第81話
後半、無茶苦茶かもしれませんが…
一刀たちが長安に戻り、朱里たち軍師と今後について話し合われた。
「今後どのような策を取られるか、ご主人様の意見を聞かせていただきますか?」
そう言ってきたのは朱里であるが、この意見については軍師全員が思っていることであった。
「今は無理して兵を動かしたくない。もし兵を動かすのであれば、皆の被害も少ない方がいいから、軍を動かす時は一気に勝負を付けたいんだけど…」
「あんたね…。そんな甘い考えが通用する相手じゃなないでしょう」
一刀の意見に詠が呆れかえっていたが、
「でも、ご主人様の気持ちは分からないでもないですわ」
「そうね。一刀さんの言う通りよ。誰も被害を少なくしたいのは当たり前、これをどう少なくするのか軍師の仕事でもあるわよ」
「わ、分かっているわよ!そんなことくらい…」
年長の紫苑や真里からそう言われると詠も返す言葉が無かった。
「ですが、晋や魏、呉については一気に勝負を付けることは難しいですが、漢については場合によっては、一度の決戦で決着つけることは可能です」
「えっ、それはどういうことですか?」
朱里の答えに月は疑問の声を上げたが、朱里はなおも説明を続けた。
「私たちは現在函谷関まで、勢力を持っています。そして洛陽までの間に、敵が防衛できる主な町は弘農と澠池の二か所しかありません。その内弘農については函谷関に近すぎて前線になり得ても決戦の場所としては難しいです。もし漢が領内に私たちを引き込むとすれば、澠池を拠点にして防衛線を張ると思います。もしそこで敵が決戦を挑んでくれて、勝てば一気洛陽を突けます」
「ただそうなると問題なのは呉の存在です。呉が援軍を出せば、攻略は難しくなりますし、もし援軍を出さず、逆に白帝城に攻撃の構えを見せた場合、私たちは二面作戦を余儀なくされる恐れがあります。ですので、現段階では我々だけで攻め入るのは得策ではないと…」
「そうなると何処か手を結ぶの?」
詠の言葉に朱里は無言で頷いた。
「もし手を結ぶとしたら、魏か晋となりますけど、いずれも交流がないだけにいきなりこういう話を持って行けば足元を見られるかもしれませんね」
「しかし、こういう場面が私たちの腕の見せ所だろうね」
真里は腕を叩きながら主張していた。
「それで、ご主人様は何処かと手をお考えですか?」
紫苑の質問に皆の目が一刀に向けられた。すると一刀が困った様な顔をして
「すぐに答えは出せないよ。魏や晋の状況等が分からないことが多すぎる。今は兵を養い、漢を攻める時期がくれば、その時考えればいいと思うけど、どうかな?」
「へえ一応、頭使っているのね。分かったわ、まずは両国の情報収集もしておくし、もし攻める時には上手い具合に敵が混乱してくれるように流言を飛ばしておくわよ」
「そうですね。今はそれで十分だと思います」
「あとは漢と呉がどう動くか、こちらも情報収集を強化する必要があるな。しばらくは向こうも荊州経営に苦心しそうだからな」
詠や朱里、真里も一刀の言葉に同意したので、当面は現状維持という方針に固まった。そして詠が何かいつもよりやる気があったので、一刀は声を掛けてみた。
「詠どうした、何か今回やる気なってないか?」
「当たり前よ。劉備は以前袁紹に加わり、月を討ちに来たんでしょう。愛紗に頼まれて劉備の命を助けると聞いているけど、その前にその借りをきっちり返しておかないとボクの気がすまないのよ」
詠の言葉には桃香に対する復讐心が含まれていたものの、冷静さを失っている訳ではなさそうだったので、一刀や月は苦笑を浮かべていたのであった。
【璃々VS璃々?】
一刀たちと長安に戻った璃々であるが、愛紗を救助するためとは言え、無断出兵の上、留守居役自ら出陣するということで紫苑から叱責を受けたが、璃々のお蔭で愛紗を助かったことやその助けて貰った愛紗からの嘆願もあり、結局罰として一刀は長安にいる間のいずれか一日を、黄忠の娘である璃々の相手をするように命じた。
璃々は喜んでこの罰を受けたが、子供璃々が、最初に紫苑と黄忠を見た時には、驚きを隠せず
「お、お母さんが二人いる~!」
大声を叫んで驚いていた。
流石に泣くことは無かったが、突然、同じ顔の人物が二人出てきたら、誰もが驚くであろう。
璃々自身も子供であったら子供璃々と同じように叫んでいたかもしれないと内心思っていた。
子供璃々には、紫苑と黄忠の関係を説明しても今は理解出来ないので、現状は祖先が同じで遠い親戚関係であることを説明している。
そして璃々と子供璃々の関係については、偶然同じ名前で名付けられたことになっているので、子供璃々には
「おねぇちゃんと璃々、いっしょのなまえだね。よろしくね♪」
