二つの感情
(なんだ、、、ここ、、?)
それが男が一番始めに思ったことだった。
何やら、暗い場所にいる。
それ以外の状況がまったくわからない。
男はその時から、思考を続ける
(まず、ここはどこだ?俺は路地にいたはず。そういえば傷は?)
傷を確認しようとするが、体が動かない。
首も動かせず、なにもできない。
(どこか狭い場所にいるみたいだ。、、、そういえば妙な圧迫を感じる。しかし、、、眠いな、、、)
そのまま、男の意識はどんどん薄れていく。意識を手放さないと、必死に抵抗を続ける。
薄れゆく意識のなかで、女性と思わしき声が聞こえる。
「だ、、、う、、げ、、に、、う、れて、、ね」
なぜか、この声を聞くと妙に落ち着く。次の瞬間、男は意識を完全に手放してしまった。
はじめて目覚めて(?)から、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
少なくとも、何ヵ月かは経っているだろう。
日に日に、体が大きくなっているのが分かる。
妙な圧迫が強くなってきている事からも、間違いないだろう。
あの声は、ほぼ毎日聞こえる。
男は過去の事を思い返し、必死にこの状況を理解しようとする。しかし、まったく思い当たる節がない。
自らの状態が分からないほど、怖いものは無い。
男はこの状況がまさにそれだと思っているが、心のどこかは安心している。いままでに、一度も経験の無いことだ。
男は、混乱していた。怖いのに安心している。
まったく違う感情を胸に抱きながら、何度も繰り返してきた眠りを今日もする。