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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第9章 漢との決戦
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第92話

蜀VS漢の戦い、一応決着を見せます。


あと以前、ここで継続するかどうか記載していましたアンケートの部分ですが、もう不要となりましたので削除させていただきました。

澠池の戦いは漢・呉連合軍の奇襲で幕を開けた。


蜀軍の前衛を担っていたのは愛紗の部隊であったが、突然の奇襲を受け兵たちは動揺した。


「敵だ!慌てるな!!」


愛紗は一瞬動揺するも、すぐに気を取り直し兵に叱咤する。


しかし濃霧で敵兵の姿が突然現れたため、兵たちは崩れてしまう。


「愛紗様、このままじゃ全滅しますぜ!」


愛紗の副官である周倉が苦戦のためか報告にも語気を荒げると愛紗は何とか兵を纏めて逆襲しようと考える。


「義姉上!今は取り敢えず兵を小さく纏め耐えるしかありません!!」


しかし義妹の関平こと愛香が愛紗にこの場に留まり耐える様に進言してきた。愛紗はできることなら一気に桃香の元まで兵を突きたかったが、現実はこのような苦戦に陥るとは夢にも思わなかった。


だがこのまま兵が崩れたまま退却すると本陣も崩壊してしまう。そう結論付いた愛紗は


「兵を小さく纏め、今は耐えろ!必ず反撃する機会は来る!!」


愛紗は何とか兵を纏める一方、一刀の陣に急使を出した。


「敵、前衛を突破!まもなく本陣にも敵兵が!!」


愛紗からの使者が来て、朱里が指示を出す。


「ご主人様、紫苑さん、一刻か一刻半(2時間から3時間)耐えて下さい。それを凌げば翠さんたち別動隊が帰って来て、この戦い勝つことができます」


「分かったわ」


「それで俺はどうすればいいかな?」


「…大変申し訳ないのですが、ここはご主人様に陣頭に立って戦っていただかないと…でない勝ち目が薄くなります」


朱里が申し訳無そうな顔をしながら、指示を出したが、一刀はそれを気にするようでも無く


「朱里、そんな暗い顔をしてたら、皆が動揺するだろう。笑顔、笑顔」


「い、いたいれしゅ、ごしゅひんしゃま」


一刀が朱里の両頬を両手で引っ張ると朱里は涙目になっていた。


「う~~酷いですよ…ご主人様」


「ごめん、ごめん、朱里。でもさっきよりは元気は出たみたいだね」


「あ…」


「取り敢えず、不安は取り除かれたかな?」


「はい、大丈夫です」


「朱里が、まだ不安だったら抱きしめてあげようと思ったんだけど…」


「……お願いします」


一刀がそう言うと朱里は恥ずかしそうに呟き、ゆっくりと後ろから抱きしめた。


「こちらの事はお任せ下さい。ご主人様、紫苑さんよろしくお願いします」


ほんの僅かな時間であったが、朱里には効果的だったようで、それを見ていた紫苑は


「あら、朱里ちゃんいいわね。私もやって貰おうかしら♪」


「紫苑だったら、それだけじゃ物足りないと思うから後にして…」


「あら待たせるのでしたら、利息は高く付きますわよ」


二人は軽く言いあいながら、部隊に向った。


「前方、敵影確認!」


前衛から一刀の陣まで少し距離があるため、こちらも準備する時間があった。


「では、ご主人様参りましょうか」


「ああそうだな。紫苑」


二人は緊張することなく、部隊の先頭に向い敵を待ち構える。そして敵は愛紗の部隊を破った勢いで


「ウォォォォォォーー!」


地響きのような叫び声で突撃してくる。


すると蜀軍の右翼と左翼から


「「撃てーー!!」」


号令一下、一斉に弓矢が放たれると先陣の漢軍は混乱。十字砲火の様に弓矢を浴びるを見て一刀と紫苑の率いる本隊が突撃を始めた。


ヒュン!グサッ!


「ぐわぁ!」


バサッ!


