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真・恋姫無双 〜新外史伝〜  作者: 殴って退場
第9章 漢との決戦
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第87話

一刀と愛紗が結ばれ、無事長安に戻ってきた後、一刀は晋に同盟に対する返事を出した。


~晋~


一方、司馬懿こと陽炎が一刀の使者が持って来た手紙を見て、微笑を浮かべながら


「フフフ…分かったわ。北郷殿によろしくと伝えてくれるかしら」


そう言って陽炎は、一刀からの使者を下がらせた。一刀から晋への送った手紙には同盟について断りの返事であったが、ただ手紙には蜀からは晋への攻撃も当面行わないと記載されていた。


「中々、喰えない奴だな」


手紙の内容を聞いて呟いたのは、蒋済こと白雪が何時通り酒の臭いを漂わせて冷静に一刀の事を評価していたが


「しかし、こいつ信用できるのかよ?」


張郃こと若竹が疑問の声を上げたが、


「将来的には分からないけど、今のところはこの手紙を信じても良いと思うがな」


若竹の姉貴分にあたる徐晃こと松羽が


「それはどういうことだよ?」


松羽の意見にまだ納得いかない若竹が食い下がったが


「そうね。今のところは松羽の意見が正しいと思うわ。蜀は漢と呉に対して目が行っているから、態々私たちを相手にする余裕は無い。ここで私たちが変に動いたら、逆に私たちに標的にされてしまう恐れがあるわね。ただでさえ魏と戦っているのに蜀まで敵に回したらこれこそ勝ち目がないわよ」


「それにこうして手紙に残していたら、万が一これを反故にした場合、名誉だけで無く、国全体の信用にも係り信を無くしてしまうわ」


陽炎の意見が説明すると、ようやく若竹も納得した。


「それで漢と呉に対する返事はどうするんだ?」


「そうね…まだ組む時期ではないと言って断りを入れて貰えるかしら。漢は頼りにならず、呉とは連携を組むには遠いし、未知数すぎるわ。それと白雪と梅香、あっちの準備はできたかしら?」


「ああ、そっちの仕込みは既にできている」


「……はい。命さえあればいつでも動かせます」


白雪は陽炎が不在中であった漢と呉からの同盟要請の返事について確認したが、陽炎はこれを否決。そして白雪とそして見た目は大人しめで影の薄そうな少女である梅香こと郭准が陽炎から言われていた策の準備に当り、そしていつでも作戦行動が取れる状態になっていた。


因みに梅香は武の腕はそんなに高くないが、将としての指揮能力は良く、そして性格が大人しく周りからの印象が薄いこともあり、変装などをしての潜入工作等が得意であったので陽炎から高く評価されていた。


「分かったわ。では皆、準備進めてちょうだい」


陽炎は命を下すと、一同は頭を下げ部屋を出て行ったのであった。


「さて曹孟徳、私からの贈り物ありがたく受け取って貰えるかしら…」


陽炎は一人残された部屋で呟いた。


~漢~


蜀が魏と何らかの形で手を結んだ噂が流れていた。


「ねえ、雛里ちゃん。蜀が攻めてきて領内で迎え撃って勝ち目ある?」


「正直に申し上げれば、現状は極めて厳しいと言わざるを得ません。ただ望みがない訳ではないです」


「何かいい方法があるか、雛里」


「はい白蓮さん。戦場で北郷一刀さんを捕えることです」


「はぁ?そんなまどろっこしいことするより、戦場で大将殺した方が形勢逆転できるだろう」


この意見は焔耶であるが、雛里はこの意見を真っ向から否定した。


「気持ちは分かりますが、それをしたらそれこそどちらか滅ぶまで戦い続けることになるでしょう。我々には王を仰げるお方は桃香様しか無く、向こうには北郷紫苑さんや北郷璃々さんと代わりに王として立つ方がいます。そうなった場合、どうしても国としての力の差が出てしまい、長い目で見た場合、我々の負ける可能性が非常に高いです。だから殺さずに捕えた方がいいと言う訳です」


雛里の説明を聞いて焔耶は憮然とした表情を浮かべたが、言っていることも一理あるのでそのまま押し黙った。すると凪が、


「もし殺さずに捕えたとしても一体どうするつもりだ?」


「それは交渉次第になりますが、北郷一刀さんの退位や領土割譲などの条件を優位に引き出すことができます。そしてそれを手にすれば漢を再興させる第一歩となります」


「そう上手く行くものか?」


「白蓮さん、弱気は禁物です。何としても上手く行かせるのです。これに勝たないと我々には次がないのですから」


雛里の言葉に皆は黙って頷いた。次の戦で命運が決まる。絶対に負けられない。死力を尽くすしかないと。


~蜀~


今回の内々の作戦会議に一刀、紫苑、璃々そして朱里、真里、月、詠が参加していた。


すると詠が


「しかし、アンタ、晋の返事あれで良かったの?」


「う~ん。態々来たのに断るというよりは、取り敢えず誠意だけは見せておいた方がいいと思ったんだけど…」


「まあいいわ。アンタの誠意云々は別として、判断として悪くは無いと思うわよ。漢と戦う前に態々敵を作る必要もないし、晋も魏を相手しているからこちらに目を向ける余裕は無いと思う。油断は禁物だけどね」


「一刀さんが魏と晋に対して当面の間、不可侵の約を結んだので、取り敢えずは、漢と呉に戦いを挑むけど、これに異存はないかしら?」


「真里お姉ちゃん、異存はないけど、でも漢と呉どちらを攻めるの?」


「いい質問ね、璃々。今回は両面作戦を取るわ」


「二面作戦って…危険じゃないかしら」


「確かに紫苑さんの言う通り、正攻法での二面作戦は危険です。しかし今回、呉攻略の軍については陽動として動いて貰います。ただ陽動と言っても、場合によっては部隊を転進して漢を攻めていただく任務も帯びて貰います。そこで呉を攻めていただく指揮官に璃々さんにお願いしたいのです」


