変えようとしなければ、変わらない
神都
もっとも神に近いと言われる都。
その分、勇者にも近い立ち位置の都と言える。
しかし、今、勇者は前線にいるために逆に勇人に取っては安全と言えなくもないのである。
そしてこの都には勇人が懇意にしている道具屋もある。
もちろん勇者との関係は無い。
ジュンの件があるため、全面的に信頼する事はできないが、他に頼るツテの少ない勇人はここに来るしかないのだ。
「あんた、道具に頼るのはもうやめた方がええぞ」
来て早々、道具屋に言われた言葉に、勇人は驚いた。
「どういう事です?
何か問題でも見つかりましたか」
「いやな、あんたも客じゃ
深くは詮索するまいと思っておったんじゃが、、」
「歯切れが悪いですね」
「わしもこういう道具を作っておる
訳ありの客も多いんじゃが」
魔力の波長を弄るというのは、簡単な事ではない。
とある鉱石の中でも数少ない、純度の高いものだけが波長を乱す事ができる。
と、聞いている。
詳しい事は勇人自身にも分かってはいない、が造るのが非常に難しいということは知っている。
そのため、腕のいい細工師にしか頼みはしない。
この老人は、腕が良い。
また長く生きているだけあり、こちらの事情に必要以上に首を突っ込むような事はしない。
だから勇人ここを頼りに来ているのだ。
「あんた、勇者様から逃げようとしておるんじゃろ」
「な、!
な、何故、そう思いました?」
「ふむ、やはりそうか
あんた、少し強すぎるんじゃよ」
「波がな、随分遠くからでも感じ取れてしまう
並みの人間ではこうはいかん」
「勇者様にも、とっくの昔に捕捉されとるだろうのう
いくら波長を変えようとも、強すぎては意味がないんじゃよ」
「以前来た時には、そんな事は言っていなかった、と思いますが?」
「そりゃあのう、前来た時はそこまでではなかったからじゃ
充分だと思っておった
随分と、成長したようじゃのう」
「どうすればいいでしょうか
強くなれば、居場所がバレるなんて、、、」
「道具に頼るのをやめるんじゃな
技術を学ぶんじゃ」
「技術、、ですか」
「そう、隠密の、力以外で戦う術を手に入れなさい」
「しかし、そんな小手先の技術が通用するような相手じゃない!」
「若いのう
力というものは常に全力をぶつけるものではないんじゃよ
そもそも全力でぶつかったとて、勝てる相手か?」
「それは、、、」
「だからこそ、技術を覚えるんじゃ」
「全力とは、振るうべき時に振るってこそ効果が出るんじゃよ
それに、もう戦い方に拘る必要もなかろうて」
「あんたはもう、英雄にはなれないんじゃから」
「爺さん、お前、どこまで知ってるんだ?
何を、知ってる?
正直に答えろよ?
でないと」
「おぉ、怖いな
それが本気か」
「ほとんど、知っておるよ
言ったじゃろ
訳ありの客も多い、と」
「お前は、俺の敵か?」
「敵でもなく、味方でもないのう」
「くえない爺さんだ、、」
「一度客になったからには面倒を見てやろうって事じゃよ
紹介状を書いてやる
きっと、あんたの力になってくれる」
「、、、一応、受け取っておきます
ありがとう」
「なに、気にするな
一時の縁、じゃ
ほれっ」
「全く、変な爺さんですね」
「って、これ、魔族領じゃないですか!!」
「だから言ったじゃろ、敵でも味方でもない、と
今のお主にとって、魔族は敵か?」
「以前戦っていましたから、そう簡単には割り切れないのですが、、、
確かに、敵ではない、ですね」
「ならええじゃろ
ほれっ、さっさといかんか!
わしもここから逃げなきゃいけないんじゃから」
「逃げる?」
「あんたがさっき怒った時に、おそらく勇者様にもここがバレとる
急いで逃げんと、殺されるわい」
「ぬ、それは申し訳ない事をしましたね」
「気にするなというておろうに
元々、そろそろ潮時だったんじゃ」
「そう、ですか
また、会う機会があればいいですね」
「お互い、生きておればそのうち会うじゃろ」
魔族領、勇人に示された道は、過去に敵対していた場所だった。
「また、騙されているんじゃないか、とも思うんですがね
まぁ、一応、行ってみますか」