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4.追跡者?

 ーーーーそう、彼女こそ科学者であるあた


しですらその名を知る、上級魔法少女=スー


パーアイドルなのである。


 見てそれとわかるのは、マリーネと違い所


属ギルドのものであろう、魔法少女特有の法


衣に身を包んでいたからだ。彼女たちはそれ


を衣装と呼んでいる。


 ジェニーのそれは彼女の少女らしい成長途


中の曲線を、見事にとらえたピンクのワンピ


ース。スカート丈は短く感じるのだが、卑猥


には感じさせない絶妙な長さだ。マントの留


め金は彼女の所属ギルド、シャイニーズの紋


章であろう、太陽がかたどられたブローチで


高級感を漂わせている。膝上までの白いソッ


クスは彼女の純真さを一層引き立てており、


ジュエルがあしらわれたショートブーツはワ


ンピース同様ピンクで揃えられていた。はっ


きり言ってレベルが違いすぎる。さっきマリ


ーネを久しぶりに見たときも、衝撃を受けた


が彼女には悪いが、その比ではなかった。も


ちろんそれは格好だけではない。顔立ちも整


ってはいるものの、人形のような冷たさはな


い。程よい丸みがあり、目鼻立ちはクッキリ


だがクドくもないのだ。髪は綺麗なエメラル


ドグリーンで、これまで見たこともないよう


な形で、かわいくアップにしてある。



 ーーーこれが、上級魔法少女。



 あたしは早めにマリーネと別れた方が良い


と思い、帰ることだけは伝えようと彼女の元


に来たのだ。それなのに、しばしジェニーに


見惚れてしまった。


 だからマリーネの視線が別の人物に注がれ


ていることにも全く気がつかなかったのであ


る。


「あら、そこにいるのはマリーネ・グレヴィールじゃない?」


 声を掛けてきたのは、ジェニーを取り囲ん


でいた数人の魔法少女の内の一人だった。性


格の悪さがその表情からありありと窺え、彼


女にマリーネとあたしの関係性がバレるのは


絶対に避けた方が良いと直感的に感じた。


あたしは何食わぬ顔でその場を離れようと


静かに後ずさりし始めた。


 ーーーしかし、


「そっちの子は見ない顔ね。ファイアーフロートの学院出身じゃないわよね?」


 ギクッ!………マズイか?話しているのを


見られていたのか、魔法学院出身者と決めつ


けられている。


「あ、彼女は…」


 マリーネが何か言いかけたが、あたしはそ


れを遮った。


「あたしはトレドの学院でマリーネと一緒だったから…」


 それだけ言って逃げ去るつもりだったが、


「ふ〜ん、で、何科の出なの?」


 ちっ、余計なことを。あたしは奥歯をギリ


ギリと噛み締めながらーーー


「マリーネと同じ召喚魔法科だよ」


 という言葉をなんとか吐き出した。


「トレドね。あんな田舎町でも、魔法少女事務局あるのかしら?あなたも魔法少女なんでしょ?そんなナリして」


 ピクッと筋が音を立てたが、あたしはマリ


ーネのためにキレるのだけは何とか押さえ込


んだ。


「ううん、あそこにはギルドはないわ、だからあたしは魔法少女にはならないの」


「へえ!魔法学院を出て魔法少女にならないなんて……、まあ無駄な努力はってことかしらね。マリーネ、あんたも写真集出したくらいで調子に乗らないほうが良いわよ。シャイニーズに比べたらあんたの事務局なんて…」


「リュゼ!」


 鋭い眼光で彼女の言葉を制したのは、しか


しマリーネではなかった。


「ジェニーさま?」


 リュゼは身を固めて怯えたようにジェニー


を見た。彼女は喋りすぎたようだ。どうやら


ジェニーはこういうやり取りが好きではない


らしい。


「ごめんなさい、えっと…」


「ルナ」


「お詫びするわ、ルナ。リュゼのことは気に

しないであげて。同期のマリーネに先を越されて、ずいぶんショックを受けてるの。ただの強がりだから、忘れてちょうだい」


「別に気にしてません」


 あたしは一応敬語で返答しておいた。リュ


ゼが彼女をジェニーさまと呼んでいる以上そ


れが無難だろう。余計なトラブルは御免こう


むりたい。


「リュゼ、あなたも謝りなさい」


「いや、いいんです。あたしはもう行きますから」


 今度こそだ。これ以上ここにいれば、絶対


にボロが出るに決まっている。


「じゃあね、マリーネ」


「う、うん。ごめんね、ルナ」


 あたしが魔法科の人間のフリをしたことに


対してか、マリーネは申し訳なさそうに言っ


た。しかしあたしはそんな事を気にしてはい


られないのだ。あのゴミ箱から学本を拾い上


げながら、何もなかったかのように立ち去ら


なければならないからだ。もちろん発明品は


使えない。あたしは一旦遠回りしてからゴミ


箱に戻り、学本を拾い上げてから家路へと向


かった。


「あー、ほんと疲れた。う〜ん、でもアシストブーツを使うのはトレドに入ってからの方がいいかな」


 アシストブーツは父の発明品で、機能を発


動させれば倍以上のスピードで移動できる優


れものである。


「早くトレドに着かないかな」


 あたしはアシストブーツが使えなくなるな


んて思っていなかったのだ。だから馬車代す


ら持っていないのである。


 とにかくトレドに入ってしまえば、とあた


しは足を早めた。


その後ろから小さな黒い影があたしを追っ


てきているとも知らずにーーー。

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