冬の虹
通りすがりのその庭は
欠かすことなく薔薇を保っている
情熱を冷ました踊り子たちが眠る
冬の虹にあたためられて
真白い薔薇は曙色になった
鴨の群れ水面を緩める冬温し
夏の頃その場所で甲羅干しをしていた亀たちは
どこで夢見ているのだろうか
今朝を奏でる一羽の鳥の求愛
縹色の空に憂いを残し
やさしい木から飛び去った
小さな橋を渡れば大通り
葡萄酒色の寒天がほろっと解れてしまった
見えない音がいくつも震えている
それは正しいのかわからない
足りないのはわかっている
北風の羽根を休める冬日和
コートを脱ぎ捨てて身を任せたい朗らかな光り
足取りは靴音と咲き誇る
おはようございますの一掃きが
熨斗目花色を奮い立たせ
かなしい道から走りだした