と同じ名前ということで初対面から気に入られ、璃々が白帝城に常駐するまでは、よく黄忠の代わりに子供璃々の世話をしていたのであった。
そして璃々が長安に戻ってきたので、久しぶりに二人は再会して町に遊びに出ていた。
そして丁度、子供璃々がお腹を空かしていたので、店先で二人は席に座りながらおやつを食べていると、
「ねえ、璃々ちゃん。将来どんな大人になりたい?」
何気なく璃々が子供璃々に将来の事を尋ねた。
「う~ん。かわいいおよめさんになりたいの♪」
「へえ~誰が璃々ちゃんのお婿さんになるのかな?」
すると子供璃々からとんでもない答えが返ってきた。
「えっと、おかあさんにまけないくらい、もっとからだをおおきくして、ごしゅしんさまにめとってもらうの♪」
それを聞いた璃々は開いた口が塞がらなかった。
璃々は、この答えを聞いた瞬間に誰が教えたのか、既に頭の中で浮かんでいたが、敢えて子供璃々に聞いてみた。
「ねえ、それ誰から教わったの?」
「えーとね、おかあさんからおしえてもらったの♪」
「あのね。ごしゅじんさまのおきさきがたくさんいるけど、もうすこし璃々がおおきくなったら、かならずでばんがあるっていっていたの~♪」
予想した回答を聞くと璃々は
(「やっぱり…ここのお母さんもお母さんと一緒の思考回路だったのね…」)
璃々は子供璃々の言葉を聞いて頭を抱えていたが、まさか自分が幼い頃、紫苑が自分を一刀に差し出そうとしていたことをここでも同じ事をされようと思っても見なかった……。
【朱里の秘密】
会議を終え、朱里と月、詠の三人でお茶飲んでいたのだが…
(「ねえ、詠ちゃん、どう?」)
(「……やっぱり間違いないわね」)
(「じゃ、詠ちゃん聞いてくれる?」)
「「えっ!何でボクが…」」
(「詠ちゃん、お願い」)
(「あ~分かったわよ。聞いたらいいのでしょう!」)
なぜか月と詠は、朱里の方をチラチラ見ながら、ひそひそ話をしていたが、朱里はそれを不思議そうに見ていた。
そして詠はなぜか顔を少し赤くしながら
「コホン…朱里、少し聞きたいことがあるけどいいかしら」
「何ですか、詠さん」
「……な、なんでアンタのあれが大きくなったの?」
「えっと…何の事でしょうか?」
やや小声の詠の質問に小首を傾げる朱里。
「な…なんでアンタの胸が大きくなったのか聞いているの!」
「は、はわわーーー!!!」
「へう~。詠ちゃん、正直に聞きすぎるよ~」
詠の自棄気味の発言に朱里は慌ててふためき、そして月も恥ずかしさの余り、顔を赤くしていた。
しかし、詠の言う通り、朱里の胸は以前の絶壁状態からはやや膨らみを見せ始めており、同じような状況である月と詠はそれを見逃すはずもなく、敢えて聞いてみたのであった。
「そ、そうでしゅか…そんなには変わってないと思いましゅが…」
詠に指摘されると朱里は脂汗を流しながら、思い切り動揺していた。
「怪しいわね…」
「朱里さん、詳しく聞かせて欲しいですが…」
そんな朱里の態度に二人は見逃すはずはなく、朱里を問い詰めようとすると、
「あ、あそこに誰かいます!」
朱里はとっさに月たちの方を指差し、それに釣られた月たちが後ろを向き、朱里から一瞬、眼を放すと朱里はその間に逃走を始めた。
「誰もいないじゃない…あっ!」
詠が再び、朱里がいた席を見ると朱里は既に城内に逃げ込もうしたので、月たちも慌てて朱里を追い駆け回したが、何とか朱里は追跡を振り切り逃走に成功したのであった。
そしてその夜、朱里は周りの目を気にしながら、ある部屋に向っていた。
そう彼女には、ある秘密があったのだ…。
そして目的の部屋に着くと、周りに聞こえないような声で
「…夜分に失礼します、紫苑さん…。また貰いにきました…」
「あら、また来たのね。朱里ちゃん。こんな物幾らでもあげるけど…、でも…本当に効いているの?」
「は…はい!これから成長する私にはぜひ必要な物なのです。だから何時もの様に貰えますか?」
「うふふ…焦らないの」
紫苑はそう言いながら、自分のおっぱいを
ぽよん♪
と出すと
「はい、どうぞ」
そのおっぱいを朱里に差し出した。
すると朱里は赤ちゃんの様に紫苑のおっぱいを吸い始めたのであった。
これは以前、朱里が紫苑の閨修行をしていた時に偶々、紫苑の母乳を飲んでしまい、しばらくすると胸が少し大きくなる兆候が見られた。そしてそれ以降朱里は、紫苑の母乳を飲めば胸を大きくなると思い込み、度々紫苑のところに訪れるようになった。
紫苑自身も欲求不満解消に持って来いであり、朱里は
(「この秘密は誰にも言えましぇん!」)
そう思いながら、紫苑の胸の中で夢中になっていたのであった……。
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