紫苑が弓矢を放つと確実に敵兵は急所を突かれ


「俺に続けぇ!」


一刀が自ら切りこみを駆ける。


「ギャ!」


周囲に群がっている敵兵を斬る。そして一刀に付いてきた兵たちも次々に周囲の敵兵を薙ぎ払っていく。


「ひ、引けーー!」


算を乱して後退した敵兵を追いかけず、一刀は一旦部隊を掌握する為に立ち止まると紫苑が


「ご主人様…では一旦後退を」


一刀たちは敵の第一波を退けると部隊を整え、後退を始めた。


そして雛里は、一刀と紫苑が自ら出陣したことを聞いて


「ここは千載一遇の好機です。ここを逃せば私たちは勝つ見込みはありません。白蓮さんは敵の左右の弓隊を押さえ貰い、そして鈴々ちゃん、凪さん、真桜さん、沙和さんで北郷さんたちを捕えて来て下さい」


「それはいいが、もし後衛の董卓軍が来たらどうするんだ。あの呂布がいるんだぞ」


白蓮の言い分は尤もであった。反董卓連合の時に呂布に、当時愛紗を含めここにいる4名は手痛い目に遭っていたのだから。


「その懸念は尤もです。ですので備えはあります」


「備え?」


「ええ、董卓軍には呉軍に対応していただきます。向こうも個人の武で決して勝てるとは思っていないでしょう。だから足留めさえしていただけたら結構かと」


「まだ兵力ではこちらが上回っています。それに北郷一刀さんは優れた将かもしれませんが武で鈴々ちゃんを上回っているとは考えにくいです」


雛里の考えは凪たちで紫苑を押さえている間に鈴々で一刀を捕えることができると思っていた。なぜなら反董卓連合の時には一刀と紫苑は夏侯姉妹とは戦っていたものの雛里はその内容は詳しく知らず、そして結果的に夏候惇の目を射たのは紫苑であり、そして翠が一刀に嫁ぐための一騎打ちをした時は一刀が勝利したが、これは当時秘密にされていたので、一刀の本当の実力を雛里は知らなかったのであった。


そして既に主導権を取っていたので、雛里は朱里の反撃も制限されるであろうと思っていたが、ここから朱里の反撃が始まる。


「敵、我が軍の両翼に対応するために兵を分けてきました!」


「ご苦労様です。では両翼に合図の鐘を鳴らして下さい」


ジャーン!ジャーン!ジャーン!


偵察の兵の報告を聞いて、朱里は直ぐに両翼の弓隊に対し、合図の鐘を鳴らす。


そして両翼の弓隊が合図ともに動き出す。


「急げー!急いで騎乗しろーー!!」


まず蜀軍の右翼の部隊が動き出す。この部隊は元々紫苑の弓騎隊の半数(3千)を率いているが、大声で出して熱血漢丸出しの指揮官の少女の名を馬忠、字を徳信、真名を初雪と言い、一刀が蜀を平定後に軍に入り、持ち前の熱血漢でめきめきと頭角を現し、今回正式に紫苑の部隊の副官となった。


ただ普段から大声なので、周りから音量を下げるよう注意を受けているが、


「大声を出すのは元気があっていいことよ」


紫苑は、そんなことを気にすることなく真面目な初雪を買っていた。


そして間髪いれずに左翼の部隊も動き出す。


「拙者に付いて来い!」


左翼の部隊を指揮するのは、初雪と同じく紫苑の副官で名を張翼、字を伯恭、真名を初霜と言い、女性ながら何故か男装しており、そして真面目で、自分の事を「拙者」と呼ぶなど「武士」に憧れているという一風変わっている少女であるが


