12.真相
「スキャンダル⁈ちょっと、それ何なの、マリーネ⁉︎…ていうか、あんたマリーネのこと知ってんの⁈」
硬直した二人にあたしはわざと当たり散らすように喚いた。
「ハッ⁈」
「え?」
案の定その声で二人とも我に返る。二人だけの世界に入られた挙句、そこで硬直されると疎外感が半端じゃないのだ。
スキャンダルーーあたしはその言葉を始めて聞くが、正直嫌な予感しかしなかった。
「えっと、つまりスキャンダルっていうのは、私たち魔法少女がファンを裏切るような行為を言うの」
「そして、それをこういう風にかわら版の記事にするのをスクープっていうんだ。魔法少女はライバルが多いから珍しいことじゃないけどね」
「じ、じゃあ、あたしたちが仲良くしていたのが、ファンへの裏切り行為だってこと?」
かわら版売りの青年はあたしのその言葉に目を丸くした。
「え、あんたがルナ・シュタインなのか?ならやっぱり彼女は本物のマリーネ・グレヴィール⁈」
なるほど、これがファンというやつか。
「これがリュゼがしたことなの?あたしとマリーネが友達だってことをかわら版でみんなに知らせただけ?」
あたしはこれがどの程度、魔法少女に影響するのか、まるで分からなかった。
「な、何言ってんだあんた!これがマリーネにとってどれだけ今後の仕事に響くのか分からないのか⁈」
「だって、女の子同士だよ⁈ただの友達じゃないか。そりゃ科学と魔法は因縁があるけど、クビになるほどファンがマリーネを嫌うものかな?」
あたしの言葉にしかし青年は首をふった。
「甘いね、ルナ。キミは科学界が魔法界にどれほど下に見られているか分かってない。魔法少女のファンには学院の魔法科の院生も沢山いるんだ。いわゆる憧れってやつさ。それが科学界なんかと付き合いがあるなんて知れたら、まあ院生のファンはがっかりするだろうね」
な、なるほど、そういうことか。しかしファンがいなくなると何が起きるというのだ。結局のところ魔法のレベルが高くて、無血戦争に勝てれば何も問題ないではないか。
「ファンがいないと、無血戦争での勝利がとても難しくなるの」
あたしの疑問を察したのか、マリーネが説明を始めた。つまりはこういうことだった。
無血戦争は数千から数万人収容出来る闘技場で行なわれるが、戦争をショービジネスにまで昇華させたものだから当然観客がいることになる。それが無血戦争を戦い抜く魔法少女のファンたちということだ。そしてそのファンが座る席に彼らが必要な秘密が隠されているのだと。
「闘技場の席にはファンの想いを力に変える魔晶石が埋め込まれてるの。それを魔法少女は自分のファンの想いの分だけ、戦いに使用することが許されているのよ」
だからファンの数が魔法少女にとっては生命線ともいえるの、とそう言ったマリーネの顔は明らかに血の気が引き青白くなっていた。
「で、でもこれで事務局をいきなりクビになるなんて、そんなことある?」
あたしからしてみれば致命的なスキャンダルと言うほどではないように思う。もしそうだとすればあたしたち科学者の存在って、そこまで厄介なものなのか。いや、そんなことはないはずだ。
「戦力にならないと判断されれば、可能性はあると思うな。俺はマリーネのファンだったのに、あんたのせいで…」
あ、あぶない。これ以上マリーネのファンである彼の前に、あたしが居続けるのは危険すぎる。
「と、とにかく、ギルドに行ってみようよ。ここでこうしていても、推測しか出来ないしさ。それからあんた、言っても無駄だとは思うけど、それ配るのやめらんないよね?」
タダで配っているわけではないはずだから、無理は承知だがあたしは一応確認しておいた。
「そりゃ俺も出来ればそうしたいよ。でも俺だけが配るのやめたって意味がないからね。何十、何百という配布係りが大陸中に散らばって配布してるんだから」
確かにそれはそうだ。であればもうここに留まっている意味はない。あたしはマリーネのてを引いてメルキュールを目指した。
「ここね?」
「う、うん」
あたしもマリーネも同時にゴクリ、とツバをのみ目の前の建物を見つめた。マリーネにとっては見慣れた建物だろうが、あたしには圧倒的なの存在感を放っていた。流石に第二都市ファイアーフロート一のギルドだけはある。
「いよいよね」
あたしはマリーネを促し軽く背を押した。それは彼女の足がすくんでいたからだ。
「大丈夫?」
「う、うん。まだどうなってるか分からないものね」
「そうだよ、マリーネほどの魔法少女を簡単に手放すはずないよ」
あたしは実際彼女の魔法レベルを知らないが、アルビィナの本屋の店主はマリーネを高く評価していた。見た目プラス魔法レベルも新人ではリードしているはずだ。
「ど、どうかな。わたしなんてまだデビューもしてないただの新人だよ」
「え?デ、デビューって?」
「えっと、まだ無血戦争に参戦したことのない魔法少女が、初めて無血戦争に参戦することをデビューするっていうの」
「え、え、え?な、なに?じゃあマリーネはまだ実戦経験ゼロ?実績なし?」
あたしの言葉にマリーネは無言で頷くのだった。