「これは敵に陽動と悟れない為、将をある程度揃えないといけませんし、また璃々さんも天の御遣いとして名が知られているので、指揮官として問題はありません」


「そして霞さん、華雄さん、黄忠さん、そして白帝城からは桔梗さん、夕霧さん、菫ちゃんにも参加していただいて、呉に攻めていただきます」


朱里の説明を聞いて、璃々が


「陽動と言っても、どうするの?」


「まずは益州と荊州の出入り口になる建平や夷陵辺りは押さえ、そして南郡を落して江夏を攻める構えを見せ、呉の主力を引き寄せて、間接的に呉から漢への援軍を断ち切って欲しいのよ。最悪でも漢に送る援軍の数は減らせると思うの。貴女たちの役割はできる限り、むこう主力を荊州に止めて、その間に主力部隊で漢を攻略するわ」


「……荷が重そうだね。でもご主人様の為にも頑張るよ」


詠の説明を聞いて、璃々は覚悟を決めて指揮官になることを承諾した。


「それで…漢の攻略の話だけど、月も参加させて欲しいと言っているのよ」


「月が?」


そう説明する詠が渋い表情をしていた。


一刀の頭の中に一瞬、反董卓連合時に対する意趣返しというのが頭を過ったが、月は性格的にそんなことをしないと判断できるものの一刀には月が参戦したい理由が分からなかった。


「月どうして?」


「えっと…誤解が無いように言っておきますが、劉備さんの復讐とかそんなのは考えていません。どうしても私が今回、軍に同行したい理由は劉備さんの覚悟とかを聞きたいのです」


「覚悟を?」


「そうです。以前一刀さんは、劉備さんの理想を聞いてそれを一刀さんが否定されました。そしてその後、劉備さんは自らの理想を覆し、力を求め、今は漢の皇帝を僭称しています。

では劉備さんは理想を覆して、一体この国をどういう風にしたいのを改めて聞きたいのです」


「それで、もし劉備さんが満足する答えが出なかった時は、どうするつもりなの?」


「私自身は劉備さんの覚悟を聞きたいだけです。一刀さんが劉備さんの命を救うことについて異存はありません」


月の意見は正論でもあり、一刀としても断る理由が無かった。


「同行するには問題はないけど、流石に部隊としては後方に控えて貰うけどいいかな?」


「はい、無理を言って申し訳ありません」


「じゃあ話を元に戻すけど、漢攻略戦には一刀さん、紫苑さん、翠、蒲公英、星、朱里、愛紗、それに月と護衛で恋とねね。居残りが私と詠ということで問題はないかしら」


真里が説明すると詠が


「仕方ないわね。本来ならボクも月に付いて行きたいけど、留守する人間の人手が足りないし、ねねの奴が恋と離すと文句言うしね」


少しぼやきながら言うと月が


「ごめんね、詠ちゃん。私が我が儘言ったから…」


「べ、別に月は悪くは無いわよ!悪いのは全部コイツよ!」


「何処に俺が悪い要素があるんだよ!?」


素直でない詠は、月に謝れると何故か一刀に八つ当たりしていたが、一刀もそんな詠の性格を分かっていたので、文句を返しながらも笑いながら返していた。


そして夜、一刀の部屋に紫苑と璃々が来ていた。


「どうされたのですか?ご主人様、難しい顔をされて」


「う~ん。月が何であんなことを言い出したかと思ってね」


「そうだよね。あまり戦いが好きじゃない月が付いて来るというのは珍しいもん」


「……ご主人様、私感になってしまいますが、よろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


「月ちゃんは、桃香さんの主体の無さに怒っていると思うのです」


「つまり桃香さんが最初に掲げていた理想と今までやっていることが余りにも違い過ぎ、そして何の信念を持って立っているのか、どうしてもそれが納得出来ないと思うのです」


「確かに上に立つ者として、理想や信念を節操なく替えられ、そしてそのような自分勝手な都合で命を奪われそうになれば、月ちゃんだって問い質したくなりますわ」


紫苑の答えに一刀は渋い表情を浮かべながら


「月の言うことは分かるが、しかし桃香を追い込んだ責任は俺にもあるからな…」


「それは月ちゃんも分かっていますわ。だからご主人様が桃香さんを助けることには異存はないと答えているでしょう」


「だからご主人様は、自分が正しい事だと思うことをやればいいのです。もし間違っていることがあれば、私や璃々、そして皆が手助けしてくれますわ」


「そうだよ、ご主人様。私もお母さんと一緒に助けるからね♪」


紫苑と璃々がそう言いながら微笑むと一刀は


(「やっぱり、紫苑と璃々の笑顔に癒されるな」)


内心思っていたが、流石に言葉にするのは恥ずかしいのか一刀は黙って紫苑と璃々の顔を見ていると


「あら嫌ですわ。ご主人様、私の顔をじっと見つめて」


「フフン~。ご主人様、お母さんと私に見とれていたの~♪」


「あっ…いや」


「あっ、ご主人様照れてる。もう、ご主人様ったら可愛い♪」


「ぶっ!」


璃々から可愛いと言われ噴き出す一刀を見て紫苑は


(「私たちこそ、ご主人様がいるからここまで頑張ってこれたのですよ。私と璃々だけじゃなく皆を幸せにして下さい。私の愛しのご主人様♪」)


こちらも内心そう思いながら、優しい眼差しで二人を見ていたのであった。




ご意見・ご感想あれば喜んで返事させていただきます。(ただし非難・誹謗等は止めて下さいね)

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