「弓も上手ですが、剣の使い方も上手ですわ」


紫苑も自分と同様に弓と剣の使い手がいることに喜び、初雪と同様に実力を買っていたのであった。


この両翼の部隊は、今度は騎乗し左右に部隊を展開した漢軍に対して、少々手薄になった中央に飛射しながら突撃をする。


雛里はまさか敵が弓隊から騎馬隊(弓騎隊)に変化するとは思っていなかったが、兵自体の数は多くないと分かったので


「敵は少数です。逆に包み討ち取って下さい」


前線に指示を与えたが


「こっちに行くぞーー!」


「遅れずに来い!」


初雪と初霜の二人の指示を受けると部隊は深入りすることなく、斜めに抉る様に突き抜け側面から抜け、一気に漢軍が分散した左右両翼の軍の背後が突く。白蓮はその対応に追われたため、反撃に出ることができない。


そして間髪入れずに一刀の部隊が再び突撃を敢行。最初の攻撃で浮足立っている漢軍は一瞬怯むが前線に出てきた鈴々たちにより、部隊の崩壊を防ぐ。


「皆、がんばるのだ。おにいちゃんさえ捕まえたら、この戦い鈴々たちが勝つことができるのだ!」


と激を飛ばして反撃に出る。


一方、漢の本陣では、気候を利用して戦の主導権を取るまで良かったが、しかし朱里の巧みな反撃に遭い、蜀軍を崩すことができない。そしてこのまま時間が過ぎれば別動隊が帰って来て勝つ事は難しくなるが、しかし何とか一刀を戦場に引き摺り出し、僅かながら好機が生まれた。


「申し訳ありません。桃香様、私ができるのはここまでです。あと鈴々ちゃんたちに託すしかありません」


「ううん。ここまでできたのは雛里ちゃんが頑張ったからだよ。あとは鈴々ちゃんたちに全てを任せよう」


ここまで来たら、二人は鈴々たちが勝つことを願うしかなかった。


桃香が本陣でそうしていた頃


「いたのだーー!」


視力が良い鈴々が一刀と紫苑の姿を発見し、4人は一刀たちと対峙していた。


「チィ……向こうの主役の登場やで!凪、沙和、覚悟決めんかいっ!鈴々、アンタはそこの兄ちゃんの相手してや!!」


「分かっている!一歩も退くものか!」


「沙和だって、やる時はやるの!」


「分かっているのだ!それこそ鈴々が望むところなのだ!!」


「紫苑…」


「フフフ…分かっています。私は私の役目を果たしますわ」


一刀の声に紫苑は1対3で戦うことに微笑を浮かべながら、そして何時もより大きな声を出して名乗りを上げる。


「この北郷紫苑、抜けるものなら抜いてみなさい!」


と。


「お兄ちゃんを捕まえたら、この戦い鈴々たちの勝利なのだ!だから鈴々と勝負するのだ!!」


「よし、鈴々。負けても恨みっこ無しの勝負だ」


一刀と鈴々は以前出会っていたので、鈴々はその時のまま一刀を呼んで勝負を挑み、一刀もそれに応えた。


「てや!てや!てや!てやぁー!」


鈴々が繰り出す斬撃をすんでのところで一刀は避ける。鈴々の動きを先読みしながら、身体を動かしていく。


鈴々とまともに打ち合っても一刀は勝機がないと思っていた。鈴々の丈八蛇矛と一刀の紫電では耐久力に差があり過ぎる。数合くらいなら良いが、まとも打ち合えば刀が壊れてしまう。


それならば翠の戦いと同様に攻撃を躱し、とにかく持久戦に持ち込むことであった。鈴々の攻撃の悉く躱して捌き続けると、攻撃が当たらないという鈴々の未熟な精神への揺さ振りを掛けると共に、体力の消費という肉体的な制限を課せば、絶対に隙が生まれると一刀は踏んでいた。


「にゃにゃーっ!?当たらないのだ!?正々堂々と勝負するのだー!」


鈴々は蛇矛を数十回振り回すも一刀に躱され、やはり精神的にイラつき始めていた。


(「一歩間違えたら、これは気絶どころですまないな…」)


一刀は内心そう思いながら鈴々の攻撃を躱していた。そしてようやく鈴々に疲れが見えてきた時に一刀が勝負に出た。


「あっ!?」


振った後の返しが遅くなった一瞬の隙を突き、鈴々の蛇矛を弾き飛ばす一刀。そして、


どがっ!


