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2.魔法少女《アイドル》は同級生

彼女とはトレドの魔法高等学院で一緒だった


。一昨年までは家が近所だから、一緒に学院


まで通っていた。しかし彼女は卒業目前に、


いきなり何も言わずに引っ越してしまったの


だ。


 当時、学院ではあたしは科学科で彼女は召


喚魔法科だったから、授業が一緒になったこ


とはないのだが、魔法科の中で唯一仲が良か


ったのがこのマリーネなのである。それはそ


うだ、魔法科と科学科は犬猿の仲で、仲良く


なることは本来皆無といっていいのだから。


 というよりも科学科が魔法科に一方的に蔑


まれていたのである。だから彼女が何故あた


しと仲良くしてくれたのか、何故卒業前に急


に引っ越してしまったのか、気にはなってい


た。それなのに、あたしは彼女がマリーネだ


と気がつかなかったのだ。それほどまでに一


年半前の彼女と比べ、洗練されていた。


「ま、まあ元気は元気だけど。そんな事よりあんた、変わりすぎよ。…まあいい方になんだろうけど…」


「あは、でもルナにとっては、ね?」


 まあ、それをいっても仕方が無い。元から


彼女は魔法科だったのだから、いずれは対立


する立場になるのは決まっていた。


「で、あんたはここで何してんのよ?」


「う、うん。ちょっと本屋に、ね」


 マリーネは歯切れも悪くそういった。


「あたしも本屋だよ。だったら一緒に行こうよ、話も聞きたいし」


「え、でも、いいの?」


「うん、あんたは特別。まあ、魔法少女ってのだけはあたしも苦手だけど、おじいちゃん世代よりは魔法に対して悪い感覚ないし」


「そう?でも私もその魔法少女なんだよ?」


 …ぐっ!なるほど、さっきのあたしにとっ


てはってそっちの意味だったか。格好が普通


だから魔法少女はないと思っていたが、じゃ


あ今彼女が着ているのは私服ということか。


 マリーネは不安げにあたしの顔を覗きこん


だ。しかし、自分で魔法少女って、というツ


ッコミは不要だ。なぜなら魔法少女というの


は、魔法解析学会が正式に認めた、一つの職


業なのだ。さらにいえば10代にしか就くこと


ができず、その中でも上級職にあたるのであ


る。まさかあのマリーネが厳しいことで有名


な魔法少女オーディションの審査を通るとは


以外だったが、今の彼女を見ればそれも理解


できる。


「そ、そっか。うん、それでも一回友だちに


なったら、そう簡単には嫌いになれないよ」


 魔法に関わる人種の中でも、あたしが最も


苦手とする魔法少女との再会。嫌な予感は当


たったが、マリーネならまだましだった。だ


からあたしは率直にそういうと、本屋に向か


って歩き出した。するとまだ不安げながらも


、マリーネはあたしの横をしっかりとついて


来た。


 本屋まではまだしばらくある。あたしはさ


っきの疑問を解決したくて、マリーネに正直


に尋ねることにした。


「あたし、あんたに聞きたかったことが2つあるんだ」


「う、うん。」


 あたしは魔法高等学院時代、なぜマリーネ


があたしと仲良くしてくれたのか、そしてな


ぜ卒業を前に引っ越してしまったのか尋ねる


ことにした。


 すると彼女は懐かしい思い出と嫌な記憶が


同時に蘇ったのだろう、複雑な表情をあたし


に向けた。


「それはね…」


 彼女の話はあたしの想像した通りで、話が


進むたびにどん底に叩きつけられたかのよう


な罪悪感があたしを襲った。


 マリーネがあたしと仲良くしたのは、たま


たま家が近くて学校も同じだったから。話し


てみると気が合うし、通学が楽しかったから


だという。まあ、たしかにこの年代の女子に


これ以上の理由など要らないだろう。魔法と


科学のしがらみなど、さして障害にはならな


かった。そう、魔法科の生徒にこの事実が広


まるまではーーーー。


 魔法科と科学科は学舎がかなり離れており


、だいぶ手前でそれぞれが別の道を行く為、


あたし達が仲良くしていることは最初は誰も


気が付いていなかったのだ。だから、マリー


ネはその行動が自分にどんな災厄をもたらす


のか、最終学年の半ばまでは気付けなかった



 そしていよいよあと半年で卒業という頃、


遂にその時が来てしまったのである。


 彼女が卒業前に引っ越した理由ーーー壮絶ないじめの日々が…。



 そこまで聞くと、あたしはいたたまれなく


なり彼女の話を遮るように言った。


「ゴメン、マリーネ。あたしのせいで大変な目に合わせて。予想はしてたんだけど、そうじゃなければいいのにって、あたし…」


 さっきまでの強気なあたしはすっかり影を


潜めていた。


「あ、いいんだよ、ルナ。気にしないで。そのおかげでウインドミルの次に大きいあのファイアフロートの学院に転入できたし、魔法少女にもなれたんだから」


 今となってはいい思い出、逆に感謝したい


くらい、とマリーネは微笑んだ。いやいや、


あたしの方が感謝したいよ。本当に本心では


ないだろうが、その言葉にあたしの方が救わ


れたのだ。


 これはいつかかならす恩返しをしなければ


と、あたしはかたく心に誓った。そしてその


機会は思いがけず、すぐにやってきたのであ


る。

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