港/夕景
夕陽を見たい、
と呟けば
大きな橋を渡り
港へ運ぶ
あなたが好きです
護岸に並ぶ人々は
藍色の影となり
低く浮かぶ星めがけて
銀色に輝く糸を投げる釣人
どこを旅するのか分からない
高く積み上げられたコンテナ
どこにも旅立つことのないふたり
染まりゆく夜が
まだ柔らかなうちに
あなたの耳朶に寄せる
波の音は帰ってゆくのに
こぶし一つ分
空けた肩を並べて
横切る赤く点滅する飛行機
遠くで回り続ける観覧車
水平線に伸びてゆく緋色
思い出になる前に
あなたとふたり
パノラマになるから
テールランプの連なる
大きな橋
帰りかたを
知らないふりする
あなたが好きです