確実な変化
情報収集と言葉の学習を初めて、5年がたった。
現在四歳になる。前の世界では自分の年を知らなかったので、自分の年が分かるという、当たり前の事が不思議に感じる。
それと、日常で使う言葉は大体話せるようになった。そして、ようやく自分の名前が分かったのだ。
"クロードミール・クロウ・サイファース"
という名前らしい。
長い名前なので家族からは、クロードと呼ばれいる。
家族の構成は、父、母、兄が二人、姉が一人、妹が二人という大家族だ。
(こちらの世界ではこれが普通らしい)
サイファース家はけっこう有名で、かつては三大貴族の一角を担っていたらしいが、先代。
つまりお爺が若くして亡くなり、まだ子供だった父に、そのあとを継ぐのは無理だと判断され、三大貴族から没落。
しかし、サイファース家の名はかなり広まっているので、貴族の地位はとられず、田舎に飛ばされた。
父がサイファース家を継いでから、その時のことでかなり苦労をしたらしい。落ちた名家。落ちぶれた貴族など、さまざまな事を言われたが、そのなかで奮闘。家の立場のために、かなり無理をして頑張ったらしい。
この話を聞いたときは、理解ができなかった。いや、今も理解できない。
家のために、誇りのために頑張るなど、暇なやつがやることだと思っている。
だがその事は言わない。言わない方が自分のためになると分かっているからだ。
(まだだ。まだ時じゃない)
クロードは常に自分に言い聞かせるように呟く。
この世界には、六本の腕を持つ怪物や、4つの目をもつ化け物がわんさかいるらしい。
一度家をでて、見に行った事があるが、いまのままでは勝てないと悟るのには十分だった。
この世界には、モンスターがいる。
それだけで、この世界が、自分達のいた世界とまったく別だと理解できる。
文明が明らかに違うのも驚いた。この世界では、銃がないらしい。それが分かっただけで、一日落ち込んでしまった。
以前の世界では、仕事に必要だった銃の手入れが好きだった。楽しみの一つだった。必要以上の銃を持てなかったので、銃のカタログを見て、満足していた日が懐かしい。
クロードが元の世界との違いに驚いたのは、ハッキリいってこれくらいだった。
それ以外は、まったく気にならなかった。
料理は食べれたらなんでもよかった。
家具も、もともと家がなかったので、家があるだけましだ。
その他の事も、まるで気にならなかった。
正確には、もうひとつ驚いた事がある。
それは魔法と呼ばれるものだ。
呪文ひとつで、火がでたり水がでたり、風がふいたりと、かなり使えるものだった。
この魔法と呼ばれるものは、生活の端々で使え、さらに戦闘にまで、使えるらしい。
戦闘に使えると聞いたときは、珍しく興奮してしまった。
メイドに、やり方を教えて貰い、裏庭でチマチマと練習をしている。
この5年で、住む世界だけでなく、自らの世界も変わった気がする。
魔法を独学で学び、いつか来るであろう家を出る日にむかって努力を続ける。