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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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パンティオン・ジャッジ前夜祭(四)

 主人公が惜しむことなく振ったリメルダ公爵令嬢は、どうやらツンデレの属性があったようです。振られてこの娘、何とも思ってなかった主人こ惹かれ始めます。フィンちゃんから結婚OKをもらっているのに、波乱万丈な人生が待っている??

「姫さま、姫さま…交渉はうまくいきましたか?」


 第2公女リメルダは、パーティ会場を足早に去ると、あてがわれた部屋に閉じこもった。侍従である妖精族、ケットシーのナームが心配そうにリメルダに聞く。この妖精族、ケットシーは猫の姿をした生き物で、妖精国家フランフランに多く生息する種族である。魔力あたる妖力が強い種族であり、その力を買われてこの世界のいたるところで活躍していた。


「交渉は決裂よ!ナーム、あの異世界の男、生意気にもわたしの差し出す手を払ったのよ!屈辱的だわ!アイツめ、このわたしを拒否するなんてありえないわ。ありえない!」


「フフフ…姫さま、姫さまにしてはずいぶんご執着のようですね!」


「う、うるさい!ナームがあの男を艦長に引き込って言うから、不愉快な思いをしたじゃないの!わたしは別に艦長はあなたでも良かったのに」


「彼に振られたならわたしが務めますよ。でも、姫さまとあの異世界の男。何だか、わたしの占いによると浅からぬ縁があるみたいですよ」


そうケットシーのナームはくるりと宙返りをした。ケットシーの占いのダンスだ。


「いいよ。その占い、当たらないから!」

「はいはい。姫様はパーティ会場には戻らないのですか?」

「もう疲れたから寝る!」


「お風呂も入らず?」

「このままじゃ、気持ち悪いからやっぱり入るわ」


「はい。準備はできています。姫さま」


 ナームは召使いを呼ぶと仕えている主君のドレスを脱がせ、念入りに体をマッサージするように命じた。


(姫さま、ケットシーの占いは、特にわたしの占いは当たるんです。あの異世界の男、姫さまの運命の人になるって出てます)


 そう心の中でナームはそうつぶやいていた。首からかけたペンダントを触る。幼馴染で婚約者だった男の子からもらったペンダントだ。その幼馴染も国を追われて今は行方不明になっている。


 リメルダもリメルダで、湯船に浸かりながらさっきの出来事を思い出していた。


(わたしを拒絶するなんて…初めて…あんなにはっきりとわたしにモノを言うなんて。あんな男、初めて…)



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「フィンの第5魔法艦隊はなんの期待もされていない。僕が異世界からきた人間ということがせいぜいプラス要因だけのようだ」


 いつもの安宿に帰って平八は、堅苦しい儀式用の軍服の上着を脱いだ。トラ吉は指輪から実体化していて、もうベッドの下の専用の寝床にうずくまっている。


「旦那~そりゃ、誰が見てもかませ犬以下でしょ。総艦数4隻。旗艦は巡洋艦って、火力だけでも他の公女方に比べると半分以下ですからね。いくら魔法力が強くても触媒たる軍艦がそれじゃ、旦那やフィン提督の能力が生かせないと考えるのが普通でしょ」


「そこだ!そこだよ。なあトラ吉。この国の艦隊戦は派手な魔法攻撃の応酬なんだろ?」


「まあ、そうですけど。強力な魔力を魔法攻撃に変えて相手の船を攻撃する。そして、防御も魔法障壁がまず防ぎ、それが突破されると物理的耐久力で防ぐという流れです」


「その戦い方、昔から決まっているのか?」

「ここ1000年は変わっていないと思うなあ。たぶん。パンティオン・ジャッジが始まった1000年前。「ゴリアテの悲劇」があってからって言われているよ。」


 ゴリアテの悲劇というのは、1000年前のドラゴン攻撃でのこの世界の人間の5分の4が死に絶え、地上世界が死の世界に変わった出来事をいうらしい。天空の浮遊する大地に逃れた人間が現在の国家をつくったらしいが。


「単なる撃ち合いだと負けるけれど、そうじゃない戦いに持ち込んだから勝機はないだろうか?パンティオン・ジャッジがきたるドラゴンとの戦いにあるなら、新しい戦い方があってもいいだろう?」


「旦那、いいこと言うね。異世界から来た人間は発想が違う。戦い方を変えるって…。旦那ならやれるかもしれないね。まずは、どうやって戦うかじっくり考えることだな。それより、旦那さっきのプロポーズやるねえ。いきなり告白とは驚いたぜ!」


「いや、あれはちょっとした間違いで…」

「それでもOKもらったんだろ?」


「そうなんだ!僕はなんて幸せなんだ!」

「でも、そのフィアンセにキスどころか触ってもいけないんだろう?」


「まあ、そうだけどね。でも、手ならいいんだって!フィンちゃんの手に触っちゃった」


「はあ~。旦那は23にして小学生のような思考回路ですな。今時、中学生でも手握っただけで満足しないというのに」


「うるさい!僕はそれでも満足なんだ!」

「そんなにガマンしても結婚は絵に描いたモチ。第5魔法艦隊が勝つ確率は限りなくゼロ」


トラ吉はあくびをして寝始めた。平八は明かりを消して目を閉じた。


(確率ゼロだって?いや、僕はありとあらゆる手を使って勝つ!勝ってフィンちゃんと結婚するんだ。それがこの世界での僕の使命だ)


 本当はこの世界、トリスタンを守ると言いたいところだが、自分のようなちっぽけな人間には荷が重すぎると思ったのだ。平八としては心のよりどころであるフィンが第一だと強く思ったのだった。


平八メモ

その15 パンティオン・ジャッジで敗れた公女は勝者のものとなる

その16 旗艦艦長は公女の生涯のパートナーになる男が務めることがある。(そういう決まりがあるわけではないが)

その17 パンティオン・ジャッジは、第5魔法艦隊は第4魔法艦隊と戦い、勝つと第3魔法艦隊への挑戦ができるというトーナメント方式である。

その18 ゴリアテの悲劇とは、1000年前にトリスタンの民がドラゴンによって滅びかけた出来事をいう。

その19 ゴリアテの悲劇で地上は人の住めない大地になり、海は酸の海に変わったと言われている。


さあ、いよいよ、戦いが始まる?平八は見事、艦隊戦(パンティオン・ジャッジ)を制して、フィンちゃんをこの世界の救世主にすることができるのか?

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