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青髭攻略してやろうぜ!  作者: ものもらい
本編2:【美少女と熊さん】
16/42

3.熊さん、なんやかんやでお嬢さんをやっぱり泣かす



モントノワール子爵を、異性では珍しく好意的に思えるようになりました。



―――が、わりと泣き虫であるお嬢さんの慌てっぷりときたら酷いもので、初めて絵をあんなにも褒めてくれたのが恥ずかしくて。

どうにも子爵に見せられない顔だからと、お嬢さんは予定よりもずいぶん早く馬車を呼びつけたのです。


「また来て欲しいなあ」

「………」


裏表の、無い人。


お嬢さんは子爵の名残惜しそうな笑みに、そう評価しました。

例えそれが間違いだったとしても、お嬢さんはかまわなかったでしょう。



「……………あ、明日。改めて、お伺いしても、いいですか」



乞われることはあれども、お嬢さんは自分から乞うのは―――父以外に、初めてのことです。

不安に揺れる目が子爵の首筋に向いてしまって、逞しい男だということを再確認してはお嬢さんは顔を赤らめました。


「―――うん、じゃあ、明日」


その言葉に、三つ間を開けて。

そろそろと子爵を見上げると、とても嬉しそうな顔の、子爵が。


「今度は―――そうだ。今度は、俺の所で絵でも描いてくれないかい」

「あ、なたの、ところで……?」

「そ。描いてる姿を見てみたい」

「……つまらないですよ」


目をそらすと、子爵は「はっはっは、」と愉快そうに笑いました。


そして、お嬢さんの銀髪に大きな手を差し込んで、



「それは俺が決める」



その次の瞬間にはいつものへらっとした顔なのに、お嬢さんは思わず息するのを忘れてしまいました。

確かに、元々怖い顔だけど。―――そうじゃなくて、何だろう。とても、「男の人」という風で。


「……うん」


精一杯に絞り出せたのが、それで、お嬢さんは逃げるように馬車の中へと隠れてしまいました。











「リーゼ、リーゼロッテ!」



さてさて、思えば置き捨てられていたお嬢さんのご実家の話をいたしましょう。


商家の出で、父親はいません。母が切り盛りしていますが、まずそのやり口が最低なのです。お嬢さんは心の中で「盗人め」と吐き捨てています。



母に嫌われる原因となったのは、ただ単に「母よりも美しい」というだけで、一つ上の姉よりも、下の妹二人よりも抜きん出て美しかったので、よく妬まれそして―――無視、されていました。


姉妹の紹介をさせて頂きますと、長女のアンは赤毛に猫目の、すこしキツイ印象を与える女性ですが不細工ではありません。

仕切るのが大好きで、敵意を剥くととても面倒な子でした。


下の三女もまた赤毛で、少しふっくらし過ぎの体型です。

ストレスに弱くて、すぐにお菓子に手が出てしまう自制のできない子ですが、母は自分よりも不細工な三女を大変気に入っています。


末の四女はくすんだ銀髪ですが、割と常識人。幼い頃はお嬢さんに噛みついたものですが、成長するにつれて、謝罪をして以降は気まずそうに目を逸らすだけになりました。


…ちなみに、彼女はさっさと"居心地の悪い"実家から縁を切って、一から起業を始めた幼馴染の妻になり―――繁盛してきたのが、最近の母の苛立ちの原因です。



「返事をなさい!リーゼロッテ!」

「……なにかしら」


力任せに扉を開ける長女のアンに、子爵からの手紙をもう一度眺めていたお嬢さんは嫌そうに振り返りました。

もちろんその際に子爵の手紙は本の間に隠しましたが。


「………」

「…なによ、急に気持ち悪い、」


途端にニヤァと笑う長女に本音を吐き捨てましたが、まったく気にせずわざとらしく両の肩を抱いて、


「美しさって罪よね!」

「……は?」


本当に気持ち悪くなってきたところで、長女は誇らしげに胸を張りました。


「グレーフェンベルク伯爵がお会いしたいって。来週にでもね!」

「あ、青髭伯爵に……!?」


ルンルン気分の長女ですが、ネタバレすると、本当にお会いするだけでした。

何せ伯爵はあれこれ言う方だし、長女もまた口うるさい方です。何がどうあろうと無理でしょう。…第一、伯爵が「会いたい」と言ったのも、唯一の遠い親戚から回ってきた縁談があんまりにもアレだった故に言い訳としての御言葉だったのです。


(あんな奴、まともなのと結婚できないわよ)


もうすでにお嬢さんの中で伯爵の好意は消え失せそうです―――「よかったわね」と当たり障りなくお嬢さんが言えば、これまた面倒くさいのがやって来ました。



「え~、お姉さま、あたしの伯爵様とお会いするのぉ~?やだやだ~」

「うるさいわねこの食事制限も出来ない豚が。あんたなんて肉屋の旦那にでも嫁げばいいんだわ」

「これこれ、そう意地悪を言うでないよ、アン」



三女に母……赤毛三人組が集まったせいで、お嬢さんは我が家族ながら気持ち悪くなりました。


「―――それよりリーゼロッテ、子爵様とは上手くいっているの?」


扇でばさりと煽って、母は否定を許さない顔で聞きます。


お嬢さんは「さあね」と言うとそっぽ向きました。


「だって、あの方は大雑把なんだもの。大きいし熊みたいだし。全部が初体験過ぎて分からない」

「なるほどなるほど…まあ、よっぽど下手を打たない限りは大丈夫だろうね」


真実を言ってつけ入れられたくなくて、お嬢さんはツンとツンを出しての返答です。

今までの求婚者への態度もそうだったので、母は気づいた様子は見られません。


「お前が子爵と結婚すれば我が家は安泰。楽にたくさん金も入るだろう」

「………」

「もしこの話が駄目になったらお前のご自慢の顔をズタボロにするか娼館にでも高値で売ってやるからね。覚悟しておき」


―――さあ、こんな性根の悪い娘の部屋に長居してはいけないよ。


母は娘二人を部屋から連れ出して、侍女を叱りながら店に戻っていきました……。



「………熊」


「でかいし、突拍子もないし。スマートさがないし。紳士じゃないし」



開いていた日記のページを、ぐしゃりと握って、



「山賊みたい。熊……熊よ。今までの人よりも。怖いもの。……よく、笑うけどっ」


「別に、あんな言葉に、揺れてないもの。私は、そう、この家に恥かかせて立場をも悪くしてやろうと、求婚を踏み躙ってきたんだから。本気になんて、」


「……本気に、なんて……」



己の母ながら、あの強欲さにはゾッとします。

第一、"あんなこと"をしでかした母です。もっとと欲ばった挙句に何をするかなんて、分かり切ったこと。


お嬢さんは、日記のページを破り捨てて、その勢いで本の間に隠した手紙をも破り捨てようとしました。


(売り飛ばされる。絶対売り飛ばされるわ。向こうに情なんて無いもの)


(でも、………騙せない。最低な一族だって、同じ目で見られたくない)



―――だけど。どうせ、どう転んでも自分は碌な目に遭わないというのなら。



手紙の一つくらい、ずっと、手元に残していたって。







現在「なんちゃって"つぐみの王様"」ルートと「熊さん頑張るお(`・ω・´)」ルートどちらにするか悩んでます……うーん、でも前章が「青髭」だしな……。


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