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青髭攻略してやろうぜ!  作者: ものもらい
本編2:【美少女と熊さん】
21/42

8.青髭夫妻と熊さんとお嬢さん ご招待編



「おっじょーさん!」

「ひゃっ」



あれから一年は経ちました。


お嬢さんが室内で絵の練習をしていると、子爵は筆を取り上げて背後から抱きしめてみました。


「し、子爵、危ないです。筆を返して下さい」

「ふふー、"テディ"って呼んだらいいよ?」

「無理です。ししゃ…」

「テディ」

「……し、」

「テディ」

「………」

「てっでぃいー!テ・ディー!」

「…………テディ」

「!」

「子爵」

「……お嬢さんは意地悪だなあ」


はい、と筆を優しく握らせましたが、お嬢さんは再開せずにじっと子爵を見上げました。



「何かありましたか…?」

「うん!…実はね、とても綺麗な場所があるんだけど、今丁度良い時期だって言うからさ、泊りに行かない?」

「お泊まり……」

「ちょっとキツイ?でも絵にするにはピッタリかなーって。それに、」

「それに?」

「お嬢さんの大好きなアリア夫人の娘さんも来るんだけど」

「ええっ!?」



一気に食いついたお嬢さんに、子爵は内心苦笑いです。

「会ったことがあるのですか!?」と子爵の袖を引っ張る彼女に、大きな手で撫でながら、



「あるよー。別嬪さんだった」

「ふわああああ!すごいです!どんな方でした!?」

「うーん…温和だけど子供っぽいかなあ」

「温和…!無邪気な方なのですね!?」

「丸め込むのが上手そうな……」

「賢い方なのですね!」

「肝の据わった人だったなあ」



一人盛り上がるお嬢さんに笑いながら、子爵は「でも、娘さんは絵を描かないんだそうだよ」と言いますと、


「それでもいいです!子爵、連れて行ってくださいますか?」

「テディって呼ばなきゃだぁ――め!」

「ええっ」



とまあ、一年でだいぶ仲が良くなったのでした。











お嬢さんがしっかり着込みつつもめかし込んで着いた先は、青髭城でした。



「し……て、テディさん…ここ、あいつの……」

「べーちゃんの家だねー」

「いやああああ!嫌です!帰ります!!」

「だめだめ、もう無理ですー」

「いやいやっ!」


子爵の逞しい腕に抱き上げられて、お嬢さんは飼い主にお風呂場へと連行される猫のように暴れましたが、当然脱出できそうにありません。


「テディさんのばかぁー!」

「ははっ、元気いっぱいなのは良いことだぞーぅ?」


片手にお嬢さん、片手に二人の荷物を持って、子爵は青髭城の玄関まで歩み始めました。



「……伯爵なんかに嫁いでしまったのですか…」

「仲悪いねぇ」

「だって!あの傲慢伯爵にアリア夫人のご息女が……!きっとアレです、いびられてるんです!」

「どっちかっていうとべーちゃんがいびられてたような……おっと」



あの理想高過ぎ婚活伯爵に。……というか、いつ結婚したのでしょうか。


お嬢さんは嫌味なほどに綺麗な青髭城を睨みながら、玄関先で待っていた執事が扉を開けるのを待ちます。


すると、重たい音と共に開いた扉の向こうでは………。




「―――ふざけんな!俺だけ青でお前とその猫は赤!?こういう時はお揃いだろ!?」

「まあヴェルンハルト様。お一人様も偶には良いものですよ?」

「にゃー」

「嫌だ!今すぐ着替えろ!第一だな、その芋臭いドレスをいい加減にやめろと何度言えば分かる!?新しいのたくさん買っただろうが!」

「だってぇー勿体ないですー」

「にー」

「くっそ…今度全部燃やしてやる…!」

「それに私のドレスは芋ではなく小豆です。小豆カラー」

「にゃぁー」

「余計芋臭……そうじゃなくて!!」

「だいたいヴェルンハルト様なんて毎日お葬式カラーじゃないですか。気分が下がるので偶には明るい服着てください」

「にゃーん」

「誰が葬式カラーだこん畜生!ていうかうるせーぞ猫!」

