潜空艦艦隊提督エヴェリーン(参)
サザビーの武器市場を見に来た主人公とリメルダさん。そこへ、また、あの人が顔を出します。あれ?別れたんじゃないの?
ここは機械族の国タウルンの首都サザビーの武器見本市。大きなドーム型の建物に所狭しと業者のブースが解説され、最新兵器の売り込みや現兵器のセール、中古兵器の売買の商談が行われ大盛況であった。
平八とリメルダは、ここに顔を出していた。クロービス行きの船がドラゴン出没の影響で一週間後になってしまったこともあるし、エヴェリーンにあんなことを言われて、二人とも変に意識してしまい、泊まるホテルの部屋は別々だし(当たり前だ)、一緒に行動はするが、会話もなんだかぎこちない。
武器見本市をぶらぶらするカップルもおかしなものだ。リメルダは何か興味をもった物があるらしく、少し離れたブースで説明を聞いていた。平八は行き交う人をボーッと眺めていると、
「おっ!また会ったな」
以前聞いたことのある声というより、ごく最近に聞いた声だ。タウルンの代表、エヴェリーンである。
(確か、次に会うのは戦場だって…言ったよね?この人)
かっこいい別れ方をしたのに、当のエヴェリーンは忘れてしまったらしく、しかもTシャツに作業用のズボンというラフな格好。お付きの部下のおっさん達も派手な柄のシャツにサングラスとほぼチンピラとヤンキー娘の団体さんだ。この団体が人類の未来を担うパンティオン・ジャッジのセミファイナリストだとは、誰も思わないだろう。
「エヴェリーン少将、なぜこんなところに…」
平八はそう尋ねた。魔法族であるメイフィアの住人とは違い、タウルンの住人は魔力を持たないという。自分はここに来るまでは普通の人間であり、どちらかといえば親近感がわくのである。よく見れば、周りの人間は携帯電話らしきもので商談したり、写真撮影をしていたり、計算機を叩いて見積もりを出している。どこか懐かしいのだ。
「なぜって?そりゃ、補給さ…アタシの艦隊は国軍とは違うからさ。パンティオン・ジャッジで勝ってからは、国軍のお偉いさんだとか、政府の役人がわんさかやって来て、やれ、戦列艦中心の艦隊編成にしろとか、うるさくてな。戦列艦中心の艦隊?ははっ…笑わせるなっていうの?アタシの潜空艦に歯が立たなかったことを忘れてやがる。金は出してもらうが口は出すなっていうの!とうことで、兵器の買い足し。潜空艦の出物はないかな?」
「はあ、そんなもんですか?」
「あんたたちは何?兵器の買い付けに来たの?その割にはボーッと見てるだけね」
確かに買いたいものがあってきたわけではない。
「そんなことで、マリー公女の艦隊に勝てるのか?Gクラスを新戦法で討伐したってもっぱらの噂だぞ。旗艦のコーデリアⅢ世というのが防御力がやたら高くて、戦列艦の主砲でも撃ち抜けないというらしい。チートなお姫様だな」
「エヴェリーンなら、その第1魔法艦隊にどう戦うのさ?」
「おや、いきなりだね。そんなこと聞かれたからって、アタシが話すと思うかい?」
「いや、すいません」
「まあ、いいさ。アタシにはアタシなりの戦術があるのさ。ちょっと、ヒントをやろう。どんなに固い鎧を着ていても、中身は王女様の柔肌さ。エロい意味じゃないぞ」
「中身は柔肌…」
「あと、お前らの必殺技…なんだっけ、そうそう、デストリガー。そんなのに頼っていると、足元救われるぞ。特にドラゴンの戦いには…なんてね。魔法族の兵器は少々うらやましくてね。デストリガーなんてチート過ぎるだろ!普通。アタシたちにもチート兵器はあるけど、使えないんだなこれが…」
「使えないって?」
「ああ。なんだか原理は分からないけれど、一発で百万人が住む都市を一瞬で破壊できるミサイルもある。それなら、例え、Gクラスでも一撃だろうなあ」
「そんな武器があれば使えばいいじゃないか。こんな戦いをする必要なんかなくなる」
「話を聞いてないね。使えないんだよ」
「使えない?」(あっ…)と平八は思った。
(そのミサイルって、核兵器みたいなものか…)
「使えば、ドラゴンは倒せるだろうよ。でも、我々の住処も汚染される。お前は地上を見ただろう。人が住めなくなった大地を。あれはドラゴンがやったことになっているが、アタシは違うと思うな。昔の人間が恐怖に駆られて最終兵器を使ってしまった結果じゃないかと思うんだ」
「・・・・・・・・・」
「だから、アタシはここで戦うんだ」
そう言って、自分の頭をツンツンした。戦術で勝つということか…。
「参考になりました。エヴェリーン少将」
「少将じゃない、員数外少将。次からは名前だけね」
「お嬢、約束の時間が…例の機雷、大量に仕入れた商人が待ってます」
「しーっ!だバカもの」
エヴェリーンが坊主頭の黒サングラスを叱りつける。もしかしたら敵になるかもしれない平八に聞かせる話ではなさそうだ。
平八が気を利かせて立ち去ろうとしたが、当のエヴェリーンが再度、呼び止めた。
「なあ、あんた。決勝戦で負けたら、アタシのところに来ないか?アタシのところじゃ、あんたの魔力は役に立たないけど」
「役に立たないのに誘うのですか?」
「このタウルンは、あんたのように異世界から召喚された人間や知らぬ間にここに来てしまった人間が作った国だ。あんたにふさわしい世界はこの機械でできた場所じゃないかなと思っただけさ」
エヴェリーンのいうことは、平八は理解できた。街の様子、人々の様子など元の世界とそっくりであり、どこか懐かしいのはそのせいだろう。もちろん、平八のいた日本という国には、目の前のような武器市場などはないのだが。(まるでパキ○タンとかアフ○ニ○タン)
「ありがたい誘いですが…今はその気にはなりません」
「あの貴族女か?」
「いや、リメルダじゃなくて…」
「なんだ、あの美人じゃないのか。他の女を選ぶとはやるなお前。まあ、いいや。健闘を祈ってやるよ。あの完璧なお姫様に一泡吹かせてくれよ」
そう言って、エヴェリーンは右手をひらひらさせて去っていた。次に会うのは今度こそ、パンティオン・ジャッジのセミファイナルだろう。平八もそっと右手を上げて応えた。
(また会わないだろうなあ?)
機雷って気になる?エヴェリーンさんは、マリー王女と戦うのか平八たちと戦うのか、それとも他の種族(妖精族・霊族)と戦うのか?選択肢多いのにもう準備ですか??