「うっ!」


刀身は鈴々の体に叩き込まれ、鈴々は地面に倒れ伏した。


「えっ!?」


鈴々が倒れる姿を見た沙和が紫苑から目を切ってしまった。


「沙和、目を離すな!!」


凪が沙和を呼んだが、その時既に遅く、紫苑は


「相手から目を離してはいけませんわよ」


バチィ!


紫苑は言葉と同時に沙和の顎に拳を入れると、沙和はその場で気を失ってしまった。


「沙和!あんたよくも沙和を!!」


「真桜、不用意に飛び込むな!!」


怒りに任して、沙和の仇とばかりに真桜は回転させながら螺旋槍を紫苑に向け突き出したが、


「怒りに任せた攻撃は読まれるわよ」


ゲボッ!


紫苑は真桜の攻撃を躱すと、拳を真桜の鳩尾に命中させた。


強烈な一撃を浴びた真桜は痛みに耐え切れず、武器を手放して前のめりになると紫苑は止めの一撃とばかりに延髄に強烈な肘打ちが振り下ろされた。そしてこの強烈な一撃を喰らった真桜は気を失ってしまった。


「あと、貴女一人になったわ。降伏しない?」


「まだ戦える!」


紫苑は凪に降伏を勧めたが、凪はこれを拒否して紫苑に戦いを挑む。しかし凪の攻撃は紫苑の体捌きによって躱される。見事なまでの体捌きに凪が疑問の声を上げる。


「なぜ…貴女は弓が一番得意なはずでは?」


「その通り弓が一番ですわ。でも弓が無くとも、拳や槍や剣が使えないとは限らないわよ。戦場で『剣を使ったことがないから戦えません』と言って生き残れることができるかしら?」


凪の疑問に紫苑は冷静に答える。凪は紫苑の武は、弓だけで無く体術もこれほど使えるとは、どれだけ奥が深いのであろうと思っていた。


このままでは長引けば、経験値から紫苑の術中に入ってしまうと考えた凪は勝負に出た。


「はああああああああっ!」


凪は拳に気を溜めて紫苑に打ち込むが、紫苑はこれを読んで躱すと素早く颶鵬を取り出し、凪の目の前に弓矢の先が突き付けられていた。


「ふう、危なかったわ…。でもこれで終わりね。返事を聞かせて貰おうかしら?」


この至近距離からでは逃げれるはずもなく、流石の凪も降伏するしかなかった。


「申し上げます!張飛様たちが敵軍に捕われました!」


本陣に報告に来た兵士の知らせを聞いて、雛里は桃香にこれ以上の戦闘継続は困難だと判断した。


「桃香様…。申し訳ありません…」


「……そう」


「このままでは犠牲が更に増えてしまいます」


「……」


「無念でしょうが、ご決断を」


「……分かっているよ。でも…」


雛里は桃香に降伏を勧めるも桃香が降伏に難色を示していると、陣の近くから大きな音が聞こえてきた。


「ぎゃ!」


兵の一人が誰かきつい一撃を貰い、本陣まで吹っ飛んできた。


そしてその兵が飛んで来た方向を見ると……


血路を切り開いてきた愛紗の姿であった。愛紗は桃香の姿を見ると


「桃香様!貴女の我が儘でまだ兵を殺すおつもりですか!!勝敗は決しました。潔く降伏して下さい!!!」


「……愛紗ちゃん」


桃香は愛紗の顔を見るとこれ以上のことは言えなかった。愛紗の顔は涙でクシャクシャになっていた……。


「桃香様。私たち二人の命で鈴々ちゃんたちや兵の命を救っていただけるように北郷さんにお願いいたしましょう」


「全てが終ったんだね……。愛紗ちゃん、北郷さんへの降伏の取次をお願いして欲しいの」


雛里がそう言うと桃香は降伏を決意し、こうして400年余り続いてきた『漢』の旗がこうして降ろされたのであった。




呉や桃香たちの行方は次回となります。

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