「酷い!!べーちゃんはあなたの短気で損気なところを治そうとこんな癒しの声をかけているというのに!」

「にあー」

「余計苛々すんだよ!そいつなんか部屋に閉じ込めておけ!」

「鬼畜め」

「そこまで言われるほど酷くないじゃん!!」




………。


…………お嬢さんは固まりました。あ、あの傲慢で人を下に見た物言いの伯爵が、何故か全力で言い合いをしているのです……それも女人に。


お嬢さんはふと、伯爵から聞いた「理想の嫁」像を思い出しました。



『俺より年下。これは絶対譲らん』

……うん、確か年下でしょう…。


『年上の女は嫌いだ。あれこれと指示出しやがって。俺は支配するのが好きだからな。俺の言うこと全てに頭を垂れて従い、俺の後に従う。自立してないのも嫌だが自立し過ぎた女は嫌いだ。上手くあしらえないからな』

………支配…出来てないような。頭垂れるどころか頬引っ張っているというか。上手くあしらわれてるような。



「ばーかばーか!猫ばーか!」

「馬鹿っていう方が馬鹿なのですよ、愚かな」

「ガキみたいな返し方しやがって!もっと知的な返し方できねーのかよ!」

「ヴェルンハルト様、そのお言葉はご自分に返ってきますので落ち着いてくださ」

「ブス!」

「うるさいですハゲ!」

「ハ…俺は禿げてない!!言っておくがな、親父だって死ぬまで髪ふっさふさだったからな!」

「あらどぉーでしょー?もしかしたら呪いで禿げてしまうかも分からんですよー?」

「俺は呪いなんかに負けねーし!このブス!」

「―――~~ブスブスと、じゃああなたはそんなブスを抱きたくて人を夜中だっていうのに揺り起こすわ寝てるのも気にせず無理やり抱くんですね!猿か!!」

「お前が本当にブスだったらそんなことするわけないだろ!」

「じゃあ撤回してください!」

「ああ!?ブスでいいんだよ、そっちの方が俺が独占できるだろ!」

「何アホぬかしてるんですか!夫にそんな言葉を言われて傷つかない妻が居るとでも!?」

「だって今までの妻は『綺麗だ』って嘘でも言うと浮気するんだ!だからお前には言うもんか!」

「浮気なんかするワケないじゃないですか!!そこらの尻軽女と私のヴェルンハルト様への想いを一緒にしないでください!」

「えっ……イリア――!」

「ヴェルンハルトさまっ」

「にゃーん。にゃーん」



「…………。」

「お嬢さん、お口が開いているよ」

「……し…て、テディさ…あれは?」

「あの二人ねえ、とても仲が良くて」

「え、いや、あの……―――あんなの青髭伯爵じゃない!」



気持ち悪い。

申し訳ありませんが、ちょっとそう思ってしまいました。


子爵は「はっはっは、」と笑うとパンパンと手を叩きます―――夫妻はハッとした顔で振り返ると、



「モントノワール子爵!…おほほ、すいませんねえお待たせしました」

「い、いいいいいらっしゃい」

「にゃー」

「わ、わー!お綺麗なお嬢さんですねえ!さぞご自慢でしょう?」

「い、いやー羨ましいな…いででででででででで!」

「にー」

「お初にお目にかかります、私はイリア・ルーディン……あら、旧姓で名乗ってしまいましたね、ふふふふふ……」

「く、くそ!お前はイリア・グレーフェンベルグだってあんなに練習しただろ!」

「でもー、ヴェルンハルト様の今後の言動によっては旧姓が必要になるかもしれませんしぃー」

「はっ、離婚なんかしてやるもんか!その前にお前を金の鍵の部屋に閉じ込めて孕ませてやんよ!」

「ケダモノめ」

「にゃーん」

「うっさい!」



反省してないじゃないですか……。


しかも何が腹立つって、あの仲良さげな雰囲気です。伯爵夫人が抱いてる猫が夫のコサージュに手を伸ばせば、伯爵はぱしっと猫の手を掴んで塞ぐや否や肉球をもにゅもにゅしたりとか、どちらかともなく目が合うと夫妻はクスリと笑って……。


(―――お腹いっぱい)


お嬢さんはちょっと寂しくなると、子爵の手をそっと握りました。






青髭夫妻爆発しろ。


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