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日常の二日

「ん、うぅん……」


 朝、陽が昇って間もない時間帯。同居して二年ぐらいになる少女を起こさないように、俺は支度を終えある場所に向かう。


「来たか、薬は?」


 以前会った貴族の使者を見つける、別に怪しい薬ではないがおおっぴらには出来ないのも事実か。


「少し予定より少ないが、どれぐらいになる?」


 持って来ていた袋に入れておいた薬を見せる、材料が足りなかったのだからどうしても無理だった。


「……別にこれ位ならいいだろう、ハゲの薬ならそこまで必要という訳でもないしな」

「ハゲの薬、ね。人が居ないのに隠語使うのは面倒臭いな」

「隠語を使うのはそちらの都合でしょう、そう言えばかれこれ二年でしたか、あの子があなたに連れられて来たのは」


 時が経つのは早いものですね〜、といった風に話す使者、あいつを連れて来てもう二年も経ったのか。


「おっと。早く戻らねばいけないので、代金です」


 それでは、と薬代を手渡して去っていく。俺も早く帰らないとな。



/^ヾ /^ヾ



 朝、陽がそこそこに昇った頃。洗濯物の入った籠を持って森にある川に向かう少女が居た。



「洗濯機があればボタン押すだけなんだけどねー、あ、洗剤が無いか」


 寝坊してしまった……いつもはもう少し早く洗濯しに行くのだ、まあ乾くけど。


「町の外側ってのはこういう時に便利だよね」


 川の上流だとそうはいかないけどわざわざ水を汲む必要が無いから今は川派、もう少し筋肉があれば井戸が使えるけど。

 到着したので籠を下ろす、川に落とさないように気をつけよう。


「どんぶらこーどんぶらこー、ここで流れて来たら町の人の捨て子になるじゃん!」


 なら上流で流れて来たら山の人の子供? 山に住むと言ったら仙人、拾った家は元武家(?)婆さんはドーピングのプロフェッサー、三匹の動物は魔獣。


「本当は略奪物語なんだけどね。うん、きれいになった」


 ちゃんと洗濯物がきれいになった、ここの生水は飲んでも大丈夫だから、生活排水とか気にしない。あとは庭で干すだけ。

 帰りは森の木に成ってる木の実を採っていく、甘酸っぱい恋の味。冗談、甘味は貴重なのだ。



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 庭で洗濯物を干してからノエンを起こしに行く、いつもこの時間帯まで寝ている良い身分だ。養ってもらってる立場で言える事ではないけど。


「起きろー……起きろー!……起きろー!!」


 揺すっても大声で呼んでも起きないので耳の穴に小指を差し込む。


「えい」


 ビク、と動いて目を覚ます。物凄く不快そうな顔をして睨んできた、照れるなあ。


「……耳に指入れるなってこれで何回目だ?」

「数えてないから分かんない、さあ起きた起きた」


 毛布を引っぺがして二度寝を防ぐ、奪いとられたら無理だけど。


「……朝飯は?」


 渋々起きた、これ位ならすぐに機嫌も直るから大丈夫。まあ少女にキレるのも大人気ないだろうし。


「干し肉と燻製肉どっちが良い?」

「それ以外で」

「無いね」


 ……二人の間に沈黙が。いつ生活費が入るかも分からないのに余計な物は買えない。栄養?なにそれ、まずは金だよ。


「実は昨日金が手に入ってたんだ、食べに行こう」


 沈黙は破れました、でもそれは言っといて欲しかった。


「行くけどさ……どれぐらい入ったの?」

「見て驚け、一ヶ月は働かなくてもいいぞ」


 ノエンが渡してきた袋には金貨一枚と銀貨数枚が入っていた。説明しておくと日本円で銅貨一枚十円、銀貨一枚千円、金貨一枚で十万円、に近い。節約すれば一ヶ月と言わずに三ヶ月は過ごせる。


「これだけあれば肉も……ジュル」

「スグ肉じゃなくてシウ肉が食えるな」


 節約すれば、の話。




「あー満腹、食べ過ぎてお腹痛い、胃薬ちょーだい」

「ほれ」

「あんがと、苦い……」


 町の食堂で食えるだけ食った、でも胃薬の苦さでスッキリしない、口直しに100%果汁ジュースを頼む。


「この一杯の為に耐えてる!貧乏生活を」

「はっはっは、もうちょい稼いでやれよノエン」


 ジュースを一気飲みして決めゼリフを言ったときに喋ったのは食堂の料理長兼店主イブル、僕が来る前からノエンは常連だったので大分仲がいい。


「だから稼いで食べに来てやったんだよ、もう二つ」

「あいよ、稼いですぐ大量に使うから貧乏なんだよ。はいっと」


 ノエンと僕の方にジュースが一つづつ置かれる、今更だけど座っているのはカウンター席、のような場所。今度はちびちび飲む、お腹一杯だし。


「分かってるんだがなあ」

「節約すれば遥かにもつんですけどね、我慢してお金が入るとつい贅沢してしまうんですよ」

「うちで贅沢とは……お土産ぐらいならつけてやるよ」

「わーい、ありがてうござーまーす」


 ふら〜、あれ?世界が傾いてるー、あはははー。


「危ないっ、これは……酔ってる?イブル何を飲ませた」

「いや、ちょーっと酒を混ぜただけなんだが、酒にここまで弱いとは思わなくてな、すまん」

「しゃけぇ?こりぇはじゅーすだよ、だかりゃよっれらいよー?」

「完全に出来上がってるな」

「多分胃薬のせいだな消化吸収を促すからなあれは」

「あははー、なんれろえんがふたりいるのー」

「イブル、すまんが帰るぞ。ほら立てるか?」

「たへるにひまってるらろー、あ、ありぇ?」

「背負うか、金は置いてくぞ」

「ああ、悪かったな」


 じわぁ……。





「あうぅ、頭痛いぃ、気持ち悪いぃ」


 気がついたら薬屋の居間に戻っていて寝込んでいる、不思議とはいていない。


「気がついたか、酔い覚ましだ」


 庭の方からノエンが上がってきて薬をくれた、何故か上着を着ていない。


「うん、ありがと……やっぱり苦い」

「今日は店番もしなくてもいいだろうからゆっくりしてろ」

「ん」


 夕方には治りました、でも食材を買ってなかったからノエンが色々買ってきたのを食べて寝……る前に洗濯物をとりこんでおく。


干した覚えは無いのにノエンの上着もあった。



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