えたら、入会はムリですよね。」


しげ、頬に右手を当て考え込む

しげ 「やっぱり、そうなるよね。」


そう言ったあと、しげ、一度言葉を区切って

しげ 「スポーツにしろ何にしろ、評価ってのは、縦と横がある気がする。」


しげ以外の3人、一斉に眉をしかめ、ヒソヒソ話を始める

キン 「どうするよ?」

アツシ「ええ、始まりましたね。」

武田 「とりあえず、好きにさせるしかないだろう。」


しげ、一人で突っ走りだす

しげ 「とにかく『何か1つのことで、抜群の成績を修める』、これは分かりやすいよね?」


代表する形で、キンが答える

キン 「お、おう。」

   「記録が、縦に伸びていくイメージだな。」


しげ、何度も首を上下に振って

しげ 「それそれ!」

   「んで、横の方だけど、これは野球で説明するの難しいなぁ~。」


しげ、宙を見上げながら

しげ 「えっと、陸上で例えてみるか。」

   「縦の評価、いうなれば名球会的評価って、陸上で言えば『9.6秒台!ボルトすごいね』とか、そういうやつになると思う。」

   

しげ 「んで、横の評価は、これね。」

しげ、そう言うと、砲丸投げの真似をして叫ぶ

しげ 「オギャー!」


キン、呆気にとられたあと

キン 「まあ、大体分かってはいたが。」

   「それ、俺ら世代を過ぎたら分からんネタでしょうが。」


キン、チラリとアツシの方を見ると、アツシの目が点になっている

武田、苦笑してからアツシに説明する

武田 「1990年代に『デカスロン』というマンガがあったの。」

   「それの主人公が、投擲する時とかにあんな声をあげてたわけよ。」


アツシ、ほーっという口の動きをして

アツシ「デカスロン…十種競技ですか。」


キン、武田、完全に理解したという顔で

キン 「デカスロンの勝者は、キング・オブ・アスリートって呼ばれているよな。」

武田 「跳躍に投擲、短距離に1500メートル走、全部を高いレベルに維持できるのは凄いことだし、その評価の仕方は、確かに横の評価だわ。」


しげ、親指を立てて

しげ 「そういうことなんだよね。」

   「あと、同じような例でいくと、キング・オブ・スキーってのもある。」


アツシ、ポンッと手を合わせ

アツシ「ノルディック複合!」

   「それも、やっぱり横の評価になりますよね。」


キン、考え込む感じで

キン 「なんせ、キングだもんな~。」

   「要はスペシャリストとジェネラリスト、どっちをどのように評価するかって話なんだけど…。」


しげ、テヘペロ的に舌を出して

しげ 「あ、ばれたか。」

   「単純にそれを縦とか横とか言ってみただけなんだよね。」


武田、笑い声をたてる

それから、皆を見渡して

武田 「それぐらいは、分かるさ。」

   「しかし、何となくだが、スペシャリストよりジェネラリストの方が評価されにくい気がしないか?」


キン、武田に視線を合わせ

キン 「さっきウサイン・ボルトのことがチラリと出たが、人間の限界はどこなのか、どこまで記録は伸ばせるのかって、やっぱ気になるわ。」


キン、一旦言葉を切る

それから、一拍、間を空けたあと

キン 「まあ、ジェネラリストの幅は狭いが、野球でも『トリプルスリー、3割30本塁打30盗塁すげー』とか、一応の評価もあるし。一概には言えんだろ。」


アツシ、首を傾げて

アツシ「けど、トリプルスリーは表彰もないですしねぇ。」

   「もう少し、色々できる人って、評価されてもいいんじゃないかな。」


武田、難しい顔をしながら

武田 「アメリカだったら、違うスポーツのプロリーグで活躍する人も、多くはないけど居たりするけどね。」

   「日本でそんなことしたら、逆に非難されかねんし。はっきり言って、環境的に不可能だわ。」


アツシ、武田の考えにプラスする形で

アツシ「環境もですが…。先程から例にあがってる十種競技の、競技人口って、そんなに多くないですよね?」

   「正直、野球やサッカーみたいにメジャーじゃないのもありますが、能力的にできる人が少ないから、とも言えませんか?」

   「ほんとは、スポーツ界のジェネラリストって、凄い人達なのに。正当に評価されてないってのは、あると思います。」


キン、首肯して

キン 「子供の習い事、下手の横好きレベルで良ければ、いくらでも居るだろうが、高いレベルとなるとキツいやね。」


発言後、キン、少し思いに耽る

それから、皆を見渡して

キン 「話を野球に戻そう。」

   「完全な二刀流は難しいとして、もうちょっとライトな二刀流ってないものかな。」


武田、怪訝気に

武田 「ライトって何だ?ライトって」


キン、武田の方に身体を向け

キン 「まあ、何て言うか、もう少し敷居の低い、多少力が無くても実現可能なってことだよ。」


ここで、全員が斜め上に顔を向け考え込む

しげ、パッと明るい表情になり

しげ 「思い付いた!こんなのは、どうだろう。」


皆の注目を集める中、しげ、得意になって

しげ 「代走専門の選手が敗戦処理のピッチャーもやるの」


武田、地蔵のような目になる

武田 「また、地味な取り合わせを。」


しげ、嬉しそうに

しげ 「地味かもしれんが、代走と守備固め中心の選手って、マニアックに人気あるじゃん。」

   「そんな人がピッチャーもやれば、かなり話題になるよ。」


キン、呆れて

キン 「それにしたって、敗戦処理かよ。」


しげ、満面の笑みを浮かべ

しげ 「それには、理由があるの。」

   「代走専門だから、基本終盤まで温存されるよね?」


アツシ、ピンッ来た様子になり

アツシ「その選手が温存されたまま終盤になる。けど、その時には大差がついてしまい、代走なんか出すシチュエーションではなくなった。」


キンも理解したようで

キン 「そんな場面では、ピッチャーになることで、主力の中継ぎを使わずに済むってことだな。」


しげ、首を縦に大きく振る


武田、ん?と言うと

武田 「それって、メジャーリーグで野手がマウンドに立つのと同じじゃないか?」

   「確か、イチローも、そんな感じで投げただろ?」


しげ、今度は小さく首を振って

しげ 「基本は同じ。」

   「ただ、最初から投げることを想定してるっていうなら、だいぶ違ってくるんじゃないかな。」


アツシ、少し前のめりになり

アツシ「あ!それだったら。いっそ、ポジションの登録を、ピッチャーにしてしまうというのはどうでしょう。」


キン、納得した表情をしたあと、腕を組む

キン 「パ・リーグとか、指名打者制のとこだと、結構面白いかもな。」

   「打撃練習はほとんどしなくていいし。完全な二刀流よりは、まだ負担は少なくて済むだろう。」


武田、割りと本気で

武田 「どうだ、この設定を使って物語を作ってみないか?かなりキャラは立ってるし。人気出れば、こっちで金儲けできるぞ。」


武田 「だから、宗教とかからは離れて…。」

キン、右手を左右に振りながら、武田の言葉を遮り

キン 「ムリムリ。」

   「俺ら、キャラ設定は盛れるけど、肝心なエピソード、ストーリーが作れないだろ?」


しげ、キンに追従し

しげ 「俺ら、武田教の設定作りは楽しんでるけど、武田さんの教祖話は作れてないじゃん。」

   「物語なんて、ムリだって。」


武田、大きく目を見開き

武田 「楽しんでる?!これ、楽しいか?おい!」

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