少し非日常な二日
二人の人間と一匹の獣を載せた馬車を追う人影がある
その人影は乗り物を使っていない筈なのに馬車に引き離される事無く追っている
その人影は何を狙っているのか、時折呟く言葉からも推測出来るが
/^ヾ/^ヾ
「尻尾が痛い、クッション代わりにするんじゃなかった」
『キュゥ?』
「大丈夫だよ、別にハクが重いって事じゃ無いから」
ノエンに拉致されてから数刻、そろそろ日が沈み始めている、なのに一向に町とかが見えてこない。もしかして今日は野宿?最近暖かくなってきたとは言え、まだまだ寒いし、ちょっとやだなー。
「よし、今日は野宿だ」
「はい、予感的中〜」
『キキキュウ〜』
うん?
「今のって「的中〜」って言ったの?」
『キュウ』
「可愛いなー、このこの」
『キュウ〜』
「ええと……野宿で良いんだよな?」
ノエンがわざわざ訊いてくる、他にどうしろと?
「どうせ野宿以外に選択肢無いんだよね?昼からいきなり出発したし、計画性も無いと思ってるけど」
「あ、いや、それはその……何と言うか」
「良いよ良いよ気にしてないし、ちょおっと尻尾が疲れたぐらいだし」
『キュウ、キュウ』
どうやらハクも味方してくれる様だ。
「ああ、ハクも急な旅で疲れちゃったんだね」
「悪かった、いきなり旅に連れ出して」
どうやら謝罪の必要性が分かったみたいだ。
「なら事情を説明してよ、明らかに今日のノエンはおかしかった」
「う、海が見たかった、から?」
「……」
『……』
怪しい、怪しすぎる。ノエンは嘘を吐いている、どうやって白状させたものか。
「じゃあ俺、晩飯用意してくるから」
「え?ちょっと待……もう見えなくなった」
って、薄暗くなってきたのに森に入るなんて……案外無事かも、たまに血塗れで帰って来るぐらいだし。
『キュウ』
「ノエンなら多分平気だって、荒事にも慣れてるし」
前に食堂で酔っ払い達が暴れた時もイブルさんと二人で鎮圧してたし。
「まあ、そんな事を気にするより、野宿と言えば焚き火だよね。えと薪〜薪〜」
よし、準備完了。後は火を着けるだけ、確か板状の木に木の棒を擦りつけるんだっけ?物は試しに。
「あああぁ〜……手が痛い、しかも火、点かないし」
『キュー』
「ええ!?火を吹いた!?」
『キュウ?』
「あ、そうか、幼竜とは言え竜だもんね。えらいえらい」
『キュウ〜』
ハクのお陰で火も点いたし、後はノエンを待つだけだね。
パチッパキッ
「何だか焚き火を見てるとほっとするよねー、あったかいし」
そうやってのんびりしているとノエンが戻って来た。何か大きい物を引きずってるみたいだけど。
「お、待たせたな、これが晩飯だ」
「これって、猪?ノエンがとってきたの?素手で?」
「いや、ナイフは持ってたが?まあ、それは後だ、血抜きは済ませてあるから切って焼くぞ、久々の肉だ」
「そうだね、肉だからね、その他は些末な問題で気にする必要は無いよ」
『キュウ』
ハクも急かしてる。もうすっかり金欠生活に慣れちゃってる。ごめんよ、こんな貧乏な所に拾っちゃって、恨むならノエンを恨んで。
ハフハフガブ、ガジガジゴックン
美味しく頂きました。
猪肉を食べて満腹(かなり食べたけどそれでも余ったぐらい大きい猪だった)になったので、そのまま馬車で横になって、寝る。
ハクを抱いて毛布を被れば寒さは大丈夫、床が少し固いけど満腹時の眠気には勝てない、食べてすぐ寝るのは健康に良いしね。ノエンは隣に居るよ。
(ちょっと寒いかも、ノエンもだろうから少し寄ってあげよ)。
「しまった、準備してなかったから寒い!」
今更ですが、ユノリの服装は梵天みたいなのが付いた着物っぽいのをイメージしてます
ノエンは今で言うジーンズとシャツだけ、みたいな